ラブライブ!サンシャイン!!2期感想ブログ「#12 光の海」篇になります。
これまでの物語、歩み、やってきたことのひとつひとつが無駄ではなかったこと。
全てに意味があったこと。
過去との対比や意趣返し、セルフオマージュなど個人的に唆るものの数々や、各キャラクターへきちんと焦点を当てた上でのストーリー進行、「サンシャイン!!欲張りセット」と呼んでいます。
すべての要素が絡み合って、とても美しい回だった「#12 光の海」。
殻を破れ、今こそが本当のはばたきのとき。
- 「勝つ」ためには。
勝負ごとに「勝つ」ためには何が必要か。
たゆまぬ努力や日々の鍛錬、いろいろありますが、まず「敗者」がいなければ「勝者」は生まれません。
「相手なんか関係ない!」と啖呵を切った千歌ですが、他のスクールアイドルも自分たちと同じように毎日努力し、夢の舞台を目指していたことを絵馬を見て実感します。
叶わなかった願いはとても侘しいものです。
この想いたちを全てねじ伏せ、その屍の山の上に頂点として立ったとき、果たして自分は本当にそれで「やりきった」と思えるだろうか?
きっと千歌はそう思ったのではないでしょうか。だから躊躇った。
「勝つ」ことに躊躇いを感じ始めた千歌へ、SaintSnowのふたりが現れ声をかけます。
「勝ちたいですか?」
千歌さんがいつか、私に聞きましたよね。
「ラブライブ、勝ちたいですか?」
それと、誰のためのラブライブですか?
夢の舞台を控えた演者にかける言葉にしては、あまりにも「揺さぶり」じみているような気も。
しかしこれは聖良なりの激励であったのかもしれません。
神田明神といえばラブライブにおいてスクールアイドルのメッカ。
SaintSnowもかつて自分たちの願いを込めに訪れ、そのとき千歌と同じように絵馬に書かれた願いを目の当たりにし、「勝つ」ことに躊躇いを感じていたとてもおかしくありません。
「でも、自分たちのために勝たなくてはならない」と自分を律するためにSelf Controlを歌っていたのかも。
聖良の問いに、明確な「敗者」となった人間の問いに千歌は答えられません。
もはや赤の他人とは言えない存在となったSaintSnowに対し、その場しのぎの返答は無礼です。
最後のライブを控えたのはAqoursだけではなく大体のグループがそうであり、敗者であり既に最後を迎えたもの・SaintSnowはAqoursとは対になっている存在。
この人達のような想いを持った人たちを全員ねじ伏せる。
千歌にはその覚悟がまだ足りてなかったのです。
宿に到着し、千歌はAqoursはのメンバーひとりひとりに戦う意志を確認します。
マルはずっと、ルビィちゃんとふたりで図書室で本を読んでるだけで幸せだったけど
千歌ちゃんたちのおかげで、外の世界に出られて、みんなと一緒ならいろんなことができるって知ることができた。
だから、勝ちたいすら。
それが今、一番楽しいずら。
千歌ちゃん、マルをスクールアイドルに誘ってくれて、ありがとう。
みんなと一緒だから楽しい、だから勝ちたいと答える花丸。
どうせなら最高の結果で終われたほうが楽しいに決まってるんです。
ルビィはひとりじゃ何もできなかったのに、スクールアイドルになれてる。
それだけでもうれしい。
もちろん、おねぇちゃんたちの最後の大会だし、勝ちたいって思ってるけど
いまは、大好きなみんなと一緒に歌えることが一番嬉しい。
勝ちたいけれど、それ以上に今が楽しくて嬉しいと答えるルビィ。
ルビィの優勝への気持ちは「#7 残された時間」でも言及されているとおりです。
えっ、アンタ馬鹿なの?
そんなの勝ちたいに決まってるでしょ。
世界中のリトルデーモンたちに私の力を知らしめるためによ!
クックック。ラブライブで勝利を手にするには、我が力は不可欠。
ま、しかたない。もう少しAqoursとして堕天してやってもいいぞ。
勝ちたいに決まってる、と言い切る善子。
善子がその羽根を広げられるのは、Aqoursしかありません。
急にどうしたの。私はせっかくここまで来たんだし、勝ちたいかな。
でもそれ以上に楽しみたい。鞠莉やダイヤとの最後のステージを楽しみたい。
本当は清々してんだけどね、やっとこれで終わりだって。
だからこそ勝ちたい。
今をもっともっと楽しみたいから。
勝ちたい、でもそれ以上に楽しみたい、だから勝ちたい、もっと楽しみたいと堂々巡りの果南。
果南の勝利への執念は、かつての過ちとして描かれた2年前の鞠莉のケガや、SaintSnowを見て「1年のころの自分みたい」と言ったことからも伺えること。
勝ちたいかって?
理事長としての私は、全校生徒のために勝たなければならないと思ってるよ。
あんなにも愛されてる学校のためにも。
でも、少しだけワガママを言うと。
私は、Aqoursとして勝ちたい。
9人でこんなことできるなんて、なかなか無いよ!
