支那の国境概念 | 池内昭夫の読書録

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本を読んで思ったこと感じたことを書いていきます。

少し長くなるが,支那の国境概念についての重要な指摘を見ておこう。

中国の国境概念について,1986年から87年にかけて,実に衝撃的な「戦略的辺彊(へんきょう)」という概念が提起された。当時中国では「百万人の兵員削減」を伴う中国軍の「量から質」への転換を目標とする「トウ小平の軍事改革」が推し進められていた。その最中,中国軍機関誌『解放軍報』紙上で「国防発展戦略思考」について掲載された論文の1つにそれは発表された。(中略)

 戦略的辺彊とは従来の領土,領海,領空の範囲の限界を指す地理的国境という考え方に相反する考えである。それは「国家の軍事力が実際に支配している国家利益と関係ある地理的空間的範囲の限界」を,その国の「生存空間」とする概念である。それによると「地理的境界(国境)」が「国際的に承認され」「相対的に安定性と確実性を持っている」のに対し,「戦略的辺彊」は「領土・領海・領空に制約されず,総合国力の変化に伴って変化し,相対的に不安定性と不確実性を持っている」

 この概念を端的にいえば,「辺彊」とはその時々の国家の軍事力,経済力,政治力,科学技術力等を総合した国力によって決定あるいは変動されることになる。また国際法的に承認されない地理的境界から外に出て,戦略的辺彊を長期間有効に支配すれば,それはその国の領土,領海,領空となるということである。

(平松茂雄『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル),pp. 71-72)


つまり,「実行支配した者勝ち」ということである。国力の増大に伴って「侵略」よろしく版図(はんと)を広げようとしているのが今の支那なのである。