中村正人(ソングライター ベース)
ナタリー 2014
◎お2人とも音楽への愛は共通してますよね。
中村 あと亀ちゃんと僕が共通してるのは、ヒット曲が好きってことだよね。
亀田 好きですね。胸を張って好きと言える。ヒット曲って単純にワクワクするんですよね。
中村 うん、そういうものを自分で作りたいと思い続けて何十年。今回も「Bee Geesみたいな曲を1曲書いて」って言われたんで、Bee Geesを聴き直したんだけど、もう涙が出るくらいヒット曲なわけ。「Stayin' Alive」とか、あんなヤバいベースないよね! 例えばAbbaもそうだし、Queenもそう。The Beatlesなんてヒット曲のDNAしかない音楽を最初から作ってるじゃないですか。The Rolling Stonesやポールマッカートニーはちょっと違って、ときどきハズしたりするんです。だけどジョンレノンは1曲もハズしてない。
亀田 なるほど。
中村 ドリカムでもそういう曲を作りたいってずっと思ってるんですよ。
亀田 でもドリカムは今言ったような洋楽の諸先輩方と同じ領域に入ってますよ。ライブに行くとお客さんがみんな歌ってる。あの感じ、間違いないですよ。
中村 そういう楽曲を1曲でも増やしていきたいんですよね。
◎長年活動を続けていて、曲のアイデアが枯渇することはありませんか?
中村 若いとき、先輩たちから「出がらしになっちゃう時が来るよ」って言われても「そんなことありえない」って思ってたんです。なぜかというと僕が好きな大ヒット曲が何万とあって、それを1個1個なぞっていけばいいと思ってたから。
◎どういうことですか?
中村 例えばEarth, Wind & Fireの「Let's Groove」が好きだったら、それをお手本にして「決戦は金曜日」を作ればよかった。そんな手法でいくらでもできると思ってたんです。ところが僕らも200曲以上作って、実は今、カラカラになってる。曲を作ろうと思っても、何も浮かばないときがあるんですよね。だってこの25年の間に、何万のヒット曲のうちの99%はほかの人がもうやっているわけ。でも例えば吉田に教えてもらってDirty Loopsを聴くとスイッチが入ってまた作れたりする。そういうのが今、自分の中で面白いですね。
◎なるほど。
中村 それとやっぱり自分がやってきたことはなぞりたくないじゃない? Earth, Wind & FireがEarth, Wind & Fireのコピーを始めたときに、僕はもう見放したから。つまんなくなっちゃった。
亀田 そうですね。
中村 うん、それだけはやっちゃいけないって思ってたわけですよ。でもね、今回ポールマッカートニーの「NEW」を聴いて驚いたの。若いプロデューサーがポールマッカートニーにポールマッカートニーを求めた結果、すごくいいアルバムができたっていう。あれを見て、俺もまたドリカムを新しくどこかに向かわせることができるんじゃないかなって思った。ミックジャガーとポールマッカートニーがあれだけいいライブをしていいアルバムを作ってくれたことは、俺にとって最高にうれしい出来事だったんだよね。
2014 ダイヤモンドオンライン
僕も東京ドームのライブに行ったのですが、ライブ自体が近年の海外アーティストの中では一番素晴らしかった。しかもモーツァルト以来の(音楽の神様)が、目の前で歌い、演奏している。ビートルズファンでなくても“昇天”してしまうと思います
そう語るのは、DREAMS COME TRUEの中村正人氏。ザ ビートルズの中では“ポール派”で、担当する楽器も同じベース。ポールのライブは約20年ぶりだった。
まだ40代のポールをロンドンのウェンブリーで観たのですが、そのときと比べても今回のほうが断然よい。(昔の名前で出ています)ではなく、今なおトップを走り続ける現役ミュージシャンのライブ。今、彼のコンディション自体が、精神面を含めて非常によいのではないでしょうか。エンターテインメントとしてのレベルの高さは、もはや“匠の技”。歌や演奏を含めたライブのクオリティの高さは、映像でもきっと伝わると思います。
◎中村さんは、もともとドリはどんなアルバムが作れたらいいなと思っていたんですか?
「具体的にいえば、アース・ウインド&ファイアーの『All’N All』(邦題は『太陽神』、1977年発表作)というアルバムがあって、これは当時の最新のポップ、さまざまな音楽ジャンルが融合した理屈なしの醍醐味が凝縮されたものだったんですよ。それと、ビートルズの全アルバムがそうですよね。さっきもいいましたけど、聴き始めたら止まらないってことで、デビューしたときからドリカムが目指していたのは、そういうアルバムです」
◎ドリカムが20年間愛されてきた理由はどこにあると?