鞠莉が制服なのは、理事長としての建前が語られているからでしょう。
しかし鞠莉の本音は、「浦の星女学院」の「理事長」としてではなく「Aqoursとして勝ちたい」、ということ。
もちろん、勝ちたいですわ。
浦の星全校生徒の想いを背負ってきましたから。
勝ってみせますわ。
それと「Aqoursの黒澤ダイヤ」として誠心誠意うたいたい。
どこであろうと、心を込めて歌を届けるのがスクールアイドルとしての、わたくしの誇りですわ。
鞠莉と同じく、学校を背負ってきているという建前からダイヤも制服です。
そしてこちらも「浦の星女学院」の「生徒会長」としてではなく、「Aqours」の「黒澤ダイヤ」としてうたいたい、という本音。
この「建前」としての立場ではなく「自分」として勝ちたいかどうか、というのは、聖良の言うように「誰のためのラブライブなのか」ということです。
みんなそれぞれ色々な動機やきっかけがあってスクールアイドルを初めて・続けているけれど、結局はすべて「自分のため」。
自分のためにやっていることが他人にプラスの作用をしているというだけなのです。
このシーンのいいところは、ひとりひとりに焦点を当てて、ふんわりとしていた各々の機微を明確にしてくれたところ。
学年ごとや何人かの組み合わせでのこういう描写は過去回にも何度かありましたが、メンバー全員にこうして焦点を当てて綺麗にまとめているのは美しいとしか言えません。
今まであったラブライブ!サンシャイン!!の計24話がすべて意味をなしているのです。
同調圧力から避けたというのも個人的にはポイントが高いです。
他人の意見を遮断し、ひとりひとりが別々の場所で同じことを想っているというのが素晴らしいのです。
残る意思確認は曜と梨子。
もちろん。
やっと一緒にできたことだもん。
だからいいんだよ。いつもの千歌ちゃんで。
未来のことに臆病にならなくて、いいんだよ。
かつての曜はこんなことが言えたでしょうか。
1期「#11 友情ヨーソロー」で千歌に背中を向けていた曜とは対照的に、千歌に本音を言って、背中を押すように千歌を肯定してあげるなんて。
私、自分が選んだ道が間違ってなかったって心の底から思えた。
辛くて、ピアノから逃げた私を救ってくれた千歌ちゃんたちとの出会いこそが奇跡だったんだって。
だから勝ちたい。ラブライブで勝ちたい。
この道でよかったんだって証明したい。
今を精一杯全力で、心から、
スクールアイドルをやりたい!
普段は理性的に描かれることの多い梨子が取り乱して想いをぶつけるところはずるいですね、危うく推し変するところでした。
各々の意志を確認し、今度は千歌が最後の意思を確認される番。
0を1にして、1歩1歩進んできて。
そのままでいいんだよね。
普通で、怪獣で、今があるんだよね。
私も全力で勝ちたい!
勝って、輝きを見つけてみせる!
普通だからここまで来られた。普通だったから何かを変えたくて足掻いて、今になっていること。全てに意味があるということ。
当ブログでも何度か触れていますが、千歌のエネルギーは「期待」や「肯定」です。
今までのように普通で、怪獣で、ワガママで、後先のことは考えない無謀なコドモでいいって言ってくれる仲間たち、良いですね。
勝つための覚悟はできた。
- 黒澤ダイヤについて
どうしても書かねばならないと感じたので、黒澤ダイヤについて少し。
風評から感じるに、ダイヤは謎の多い人間だと評されていたように感じます。
最たる理由としては「砂浜にAqoursと書き、継承させたこと」なのかなぁ、と思っております。
肯定ログ「#10 シャイニーを探して」篇 で少し書いたとおり、僕はあの行動を「願掛け」だと捉えていました。
帰ってくる場所を用意していたのは果南だけではありません。
#9 未熟DREAMER放送当初から僕はずっと、ダイヤのこの行動を「願掛け」だと思っています。
書いておいた名前を2年生が見るかどうか、見たとしても選ぶかどうかわからない、賭けと呼ぶには勝率の低すぎる、叶うかどうかすら分からない願いです。
「Aqours」という場所を復活させ、果南と鞠莉が帰ってこられる場所を用意していたダイヤ。
とはいっても、これは単なるいちオタクの勝手な妄想でしかないものです。
しかし「#12 光の海」で状況は変わりました。
でも、わたくしが書いたことは、現実になるんですわよ。
決戦の前に願い事を書き、あまつさえ鞠莉が海外へ行くときにも「ずっと一緒」という願いを書いていたと言うではありませんか。
その願いは成就し、Aqoursは再びその名前の旗を立て、鞠莉や果南と再び一緒にいられることになりました。
そんな過去を踏まえて自信満々に「自分の書いたことは現実になる」なんて、いままで詳細が描かれなかったダイヤの空白期間を証明するに余りある言葉なんです。
なによりも、物言わぬことの多かったダイヤの口から、自身の行動の証明がされたことが本当に嬉しかったのです。
