宗教に見る精神病理 | gcc01474のブログ

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  宗教に見る精神病理
                                 

【key words】meridian, shiatsu, mild depressive episode, dissociative disorder

【始めに】
『身体が緩めば心も緩む』との考えのもと、不安障害などの治療に整体術を用いた。これは運動療法に適応しなかった、または同意しなかった患者、また運動療法で症状が快方に向かわない患者を対象に行った。
 整体は指圧・手掌圧・肘圧を用いて行った。カイロプラクテック的な方法は採らなかった。
 不安障害などの患者の背中には必ず脊椎起立筋の何処かに硬結がある。そこを揉みほぐす。しかしそれを揉みほぐすことは至難の業であるが、患部でなく、足・股関節・肩関節を強く揉みほぐしていくうちにその硬結が消失してゆくことがある。(それと同時に不安障害も治癒する。)
 この全身を揉みほぐすうちに脊柱起立筋の硬結も消失してゆくメカニズムは東洋医学の経絡の概念で説明可能かもしれない。

【症例】
(症例1)
 年齢40歳。28歳時、一念発起してそれまでのサラリーマン生活から整体術師養成学校に1年余り通い、そののちある中国整体院で5年間修行を積み、妻の故郷である九州で開業する。
 中国整体術は術者の肉体的負担が大きい。頑健な男性の中国整体術師も一日6人の治療が限界であるという。中国では堆拿(ついな)と呼ばれている。カイロプラクテックと異なり全て指圧・手掌圧・肘圧による。そして患者の体全体から揉みほぐしてゆく。外傷性頚部症候群に対しても足から揉みほぐしてゆく。肩痛に対しても同じである。体全体から揉みほぐさないことには効果は一時的であるという考えに基づいている。右利きの中国整体術師は右手を多く使用し、肉体に掛かる力学的左右差は大きい�Bそれにより中国整体術師は頻繁に肉体的不調が生じる。
 開業して6年目の3月、腰を痛める。両側外側大腿皮神経が圧迫されている症状が出現。同時に抑鬱症状も出現。精神科医院に通院し始める。投薬内容は trazodone hydrochloride 25mg/day, sulpiride 50mg/day, alprazolam 1.2mg/day であり、この投薬内容がそのまま4カ月続けられた。しかし症状は改善傾向を見せず、ペインクリニックを受診。ここで腰痛部位へのトリガーポイント注射、大腿外側皮神経ブロック、星状神経節ブロックなどを受ける。また imipramine hydrochloride, alprazolam の投薬も受ける。しかし腰痛および抑鬱状態、および自動車を運転中に起こるパニック発作の改善傾向を認めず。また処方された imipramine hydrochloride に因ると思われる頻尿などの副作用のため imipramine hydrochloride の服薬を自ら中止する。
 著者を受診。遠方からの来院のため1カ月で服薬するようにとsulpilide 100mg/day, alprazolam 2.4mg/day, etizolam 3mg/day, flunitrazepam 4mg/day, trazodone hydrochloride 100mg/day, mianserin hydrochloride 60mg/day を2週間分処方。しかし sulpiride は一回服薬するのみで中止する(服薬すると体が疲労感で一杯になるということであった)。また mianserin hydrochloride は激しい眠気などのため1回服薬するのみで中止する。 trazodone hydrochloride も服薬しようとしない。頑健な体をしているが急激に衰弱傾向を示し、このように薬剤に対し敏感になったものと思われる。鍼治療に1ヶ月前に掛かったときの鍼の跡が今でも赤く腫れ上がっていた。
 現在、alprazolam 1.2mg/day, flunitrazepam 1mg/day(眠前)のみ服薬している。 sulpiride, trazodone hydrochloride, mianserin hydrochloride などに過敏に反応するため、それらを服薬しようとしない傾向は変わらない。
 現在でもまだ軽症うつ病エピソードのまま自宅療養中である。運動を行おうにも腰痛のため運動ができない。散歩程度しかできない。
 中国整体術師であるT氏は主張する。
『整体をしていると腰が悪いので腰を庇うため自然と胸部交感神経節を圧迫してしまう体勢になる。以前、腰が悪くなかった頃はそういうことはなかった。それが現在の私の身体・精神というか、その不調のもっとも大きな理由のような気がする。』

