韓国映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』視ました!(内容に触れています) | ruriのブログ 韓国ドラマ独り言(혼잣말)

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韓国のドラマが好きで、俳優のイ・ジュンギ氏のファンです。韓国ドラマについて感じた事などを中心に独り言を書きます。ネタバレもあります。

6月24日に韓国で大ヒットした映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』を視て来ました。

この映画は、1980年に韓国で起きた光州事件を題材にしています。私は、かつてイ・ジュンギさんの出演した映画『光州5.18(原題『화려한휴가華麗なる休暇)』キム・ジフン監督2007年作品)を視て以来、この事件に興味を持っており、また、先日、NHKのBSプレミアムで放送した『アナザーストーリーズ その時、市民は軍と闘った~韓国の夜明け 光州事件~』を視て、ぜひ見たいと思いました。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(原題『택시운전사)の公式HPを視て、渋谷のミニシアターUPLINKで上映中であるのを知り、こちらへ行ってみました。この映画館は、初めて行きましたが、とてもかわいらしい、カフェのような映画館でした。

 

映画は、評判にたがわず、とても良かったです。泣けましたが、『光州5.18』ほどには、号泣ものではありませんでした。

『光州5.18』は、特典ディスク付きコレクターズエディションのDVDを持っているのですが、泣けて泣けて仕方がないので、本編3回・特典ディスク2回しか視ていません。

光州5.18』と『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、同じ光州事件を扱っていますが、作風がかなり異なります。

『光州5.18』が、戒厳軍と闘った光州市民の視点から描かれているのに対し、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、実在したソウル在住のタクシー運転手キムサボクとドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターの視点から描かれています。

また、光州事件は、韓国で「518(オーイルパル)」と呼ばれているように、5月18日に全南大学生のデモ隊鎮圧に空挺部隊が投入された日が事件の幕開けとされています。映画『光州5.18は、5月18日の数日前の平穏な日々から、5月27日に道庁に立てこもった市民軍を戒厳軍が制圧するまでが描かれているのに対し、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、日本特派員として仕事をしていたユルゲン・ヒンツペーターが、光州で事件が起きていることを知り、キムサボクの運転するタクシーで光州に乗り込み、事件の真実を世界に発信するために脱出するまでの期間を中心として描かれています。

 

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』を御覧になった方で、『光州5.18をまだ御覧になっていない方、ぜひ、『光州5.18』も御覧下さい。レンタル店のアジア映画のコーナーに大抵、置いてあると思います。

 

『光州5.18』には、私が応援しているイ・ジュンギさんが出ていますが、他にも良い俳優さんが大勢出演していらっしゃいます。イ・ジュンギさんのお兄さん役のキム・サンギョンさん、市民軍のリーダー役のアン・ソンギさんとか特に良いですね。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』の俳優さん達も、良かったです。光州のタクシー運転手ファン・テスル役のユ・ヘジンさんは、イ・ジュンギさんが出演した映画『王の男』で、大道芸人ユッカプを演じていました。いい味出している俳優さんですね。

 

『光州5.18』を初めて視た時、どうして罪もない国民に対して、軍がこのような残虐非道な仕打ちをしたのか理解できませんでした。

その後、事件の背景に政権を握っていた全斗煥(チョン・ドゥファン)の出身地である慶尚道(キョンサンド)と光州のある全羅道(チョルラド)との地域対立があったということをネットの記事などで知りました。両作品のパンフレットにもそういったことが書かれています。

両地域の対立の要因に高麗王朝の始祖である王建(ワンゴン)の遺訓である「訓要十条」があると言われています。すなわち、全羅道は、風水により反抗的な人物を生み出す地域なので、この地方の出身者を官吏に登用してはならないとされたことにより、現代までいわれのない差別を受け続けているというものです。しかし、風水の件はこじつけで、後百済が高麗に対して最後まで反抗したのが理由だという説もあります。また、三国時代の新羅・百済の時代からの不仲が今も尾を引いているのだという人もいます。

光州のデモに対する過剰鎮圧の背景に実際に地域差別の感情があったかどうか、はっきりしたことはわからないようですが、事件のきっかけの一つに、全斗煥が目の敵にしていた金大中氏(全羅道出身で、光州において人気があった)らの逮捕があったと言うのは、確かなようです。

 

参考文献1では、「空挺部隊が釜山に乱入していれば釜山でも同じことが起こっていたであろう。ソウルであればどえらい、致命的な反撃がソウル市民によって加えられていたであろう。「地域感情」によってしたり顔の説明を加えることの裏には、光州民衆の闘いの本質―普遍的本質―をおしかくす、あるいは認めることを回避する、隠微な心が働いているのである。」と書かれています。

 

光州事件30周年の2010年6月26日に放送されたNHKハイビジョン特集『五月の語り部たち 韓国光州事件 30年目の真実』によると、誰が市民に対する発砲を命じたかは、未だにわからないそうです。

この番組の事を、以前イ・ジュンギさんの公式ファンクラブの掲示板に書いたところ、「視ていない」「視たい」という声が少なからずありました。

『アナザーストーリーズ その時、市民は軍と闘った~韓国の夜明け 光州事件~』と共に、再放送して欲しいと思います。

 

 

参考文献1 武藤一羊1980「われわれは光州民衆とともに生きともに歩むのか」『韓国1980年5月 光州民衆の決起』アジア太平洋資料センター