もうひとつ、「#6 Aqours WAVE」で果南の考案したフォーメーションを採用するかしないかの悶着が淡島にてあったとき。
このときは3年生の3人しかいないのに、この時でさえダイヤは「学校の存続のためにやれることはすべてやる。それが生徒会長としての義務だと思っていますので。」と生徒会長としての肩書きを盾にしているのがどうにも腑に落ちなかったのです。
そんなダイヤがついに、「Aqoursの黒澤ダイヤとして誠心誠意うたいたい」と言ってくれたこともまた嬉しかったのです。
お当番回まで貰っておいて、さらにこんなに優遇されてしまって本当に良いんでしょうか。
黒澤ダイヤ欲張りセット、ごちそうさまでした。
- 啐啄同時。はばたきのとき。
ライブパートの「WATER BLUE NEW WORLD」は圧巻のステージでした。
歌詞にもこれまでのAqoursのかけがえない日々がたくさん詰まっていて、集大成だったようにも思えます。
雲の上を漂っているようだった、と形容した聖良の言うとおり雲の上をイメージした世界。
光るサイリウムが水の色をした、まさに光の海。
僕は楽曲派ではないため楽曲について触れることは出来ませんが、「WATER BLUE NEW WORLD」の衣装で注目したいポイントがあります。
花丸、鞠莉、梨子の3人の衣装だけなぜロングスカートのタイプだったのか、というところにふれてみたいと思います。
この3人に共通する点は「スクールアイドルを知らなかった」こと、もう少し大げさに言えば「他の世界を知らなかった」3人です。
そして、「今の自分を変えたいと自分から願った」3人でもあるのです。
花丸・鞠莉・梨子は自分の殻を破りたかった、外の世界を知りたかった3人です。
「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。
「啐」というのは、卵の中の雛鳥が殻を破って生まれようとする時、殻の内側から雛がくちばしでつつくことを指します。
「啄」というのは反対に、親鳥が外から殻を破るためくちばしでつつくことを指します。
両者の行動が一致して雛が生まれるように「機を得て両者相応じる得難い好機」のことを「啐啄同時」というようです。
両者の行動が一致する、というところが大きなポイントです。
まずは花丸のケース。
もともと花丸はルビィからスクールアイドルに誘われてみても、まったく乗り気ではなかった人間です。
花丸ちゃんは興味ないの?スク-ルアイドル。
マル?ないない、運動苦手だし、ほら、オラとか言っちゃう時あるし…。
この時ルビィからの「啄」には答えられません。
次に鞠莉のケース。
鞠莉は外の世界を知りたがっていたものの、親から反対されていた人間です。
鞠莉の「啐」と、果南とダイヤの「啄」は釣り合いません。
大きくなってからも「啐啄」は一致していませんでした。
最後に梨子のケース。
梨子は完全にピアノの世界に生きていたため、スクールアイドルどころか他の世界にも関心がない様子です。
千歌からの熱烈な「啄」にも無関心です。
そんな3人が、それぞれが自分を変えたいと思っていたこと、それに加えて「他者が手を貸してくれたこと」が殻を破るきっかけになったのではないか。
自分だけの力ではないし、誰かだけの力だけでもない、というのがとても重要だと思うのです。
花丸、鞠莉、梨子は「外に連れ出してくれた、救ってくれた」と恩義すら感じているフシがありますが、それは違うのです。
これはAqoursの全員に言えることですし、前述もしましたが、だれもが「自分のため」にやっていることなんです。
それについて、どっちがどっちに何かをしてあげた、という縛られた関係は平等じゃない。
少なくとも、仲間とは言えない関係になってしまう。
踊るにしては長すぎるスカートは、自身の殻であるとともに彼女たちを守るのではなく拘束していたもの。
梨子が音ノ木坂学院を訪れ、過去にケジメを付けるために弾いていた曲の名前は「想いよひとつになれ」。
梨子は、想いをひとつにしたかった。
1期「#2 転校生をつかまえろ!」にて、「本気でスクールアイドルやろうとしてる千歌に失礼」だと自分に閉じこもったときのアンサー。
だからここにきて涙ながらに「スクールアイドルをやりたい」という言葉を返したのでしょう。
啐と啄をぶつけ合う、ホンキをぶつけ合うことで未来を手に入れる、ということなんです。
想いをひとつにして、啐啄同時にして、梨子はようやく解き放たれたのではないでしょうか。
ともすれば、奇しくも1期の#12と同じ話数に当たる2期#12は、本当の意味での「はばたきのとき」なのかもしれません。
高精度な慧眼を持つSaintSnowの鹿角聖良いわく、「ステージって、不思議とメンバーの気持ちがお客さんに伝わるものだと思うんです。今のみなさんの気持ちが自然に伝われば、きっと素晴らしいステージになると思います。」とのこと。
「勝つ」というひとつになった想い。伝われば、必ず。
次回、「#13 私たちの輝き」