(症例2)
 左半身麻痺にて救急車で来院。年齢50歳。繁華街のスナックで働いている。仕事は夕方から夜遅くまでであり、衣装も派手なものを着用している。吐気有り。しかし嘔吐は無し。神経学上、左半身麻痺有り。現在の日付が解らないなど見当識障害有り。頭部CT上、特記すべき所見なし。しかし脳梗塞は発症直後は頭部CTに映らないためそのまま脳梗塞疑いとして入院となる。右脳梗塞が疑われたが、衣装や仕事、年齢などからヒステリーの可能性が高いと思われた。
 脳梗塞の治療を開始。入院3日目、再び頭部CT施行するも、特記すべき所見なし。血液検査上も脳梗塞は否定的。脳波上、特記すべき所見なし。しかし依然として左半身麻痺軽減せず。また現在の日付が解らないなど見当識障害も改善傾向無し。この見当識障害は、昨日行ったことを取り違える、1時間ほど前に食べた食事の内容を記憶していない、入院して何日が経過かしたかの問い(正解は7日)に『3カ月前?』と言う、現在の日付が解らないなど、強い記銘力障害によって起こっていた。
 入院8日目、キセノンCT施行。右脳灰白質に低環流域有り(写真1)。これが唯一の異常所見であった。入院9日目よりヒステリー疑いとして ethyl loflazepate 1mg 夕食後投与開始。入院13日目より alprazolam 1.2mg 分3追加投与開始。しかし改善傾向は僅かに認めたのみであった。入院17日目より alprazolam 2.4mg 分3に増量。これでも改善傾向ほとんど存在せず。よって入院21日目よりethyl loflazepate 2mg/day 夕食後投与に増量。しかしこれでも左半身麻痺および見当識障害は改善傾向をほとんど示さず。入院28日後、左半身麻痺および見当識障害は軽度軽快のみで退院となる。
 退院後、中国整体術師(T氏)に治療を受け、治療3回目にて左半身麻痺も見当識障害も劇的に全快。T氏によると“寝違い”に間違いないと思われる胸椎第2を中心とした脊椎骨の変位があったという。その変位を矯正するため全身を指圧し治療したが筋肉の硬直は強く、治療3回目にて脊椎骨の変位は元に戻ったという。

(症例3)
 18年来の対人恐怖症。男性。36歳。人格的な崩壊は無い。14年間、 minor tranquilizer を比較的多量に服薬してきた。 minor tranquilizer の比較的多量服薬により、なんとか社会生活を営んできたと思う、と言う。また不眠症も併発している。
 脊椎の左側に脊椎起立筋によるものと思われる“一本棒”が存在する。第2胸椎から第6胸椎に掛けて左側背部に筋肉の攣縮・硬縮が存在する。これは特�ノ第2胸椎に強い。また、これは少なくとも12年前から存在している。12年前に鍼灸院でそのことを指摘されたという。背部の凝り強く、現在まで様々な整骨院・鍼灸院などで治療してきた。しかし全て一時的な効果に終わった。ヨガや気功法も行ってきたが、対人恐怖症などは一向に軽快する傾向が見られなかったという。この10年ほどは様々な整骨院・鍼灸院に通っていた。そして一時的な軽快が得られていたが、一時的(長くても半日ほど)でしかなかった。
 彼は4カ月前、ある中国整体術師(T氏)に施術してもらったところその対人恐怖症が一気に軽快した。しかし50%軽快したのみで未だ50%残っているという。一気に軽快したのはそれまでX線写真には写り難い亜脱臼を起こしていた第2胸椎と思われる脊椎骨が整復されたためではないか、とT氏も彼も考えている。
 
【考察1】
『体と心は一つである、体が柔らかくなれば心も柔らかくなる。』11)
『神経症・分裂病が発症して間もないものは整体で治すことができる。しかし慢性化し固くなったものを揉み解すのは非常に難しい。』11)
『根が浅いものは1回の施行で治癒させることが出来る。しかし根が深いものは何回やっても駄目なことが多い。』11)
『神経症・分裂症の人は背中に一本棒のように固くなったものがある。それは脊柱起立筋であったり首の奥の方の筋肉であったりする。それは固く、揉み解すのは至難を極める。しかし全身から丹念に揉み解してゆくと何回目かの治療で柔らかくなることが良くある。これは固くなっている局所だけを指圧などしてもまず不可能だ。全身から揉み解してゆかなければならない。そして土台である足が大切だ。股関節と下腿を良く揉み解さなければすぐに元に戻ってしまう。』11)
『たしかに局所だけを治療してもそのとき一時的にせよ非常に効く。しかし数時間で元に戻る。全身から治療しないと数年も数十年も形成されているアンバランスはすぐに元に戻る。』11)
『肉体の左右不均衡が自律神経のバランスを崩すこと、交感神経過緊張が肉体の左右不均衡によって起こることを世間の人はもっと知らなければならない。』11) 
『全身を揉み解すのには2時間掛かる。固くなっているところだけを揉み解しても、すぐに元に戻ってしまう。だから最低1時間は掛けないと治療にならない。』11)
『身体が曲がれば心も曲がる。心を真っ直ぐにしようと思えば身体を真っ直ぐにしなければならない。身体が真っ直ぐになれば自然と心も真っ直ぐになる。』11)
『一つ一つの骨が(下腿や上肢など)その人の身体全体を表しているという考えがある。一つの骨を緩めてゆけば身体全体が緩むという考えになる。骨が緩めば身体も緩み心も緩むということになる。』11)

