サンシャイン!!2期感想「#11 浦の星女学院」篇 | 肯定ログ

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好きなものは好きと言います。肯定ペンギンなので。備忘録。

 ラブライブ!サンシャイン!!2期感想「#11 浦の星女学院」篇です。

 

 「終わり」と向き合った彼女たちが見るものがいったい何なのか。

 

 

 浦の星女学院の生徒からAqoursへ。

 

 Aqoursから現実に生きている僕たちへ向けた、熱いメッセージを感じる回だったと思います。

 

 

  • 浦の星女学院 閉校祭

 浦の星女学院の生徒から、閉校祭開催の申請がありました。

請求内容:閉校祭開催の許可

 詳細:今年度でこの学校が統廃合することが決定してしまいました。しかし、このまま何もせずにただ学校が閉校する姿を見ているだけというのはとても寂しいです。

Aqoursがスクールアイドルとして学校の名前を残してくれる。

けど私たちもこの学校の生徒として何かを残したい。 

つきましては、閉校祭という形で学校全体が盛り上がれるイベントを行う許可をお願いいたします。

 最後は浦の星のことを思ってくれる卒業生や近所の人たちも交えてこれまでの長い歴史に感謝を込めて締めくくりたい。

これが今の私たち、浦の星のみんなの気持ちです。 以上、よろしくお願い申し上げます。

 浦の星女学院 生徒一同

 

 「Aqoursがスクールアイドルとして学校の名前を残してくれる」。

 

 浦女の生徒たち一同は、Aqoursがラブライブで優勝することを信じて疑っていないことが分かります。

 

 私たちだって何かしたい、というのは1期「#13 サンシャイン!!」でもむつの口から出てきた言葉です。

 

 この企画は浦の星女学院生徒一同からAqoursへのプレゼントという面もあるでしょう。

 

 企画の申請はすんなり受理されたようで、全校生徒総出で最後のお祭りの準備に取り掛かります。

 

 理事長や生徒会長などの立場を忘れて、それぞれが好きなことを思いっ切りやってやろうという空気がとても青春って感じがしていいですね。

 鞠莉だったら「ブレイコウ」なんて言っているんじゃないでしょうか。

 

 ところが準備を進めていく中で、トラブルが発生しアーチが破損。作業が間に合わないという事態に。

とにかくこの遅れをどうするか。閉校祭は明日なんですのよ?
頑張ります…
それで済む話ですの?もう下校時間までわずかしかありませんわ。
そろそろ終バスの時間ずら。
準備間に合うかなぁ。
だよね…

 誰からも「残って作業する」という提案が出ない。

 

 すると鞠莉からの提案で「残って作業するのを許可するし、帰りもみんな責任持って送る」という提案があります。

 

 「最後なんだもん、許してよ」と申し訳無さそうに話す鞠莉に対して、

 

  「誰も許さないなんて言ってませんわ。」

 

 おでこに判子がついたままで全然キマってないのにキメ顔なの本当に良いです。

 

 それどころか「最初からそのつもりだった」とまで言います。

 

 夜遅くまで残って学園祭の準備をするのって、「青春」って感じしますよね。青春まっしぐらです。

 ダイヤ自身、こういう非日常なできごとに憧れがあったのではないでしょうか。

 

 そもそも、どの現場も進捗全然ダメみたいだったのでアーチが壊れていようがいまいが関係なかったですよね。

 

 

 

  • 普通怪獣ヨーソロー

 みんなが鍋をつついたりしている中、曜の姿が見当たりません。

 

 

 

 どうやら曜は誰にも悟られることなく、ひとりでアーチの修復をしていたようです。

 

 たくさんの衣装を作ったり、一時期はダンスの担当もしていた曜。

 

 もしかすると、渡辺曜という人間はこうしてアーチを直したように、人に見られていないところやアニメで描かれていないところでもっとたくさん誰かの為に動いていたのかもしれません。

 そう考えると、渡辺曜という存在がたまらなく愛おしく思えてきました。

 

 

 

 普通怪獣ヨーソローの咆哮。

 

 言わずと知れた、1期「#1 輝きたい!!」で千歌がやっていたことのマネです。

 

 好きな人がやっていることってマネしたくなるんですよね。

 ミラーリングという心理らしいですが、それについては過去に語っていたりするのでお時間があれば是非。

 

 

私ね、千歌ちゃんに憧れてたんだ。
千歌ちゃんが見てるものが見たいんだって。
ずっと同じ景色を見てたいんだって。

  千歌に憧れていたと語る曜。

 

 親友に「憧れてた」なんて言うのって、なかなかできないことじゃないでしょうか。

 

 少なくとも以前の曜だったらこんなこと出来ていなかったはずでしょう。

 

 お祭りの前夜、浮足立つ非日常の空気に当てられてちょっと気恥ずかしいことも言えてしまったというのもあったのかもしれません。

 

