中国人の行動原理:「指桑罵槐」 | 池内昭夫の読書録

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 中国人の行動原理を表わすものに,「指桑罵槐(しそうばかい)(桑を指して槐(えんじゅ)を罵(ののし)る)ということわざがある。桑は畑に植えられる木で,葉は蚕(かいこ)のエサになるが,槐は街路樹や庭木として植えられ,家具を作る際の材料となる喬木(きょうぼく)であって,似ても似つかない。つまり「桑の木を指して槐を罵る」というのは,「本当の怒りの対象とはぜんぜん別のものを攻撃する」という意味である。「ニワトリを指して犬を罵る」と言っても意味は同じである。

 中国人が怒っているとき,その言葉を鵜呑みにしてはいけない。中国人は,どんなときも表立って誰かを批判したり,攻撃することはけっしてない。当事者を直接批判することはほとんどなく,この「桑を指して槐を罵る」というやり方を採る。つまり,ある相手を攻撃しているように見せて,実は別のところにいる人を批判しているのである。

 だから,もし中国人が面と向かって罵り言葉や批判を投げ付けたときには,それにただちに反応してはならない。よく相手を観察し,彼らが真に攻撃したい対象が別のところにあるのではないかと考えるべきである。言い換えるなら,彼らが書かないこと,語らないことにこそ,事の本質が潜んでいるとみるべきなのである。(岡田英弘『この厄介な国,中国』(WAC BUNKO)pp. 20-21)