もともと、ドリカムの結成の理由は(吉田美和の歌と音楽をみなさんに伝える)というものでした。それ以外にないので、それを達成するためにやり続けなくてはいけません。もちろん、ドリカムがうける時代もあるし、うけない時代もある。世代的にもうける年齢層、うけない年齢層もあります。その中で、僕自身は(懐メロ)って大好きなんですけど、吉田の曲を(懐メロ)に分類させたくないんです。20年前に作られた曲も、今の曲も、みんなに普通に愛されたいと思い続けています。(この曲懐かしいね)も、あっていいんですけど、プラス(今も好きだよ)という感覚でいて頂きたいんです。僕にとってのビートルズ、マーヴィンゲイやスティービーワンダーのような…。彼らの楽曲は、未だに(懐メロ)ではありませんよね? ドリカムをそういうところに持っていくためには、やっぱり走り続けなくてはいけません。そうしていたら(20年経っちゃった)という感じです。
オフィシャルサイト 2015
歴史のBGMとして鳴ってくれるならば、こんなうれしいことはない。僕にとってはビートルズ、アースウインド&ファイアーはもちろんのこと、70年代のワンヒットワンダー、(一発屋)の1曲しかないヒット曲をいまだに歌えたりするように、我々の楽曲がその人の大切な1曲になってくれるのが目指すところですね。
https://www.dailymotion.com/video/x5jgi8e
https://www.youtube.com/watch?v=Vj6OAlDgv9M
https://www.dailymotion.com/video/xd0afs
https://www.youtube.com/watch?v=74m2Q6Qb9M4
https://www.youtube.com/watch?v=yxvSUaeXm1c
https://www.youtube.com/watch?v=8PdjoVJxDmY
ジャパンツアーライブでは、新作『NEW』からの楽曲をはじめ、ザ ビートルズやウイングス時代のヒット曲が織り交ぜて演奏された。『レットイットビー』『ヘイジュード』『バンドオンザラン』……。ファンならずとも“昇天してしまう”曲の数々だ。
「どの曲が印象に残るかといえば、全部です。ポールがすごいのは新曲もビートルズ時代の名曲も遜色なく並べて演奏してしまうところ。1曲目から(これを聴いたらもう死んでもいい)という演奏が最後まで続くわけです。この快感はヤバいです」
ポールのミュージシャンとしての技量の高さにも注目してほしいという。
「僕も若い頃から数えきれないくらい、ビートルズやウイングスの楽曲をコピーしてきましたが、ポールのベースラインは難しいんです。単純な対旋律ではなく、オクターブ上げればストリングスになるような美しいラインを、歌いながら軽々と演奏してしまう。ミュージシャンとしての才能の豊かさを、あらためて感じます」
スペシャル番組では、来日独占ライブと共に、膨大な過去の映像素材の中から、貴重なライブ映像やドキュメンタリー、ニュース素材など、厳選された秘蔵映像も公開される。ポールの素顔に迫る、希少価値の高い“12時間丸ごとポール”の大特集なのだ。
「今回のような特番があると、1人のアーティストを深く知ることができて嬉しいですね。音楽とは何か、音楽を通した人生とは何か、ということも考えさせられます。ポールのファンはもちろん、ビートルズを知らない若い世代にも、ぜひ見てもらいたい」
来日独占ライブでは、少々マニアックな見方もある。ステージでは普通“イヤモニ”と呼ばれるイヤーモニターを耳に入れて演奏するが、ポールは使っていないのだ。「東京ドームは特に音の跳ね返りが強いので、イヤモニがあると楽なんです。1950~60年代の、現在から考えれば設備が整っているとは言いがたい厳しいステージ環境で鍛えられてきた彼の“技”を、ぜひ見てほしい」。
もう一つの注目点は、演奏中に水を飲まないこと。「一緒に行った吉田美和(DREAMS COME TRUE)が、ライブの途中から『水飲んでないよね』と言い出した。本当に1回も水を飲まずに歌い続けたんです。70歳を超えた人が声もからさず、歌のクオリティを落とさずに。帰り道はもう、その話題ばかりでした。僕らも水はともかく、イヤモニなんかに頼ってちゃいかんと(笑)」
当初、ライブのあまりの完成度の高さに圧倒されたと言う中村氏だが、やがて「よし自分も頑張ろう」という気持ちがムクムクと湧いてきたという。
「ステージに立つポールの姿を見て、“自分たちも絶対にできる”という思いにさせられました。60歳で定年を迎えるとして、その10年後の年齢のポールが、これだけいい仕事をしている。ビートルズ世代の読者の方も、この番組を見て、ポールから勇気をもらってほしいですね」
インタビュー
僕は落ちこぼれだったんです。僕は地元の仲間内の音楽サークルのなかでも目立たなくて。大学のサークルでもそうだった。僕の大学のサークルからはサザンオールスターズが出たし、ピチカートファイブのメンバーとか原田真二さんも居たりして、僕はぜんぜん目立たなかったんですよ。
その後、誰かの後ろで弾いたり、セッションミュージシャンをしてたんだけど、裏方の仕事にも色々なやり方があるよなって思って、例えばポールマッカートニーは表だけじゃなくて裏方の仕事もしている。彼はパフォーマーであり、プロデューサーであり、たたき上げの職人ミュージシャンでもあるんですよ。僕も考え直してもう一度、もっともっと表の仕事も意識しながら裏方の仕事をしたいって思ったんですよ。