 1期「#11 友情ヨーソロー」では、曜は自分のあり方に悩んで涙しました。

 そんな子が、2期「#11 浦の星女学院」では何の飾りもなくまっすぐに自分の気持ちを伝えている。

 

 かけがえのない日々を過ごして、曜も成長していたのでしょう。

 それだけで「渡辺曜」の愛おしさ倍増です。

 

 

  「千歌と同じ景色が見たい」と言って千歌のマネをし、みかんの箱に乗って同じ景色を見ようとした曜。

 

 「千歌と同じことをすることで同じ景色が見られるかもしれない」 という願望が曜の胸にずっとあったものだったとしたら。

 1期のOPテーマソング【青空JumpingHeart】。

 

 この衣装、なぜ千歌と曜だけが同じタイプだったのでしょうか。

 

 衣装担当の職権乱用と言ってしまえば聞こえが悪いですが、曜の持っていた「千歌とおなじことをすることで同じ景色が見られるかもしれない」という願望が詰まっているものなのかもしれません。

 

 ともあれ、しいたけがアーチを壊さなければ曜はこの気持ちを千歌に伝えることはできなかったでしょう。

 

 「全てに意味がある」んです。

 

 

 

  • 「消えない」のは

 無事に準備を終え、​閉校祭の開催です。

 

 それぞれが思い思い、やりたいことをやって楽しんでいるシーンは物語終盤の箸休めと言った感じで心地よいものでした。

 

 ​​​​​​でもそんな「心地いい」時間というものは長く続かないもの。

 

楽しい時間というのはいつもあっという間で
そこにいる誰もがこの時間がずーっと続けばいいのにって思ってるのに
でも、やっぱり終わりはきて
時が戻らないこと、もう一度同じ時間を繰り返せないことが、とても寂しく思えるけど
同時に、やっぱりどうなるかわからない明日のほうがちょっぴり楽しみでもあって
ああ。これが「時が進んでいく」ってことなんだなぁって実感できるずら
そして気付く。きっと、2度と同じ時はないから。
この時が楽しいって思えるのかな。
今こうしていることが、たった一度きりだってわかっているから。
全力になれる。
いつか終わりが来ることをみんなが知っているから
終わりが来てもまた明日が来ることを知っているから
未来に向けて歩き出さなきゃいけないから
みんな、笑うのだろう。

 アニメキャラとしてのAqoursの時間も有限であるとともに、キャストのAqours、そして僕たち。

 それぞれが、この時間は有限であること、終りが来ることを知っています。

 

 でも、だからこそ楽しい。

 

 私事になりますが、以前より沼津に遊びに行く機会はありまして、ラブライブ!サンシャイン!!に出会ってから以前よりずっと沼津が好きになったし、サンシャイン!!を通じていろんな出会いがありました。

 

 余所者として観ている沼津のいまは、ものすごく楽しいです。

 

 駅を出れば自分の好きなキャラクターの顔がすぐに飛び込んでくるし、町のどこを歩いていてもバスやタクシーを見かける。

 

 お店に入れば顔なじみの店員さんや見知った顔がいたりして。

 あそこのお店が美味いだとかあそこの景色が奇麗だとか、他愛ない時間を過ごすわけです。

 

 とにかく「楽しい」の一言なんです。

 

 いつかはサンシャイン!!のブームは去ってしまうし、僕自身いつまでこんなことをしているのかも分かりませんが、必ずこの時間は終わってしまうのです。

 

 でも、だからこそ"真剣"になりたい。2度と無いからこそ全力になりたい。

 そう思ってずっとラブライブ!サンシャイン!!というコンテンツに向き合ってきました。

 

 たぶんきっと、いま"真剣"な人たちはみんなこうなんじゃないかなぁ、なんて勝手に思っています。

 

 ずっと抱えていた想いと同じことがキャラクターのセリフを通して発せられ、この気持ちは僕だけじゃなくて、キャストさんを始め監督や脚本、携わっている人みんなの想いがひとつになっている感覚さえありました。

 

 

 

 話をアニメへ戻します。

 

 宴も酣。キャンプファイヤーを背に鞠莉が閉会の挨拶をするシーンがとても印象深いです。

 

 

これで浦の星女学院閉校祭を終わります。
この学校がどれだけ愛されていたか。どれだけこの町にとって、みんなにとって大切なものだったか。
だから。この閉校祭は私にとって何よりも幸せで、私にとって何よりも温かくて…。

 

ごめんなさい。
もうすこし頑張れれば、もう少し…

 

 理事長として、Aqoursとして、色々な思いがあったのでしょう。

 

 閉校祭にはかつてこの学校に通っていた卒業生や、もしかしたらこの学校に通う未来があったかもしれない子どもたちが参加していました。

 

 ずっとむかしからあったその歴史をつなげることができなかった。

 

 でもこれは世の流れとして仕方のないこと。

 鞠莉が謝ることではないし、謝っても仕方のないこと。

 

 背負っていたものの大きさを実感し、鞠莉は押しつぶされそうになりながら嗚咽を押し殺します。

 

 

 

Aqours!Aqours!!Aqours!!!

