東武14系0番台 | 車内観察日記

車内観察日記

鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

日光・鬼怒川観光の起爆剤として東武が始めた一大プロジェクト、それがSL復活運転プロジェクトでした。その名も「SL大樹」、力強い名とともに下今市-鬼怒川温泉間で運転を開始しました。

 

列車名の「大樹」とは(徳川)将軍を意味しています。徳川家を祭る日光東照宮や、スカイツリーも意識したのだとか。ちなみにヘッドマークの力強い字を書いているのは日光観光大使である美人過ぎる書道家、涼風花さんです。実は大河ドラマデビューも果たしておられます(笑) 一度お会いしましたが、そらぁもう大層美人です。
 

さて、毎度のことですが私のメインはむしろこちら、機関車に挟まれた青い客車です。JR東海から購入してほとんど使われなかったJR四国の14系客車を使用しています。奇遇なことに、JR四国がJR東海からこの客車を購入したのもまた、SL運転の計画のためだったそうな。この他、かつて「ムーンライト高知」で使われた12系グリーン車やJR北海道で「はまなす」として使われた14系500番台も購入し、SL増便のため運用入りした車両もあれば、部品取り用として余生を送る車両もいます。

 

客車の方にもアンテナが取り付けられたため、なんだかより電車っぽくなりましたね(笑)

 

テールサインにも絵柄が入っています。両側に機関車が付くため、折り返しの付け替えの時だけが見せ場ですね(笑)

 

側面方向幕も大樹のものになっています。種別は「SL」なんですね(笑)

 

客車は3両編成、下今市方の1号車はなんと14系客車の記念すべきトップナンバーです。いやはや、こんなご時世に国鉄型客車のトップナンバーに乗れるとは…。

 

2号車のオハ14もトップナンバーです。所定では12系客車に差し替えとなり、現在は予備車的なポジションにいるでしょうか。

 

鬼怒川温泉方のスハフ14は5号車です。この車両、今でこそブルーの塗装となっていますが、四国に来た時までは明るいグレーに青帯の「ユーロピア」塗装となっていました。

 

サボ受けには国鉄らしいサボが入っています。音鉄の方にですが、オルゴールは客車列車らしくハイケンスの「セレナーデ」ですが、スハフ14-5は電子音式、スハフ14-1は機械式となっています。機械式はJR線上ではJR西日本12系700番台「SLやまぐち」仕様車が引退したのを最後に全滅したと思われ、かなり貴重な存在となってしまいました。

 

さ、長くなりましたがようやく内部へと入っていきます。まずはデッキドア、この時期の客車らしい折戸構造とされています。手前側に開くのと、足元にはステップがありますので注意しましょう。

 

トイレです。中は改装されており、洋式のタッチセンサーによる自動洗浄つきのものに交換されています。

 

洗面台はアコーディオンカーテンが取り付けられ、車内販売準備室となっています。

 

最前面です。車掌室は貫通構造のため両側に配置されています。貫通扉から見えるのは残念ながらヨ太郎ですね…。

 

後ろはこの通り、DE10の前面がドーンと。なお現行の運用では基本的にDL補機はやっていないようで、SLのピンチヒッターで牽引・補機に当たることがある程度かと。

 

いよいよ車内です。青いモケットの座席がズラリと並ぶ国鉄時代そのままの光景、実に素晴らしいです。

 

デッキとの仕切りです。化粧板はベージュ色、仕切り扉は無塗装で窓も現代の水準からすると小さめです。

 

一部には荷物置き場を併設した区画もあります。大きな荷物を持っていても安心ですね。

 

仕切り扉の外側には指定席の文字。

 

荷物置き場です。カーブで「荷物だんじり」にならないようにセーフティバーが設置されています。

 

2号車の荷物置き場にはスロープが置かれています。ステップが残る14系、車椅子対応の他に車内販売のカートの出入りに使われるみたいですね。何気に「大樹」のステッカーが貼られています(笑)

 

天井です。カバー付きの照明、分散式の冷房、スピーカーと、必要最低限のものしかありません。これぞ国鉄クオリティ、非常に潔いです。

 

窓です。固定窓で、2席に1枚が割り当てられています。鬼怒川温泉行きでは偶数、下今市行きでは奇数を指定すると展望としては恵まれます。むしろ、そうした方がいいでしょう。

 

座席です。日本の長距離列車で普通車クラスのリクライニングシートが普及し始めるきっかけとなった記念碑的座席で、現代では「簡易リクライニングシート」と呼ばれています。まさか2010年代も後半になって、完璧に原型のままで残る簡易リクライニングシートに動く列車内で体験することが出来るとは、と少し感動。

 

そりゃあ、現代の水準からすればシートピッチも狭けりゃテーブルも窓側にちっちぇーのがあるだけで、何よりリクライニングは一段ポッキリで体重を掛けておかないとバターンと元に戻るなど率直に言えば「うわぁ…」なのですが、鉄道での移動が主流だった時にはこれで料金は取れるしこの座席で何時間も過ごし、もっと言えばつい最近まで夜行列車にも入っていたわけです。鉄道における長距離移動の歴史において記念碑的存在であり大変貴重です。

 

車内販売では、黒いアイスクリームが売られています。蓋にはSLもデザインされています。

 

この列車、乗車時間は30分前後、速度もSLへの負荷を考慮してゆったりで窓も14系は固定式という、「SL=五感をフル活用して楽しむべき」と思っている方には少し物足りないと思います(今でこそ12系に展望スペースが付きましたが…)。逆に、沿線での撮影や折り返し駅での転車台見学とセットで14系の簡易リクライニングシートを楽しみたい方には中々オススメです。読者の中にもそのようなコアな方、いるでしょ?(笑)

 

さてここからはSL大樹アラカルト、運行に当たっては各地のJRから車両や設備をかき集めてきています。まず中心となる蒸気機関車、こちらはJR北海道所有のC11 207号機を借り受ける形で運転します。濃霧での運転を考慮してライトが2つとなっていることから、「カニ目」の愛称がありますね。

 

後部には東武のL字形アンテナが追加されています。

 

そして、機関車の後ろに必ずくっついているのがこの車掌車です。移籍に際してLEDの前照灯が増設されています。

 

「ヨ太郎」ことヨ8000形です。JR貨物とJR西日本から移籍した車両で、元JR西日本車は旅客JR各社を見ても最後の車掌車でした。なお、必ずSLの後ろにくっついているのは、ATSの機器をこちらに積んでる関係なんだそうな。

 

そして、下今市から鬼怒川温泉までは勾配区間となるため、補機としてディーゼル機関車が付きます。DE10、こちらはJR東日本からの譲渡となります。こちらも片側の煙突を埋める形でL字形アンテナが追加されています。

 

SLが切り離されると、なんだかかつてのローカル線の客車普通列車みたいですね。

 

その横を、颯爽とヨ太郎とカニ目が通過。

 

赤いのが並びました。

 

鬼怒川温泉駅では、このSL運転に際して引き込み線と転車台が設置されました。この転車台はJR西日本の三次駅にあったものを移設しています。転車の時もヨ太郎と一緒、かわいいですね(笑)

 

そしてこちらが下今市駅の転車台。同じくJR西日本の長門市駅から移設されました。

 

満を持して運転を開始した「SL大樹」、譲渡された車両や設備はかなりの経年が進んでおりメンテが鍵になってくると思われます。ディーゼル機関車以外の車両の整備は車両保存の実績を積んだ東武博物館が行うとのことで、末永く安定した走行が出来ることを祈るばかりです。