 不安障害の患者には第2胸椎から第6胸椎に掛けて変位とその側方の筋肉の攣縮・硬直が見られる。そして筋肉の攣縮・硬縮の見られる側に“一本棒”と呼んでいる脊柱起立筋によるものと思われる筋肉の攣縮・硬縮が見られる。
 モアレ写真というものにより筋肉の攣縮・硬縮および椎骨の変位は比較的明瞭に観察できる。X線写真ではむち打ち損傷と同じように椎骨の変位はほとんど表示されない。モアレ写真を所有していれば上記の症例は良く説明できたと思われる2)。
 その“一本棒”は歯の噛み合わせと密接に関連している10)。しかし歯の噛み合わせから矯正することは反作用が生じるはずである。
 症例2ではキセノンCTに示されるように左脳領域に比べ右脳領域が環流量が少なくなっている。これはT氏の指摘のように胸椎第2の変位によるものとも思われる。

 肉体の左右不均衡は椎骨の歪みを生み、様々な病気を起こす。とくに椎骨に付着する交感神経節を刺激し交感神経過緊張症を引き起こす。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡があればその人はもし現在健康体であっても将来交感神経過緊張症による病態を起こす可能性は非常に高い。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡(それは鼻中隔の歪み、後頭骨の歪みなどとして頭部CTに写ってくる。)があればその人はすでに何らかの自律神経に由来する不調を持っていると考えて良い。 

【考察2】
 人間の身体は大なり小なり歪んでいる。その歪みの強さが弱い人は一般に健康体である。しかし歪みの大きい人は様々な疾患(特に自律神経を媒体とした)に襲われてしまう。この歪みは2歳までに形成されるのがほとんどと思われる。それ以降に形成されるのは大きな交通事故などによるものしか存在しないようである。その歪みは歯の噛み合わせに由来するという理論があり10)、著者の長年の研究の結果、頭蓋骨が大きく変形している人はたしかに歯の噛み合わせが大きく変形している。そしてその変形は頚椎そして腰椎に及んでいる。しかしこの歪みを成人になってから歯の噛み合わせを人工的に操作することにより矯正することは至難を極める。歪みの軽度に人は確かにこの咬合療法で治癒していっている。しかし歪みの大きい人は咬合療法でも治癒させることは至難を極める。
“気の滞まり”が歯の噛み合わせの悪さに由来する脊椎骨の歪みによって起こる。この噛み合わせの矯正はテンプレートという患者自身で脱着可能なもので行われこのテンプレートを装着して運動を行うことによりこのテンプレートを装着したときの噛み合わせに対応した脊椎など骨格の矯正が行われる。しかしこれは30歳以下には用いることが比較的容易であるが、30歳以上には軽度の歪みしか存在しない人にしか用いることは非常に困難である。
“気の滞まり”は自律神経のアンバランスを招き、不安障害などを引き起こす。“気の滞まり”が身体全体の硬直化を招く。未だデータ上、確かめられたことではない。しかし、これは“気の滞まり”による説明なしには不可能と思われる。 
 たしかに長年の不安障害などはその硬結を揉みほぐし消失させることは困難を究める。しかし、患部でなく、下腿、肩関節、股関節などを丹念に揉みほぐすことにより消失してゆくことが多い。

【最後に】
『歪んだ体は歪んだままで一つの恒常性を保っている。それを無理矢理に矯正しようとするのは邪道だ。』との鍼灸師からの反論12)がある。たしかにアメリカ的カイロプラクテックは体の固い東洋人(日本人は東洋人の中でも特に体が固い民族の一つと言われている10)。)には向いていない。アメリカ的カイロプラクテックはアメリカなど西洋の体の柔らかい民族に於いてのみ成り立つ治療法と考える。
 また中国人には中国人に、日本人には日本人に向いた治療法がある。中国においては民族ごとに少しづつ治療法が異なっているが民族ごとに体質が異なるならばそれが本当の姿と思う。日本人には日本人特有の治療法があって当然であるし、それでなければいけないと思われる。
 整体療法は不安障害には劇的に効果がある。しかし気分障害や分裂症にも効果があるか、未だ試みられていないようであり、不明である。整体療法は全身“気の流れ”の円滑化に帰結する。
  

therapy of seitai

【参考文献】
1)本間祥白;  難経の研究; p675, 1983, 医道の日本社
2)李 丁;   針灸経穴辞典; p514, 1986, 東洋学術出版社
3)郭 金凱;  鍼灸奇穴辞典; p432, 1987, 風林書房
5)小高修司; 中国医学の秘密;    p209, 1991, 講談社 
6)神川喜代男;  鍼とツボの科学; p192, 1993, 講談社
7)首藤傳明;   経絡治療のすすめ;   p259, 1983, 医道の日本社
8)入江正;    経別・経筋・奇経療法;  p273, 1988, 医道の日本社
9)井本�M昭; 整体法;   p202, 1998, 三樹書房
10)前原潔; テンプレート療法 p257, 1996, 三樹書房
11)近田耕治氏の手紙
12)近藤文雄氏の手紙

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html