 燃える炎を背に顔に陰りを見せる鞠莉を激励するかのようなAqoursコール。

 

 冒頭で書いたように、このお祭りは「浦の星女学院からAqoursへ」のプレゼントでもあるのです。

 

 廃校は寂しいものではあるけれど「終わりじゃない」。

 

 「Aqoursがこの学校の名前を残してくれる」と信じている以上、辛気臭い顔のまま戦場に旅立たれても寝覚めが悪いでしょう。

 

 

 

 無言で鞠莉の背中を流すダイヤが#11 でベストシーンです。

 

 「黒澤ダイヤにあえて喋らせない」ことで彼女の機微に重みを持たせる手法は1期「#9 未熟DREAMER」にて部室で取り調べを受けているときからあるもので、鞠莉とダイヤの過ごしてきた時間・信頼関係が、言葉じゃなくてもヒシヒシと伝わってきます。

 

 

 なにより、廃校が決まったあの時、ダイヤは嫌というほど鞠莉から謝罪の言葉を聞かせられていたでしょう。

 

 

 「最高に盛り上がろう!」と、まるでライブのアンコールのように弾ける鞠莉を見つめ、またも無言で微笑むダイヤ。

 

 これまで計24話あったラブライブ!サンシャイン!!のなかで、セリフの量では多い部類にあるダイヤの「無言」が僕はとても好きです。

 

 ライブのアンコールよろしく、「勇気はどこに?君の胸に!」の大合唱が行われますが、これも実際に僕たちが体験していて非常にシンパシーを感じるものだったのではないでしょうか。

 

 「一緒に歌う」って、ものすごく「一つになってる感」があると思っていまして、Aqours2nd ツアー埼玉公演での【Landing action Yeah!!】の合唱は「ここにいてもいいんだ」と存在を肯定されている感覚さえありました。

 

 

 

 合唱が終わると、燃えカスになったキャンプファイヤーが映し出されそのまま#11が終わる、というカタストロフィな雰囲気でした。

 

 炎が消えてしまった。

 祭りは終わってしまった。

 

 でも、夢は消えない。

 

 僕はこのキャンプファイヤーは、決して刹那的であったり悲劇的なものとして描かれたものではなく、Aqoursの狼煙・Aqoursを照らす篝火であったと思いたいのです。

 

 サンシャイン!!において、Aqoursの名前と対をなす属性の「火」や「炎」の要素を持つ曲が2つ。

 

 ひとつは【MY舞☆TONIGHT】。

 

 Aqoursが予選で披露し、Aqoursが反撃のために狼煙としてあげた炎。

 

 「踊れ踊れ熱くなるため」や「最高の今日にしよう」など、この曲の「炎」はキャンプファイヤーで踊って最高の今日にしたいという願いがそのまま当てはまります。

 

 

 もうひとつは【夢で夜空を照らしたい】。

 

 「自分たちはここに居る」という、居場所を照らす篝火の歌。

 

 この曲はスカイランタンがあまりにも印象的ですが、そのスカイランタンもひとつひとつは「小さな焔」です。

 

 この時のAqoursはまだ6人で、当然浦の星女学院の生徒もAqoursの一員ではなかった。

 

 やがてAqoursは9人になり、初めての地区大会や予備予選、リベンジの地区大会を通じて全校生徒を「10人目」として巻き込む存在になりました。

 

 「Aqours」の名前を形どった光を空に飛ばしたころと、「浦の星女学院」の名前を空に飛ばす今。

 

 

 夢で夜空を照らしたい。

 

 消えない。

 

 消えないのは今まで自分を育てた景色。

 

 Aqoursだけではなく、浦の星女学院の想いを乗せて。

 

 消さない。

 

 消さないように、こんどは「浦の星女学院」の名前を刻むためにここから飛び立つのです。

 

 キャンプファイヤーの炎は消えてしまいました。

 

 でも、夢は消えないし、自分を育てた景色も消さない、消させない。

 

 狼煙を上げ、胸に灯った篝火を絶やさないように。

 

 

 Aqoursの目的は「学校の名前を残すこと」であり、「ラブライブ優勝」はその手段でしかありません。

 

 でも、僕はぜったい優勝して欲しいと思っています。

 優勝した上で、最高の形で名前を刻んで欲しい。

 

 Aqoursだけじゃなく、浦の星女学院として一つになった今なら、それができるはずだと信じたいです。

 

 浦の星女学院としての総意で挑む戦いだからこそ、

 

 

 

 「憧れの舞台に行ってきます。

 浦の星女学院の名前を刻みに。」

 

 

 終わりと向き合った彼女たちは、どんな顔で学校を、海を、太陽(サンシャイン)を見ているのでしょうか。

 

 

次回、「#12 光の海」