驚くべき?インドネシア語と日本語の共通性 | MATTのブログ ~ 政治・経済・国際ニュース評論、古代史、言語史など ~

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元新聞記者。 アメリカと日本を中心にニュース分析などを執筆します。

 
 

 

インドネシア語をはじめとするマレー・ポリネシア語と日本語には、多くの共通性があるといわれてきましたが、最近、インドネシア語を少し勉強したため、きょうは日本語とどの程度似ているかを書いてみたいと思います。

 

まずは単語から。インドネシア語の「イクッ」が日本語の「ついて行く」、「スルッ」が「させる」、「マサ!」が「まさか!」、「スカ」が「好き」、「ナマ」が「名前」、「アンダ」が「あなた」「あんた」、「ビビル」が「くちびる」、「スダ」が「済んだ」「もう終わった」、「チャンプル」が「混ざり合う」、「ポトン」が「切る」、「ボチァ」が「坊ちゃん」、「ミヌム」が「飲む」、「マヌ」が「目」「まなこ」、「ナガ」が「大きな長い蛇」、「ビチャラ」が「しゃべる」、「トコ」が日本語の「店」という具合です。

 

さらに面白いのは、インドネシア語で「ヌラカ」が日本語の「奈落」、「ソルカ」が「空(そら)」「天国」ですから、インドネシア語で「ヌラカ、ソルカ」というと、日本語だと「地獄か天国か」という意味になります。日本語の「乗るか反るか」にそっくりですね。実は日本語の「乗るか反るか」という言葉については、その語源がよく分かっていないのです。

 

しかし、日本人がインドネシア語に親近感を持てるのは、なんといっても母音の構造がほとんど日本語と同じである点です。「あ」「い」「う」「え」「お」はほぼまったく同じ発音でよく、違いといえばもう一つ「あ」と「う」の中間にあるあいまい母音があるくらいです。

 

外国語を学ぶとき、ある意味、いちばんむずかしいのは、日本語にはない母音を上手く発音できないことでしょう。言語というものは、たとえ子音が上手く発音できなくても、母音さえ合っていれば、結構通じるものです。それくらい母音が重要なわけですが、その母音がほとんど同じなのですから、これほど日本人が学びやすい言語もないといってもよいのです。

 

では、インドネシア語はどこから来たのでしょうか。マレー語の一方言がインドネシア語になったといわれています。さらに、マレー語、インドネシア語、タガログ語、マオリ語やアボリジニの言語、台湾諸語(高砂語)、その他のポリネシア・フィリピン諸語をひっくるめて、マレー・ポリネシア語族といいますが、これらの祖先にあたるオーストロネシア祖語は、実は約5,200年前の中国福建省や台湾付近で使われていた言葉でした。

 

 

そしてこの言葉が南方に向かい、約3,000年かけて様々な言語に分岐しました。逆に北へ向かった子孫が沖縄の琉球語であり、南九州の隼人の言葉であり、日本語(ヤマト言葉)であり、アイヌ語です。ただし、日本語は、南方から上陸したこのオーストロネシア語系と、シベリア方面から南下してきたウラル・アルタイ語系が縄文時代に日本列島で出会い、混交したものと考えられます。母音をはじめとする音韻やごく基礎的な単語は南方系が基礎となり、そこに北方系言語の単語や文法が加わってできたのが日本語であると考えられます。

 

台湾に伝わるのが高砂族など原住民の台湾諸語であり、中国南部・福建省付近に伝わるのが北京標準語と大きく隔たりのある閩(びん)語です。これらも、オーストロネシア語の子孫といわれています。中国・福建省出身の知人によれば、福建省の方言と沖縄の言葉には共通する言葉が多くあるそうです。

 

ミクロネシア、ポリネシアなど太平洋諸国とフィリピン、台湾、中国南部、そして日本は、かつて一つの大きな共通文化圏であったということですね。古代から中国・福建の人々は(縄文時代の日本人と同様に)好んで遠洋を航海し、諸外国と交易を行ってきたことで有名ですが、みな共通の文化圏であれば当然といえば当然のことですし、航海が得意であったからこそ、言語・文化が広がっていったのだと考えられますね。