司法書士のゲームブログ

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最高でした

 

 

ハリウッドのギャレゴジから始まり、シン・ゴジラ、キングオブモンスターズ(KoM)とここ10年で次々と傑作を生みだしているゴジラシリーズだが、間違いなくここに並ぶ作品の1つだったと言えるだろう。

 ⇒ ちなみにその1段下にゴジラVSコング、さらにその1段下に映画アニゴジ1・2が位置している。アニゴジ3はさらにその3段下ぐらいか。

 

 

この映画で印象的だったのは、自分が「こういう映画になったら嫌だなあ」と思っていたものがそのまま出てきて、しかもそれがどういう訳か滅茶苦茶面白かったという事である。

 

自分の中で何となく出来上がっていた「面白くないタイプのゴジラ」像。そこに属するはずの映画なのに、そのマイナスイメージを覆すほどの面白さ。「こういうゴジラ映画でも面白くできるのか」と、認識を改めさせられた。

 

 

 

 

本作は一言でいえば、史上最も人間ドラマ部分の完成度が高かったゴジラである。

 

もちろんバトル面での面白さ・迫力も十二分にあり、「とにかくゴジラが大暴れしてくれればそれだけで満足!」という自分のような人間もキチンと楽しめる内容なのだが、それだけではない。

 

むしろ普段ゴジラを観ないような人、「ゴジラが暴れて何が面白いの?」と感じる人にも勧められる内容で、より懐の広い作品になっている(実際、自分も普段ゴジラなど全く興味のない母に勧めた)。

 

 

また、本作はゴジラ映画で最も海戦に力を入れている作品でもある。

 

ゴジラといえば、海からやってくる事こそ多いものの、基本的に海では足止め作戦ぐらいしか行われない。

 

本格的なゴジラ迎撃作戦は陸に上がってからであり、ゴジラの大暴れも、上陸以降が本番というものが多い。

 

ところが本作はガッツリ海戦メインであり、最終決戦も海上で行われる。陸上での大暴れもあるにはあるが、そんなに尺は割かれていないし、ゴジラも気が付くと海に帰っている。

 

 

立案されたゴジラ討伐作戦が割と現実的ですんなり納得できたのも印象的か。

 

ヤシオリ作戦のようなぶっ飛んだ内容でもなく(いや、あれはあれで非常に面白いのだが)、科学的な考察はともかく理論的には「確かにこれなら人間の力でも何とかなるかも」と思えるもので、作品のリアリティ向上に一役買っている。今回ゴジラの戦闘力がデフレ気味なのも、それに拍車をかけている。

 ⇒ 水島四郎(小僧)が出てからの展開はちょっとご都合感強めだが。とはいえ彼の見せ場を作る必要もあったし、これぐらいはご愛嬌だろう。

 

 

 

さて、そんな「傑作」評価の本作ではあるが、初めて予告動画を観たときの期待度は決して高くなく「期待半分、不安半分」という感じだった。

 

 

***【余談】**************************************

 

しかし思い返してみると、ゴジラって予告動画を観た時点ではいつも不安を抱いている気がする。

 

シン・ゴジラの時は人々がギャーギャー騒ぎながら逃げ惑うだけで「これで一体何を期待しろと?」と言いたくなる内容だったし、

 

KoMの時も(20年前にはとっくに語り尽くされたような)古臭~い思想を学者がペラペラと語り続けて「ひょっとしてゴジラが環境保護団体のプロパガンダにされちゃうんじゃ……」と嫌な予感しかしなかった。

 

しかし蓋を開けてみればどちらも名作だったわけで、ゴジラ映画の面白さは予告だけでは判断できない、という事だろう。

 

まあ、予告で抱いていた不安がそのまま的中してしまった「ゴジラVSコング」やアニゴジという作品もあるので、打率100%という訳ではないのだけど……。

 

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自分が抱いた不安、それは一言でいえば「感動路線だけは止めてくれ」という事である。

 

本当に、それだけは絶対に避けてほしかった。

 

というのは、「ゴジラ」と「感動」という2つが、それこそウナギと梅干しレベルで食い合わせの悪い、最悪の組み合わせだと思っていたからである。

 

まあこれは、邦画全体のレベルの低さというか、「微塵も面白くないお涙頂戴映画」に辟易されられている事による一種の被害妄想、偏見も含まれているかもしれない。

 

本当に、安易な感動路線に走ろうとする、安っぽくて退屈な邦画の何と多いことか。

 

そういった映画の共通項として、まず脚本も演技も「わざとらしい」。そしてその手の映画を見分けるのも簡単である。そういった映画は大抵において「叫びすぎ」だからだ。

 

作り手側は盛り上げるつもりで叫ぶシーンを入れているのだろうが、ちょっと考えれば分かるように、日常で叫ぶ場面などそうはない。大人なら年に1回あるかないかだろう。

 

それなのに安易に叫ぶシーンなど入れるものだから、「なんでこいつはこんなに叫んでるんだ?」と、盛り上げるどころか逆に白けた空気が漂う。酷い場合は薄ら寒さに鳥肌が立つ。

 

その点、予算が潤沢にあるハリウッド映画はちゃちな感動話で尺を稼ぐ必要もないので、退屈せずに済むことが多い。せいぜい申し訳程度のラブシーンが挟まれる程度で、その意味では見ていて「安心できる」。

 

 

いい加減脱線しすぎなので話を戻すが、そんな「お涙頂戴映画」に嫌気が差している自分としては、ゴジラとそれを組み合わせることだけは止めてほしかった。

 

だいたい、前提として自分は「ゴジラを観に」来ているのである。俳優を観に来ているのでも、感動話を観に来ているのでもない。

 

それなのに、しょーもない人間ドラマでゴジラの尺が奪われようものなら「そんな話はど~~~でもいいからさっさとゴジラを見せてくれ!」と思うのも当然である。

 ⇒ また、そういった邦画にありがちな要素を悉く排除した映画がどれだけ面白くなるかは、シン・ゴジラの例を見れば明らかである。

 

 

だが、本作の予告を見ると嫌な予感しかしない。いかにも感動系になりそうな「きな臭さ」を感じる。

 

 

 

 

そもそも舞台が戦後すぐの日本である。シン・ゴジラやハリウッドと違って、ゴジラに対抗できる戦力がほとんど残されていない。という事は、必然的に人間ドラマに割かれる尺が長くなるのではないか?

 

しかも監督はあの「ドラ泣き」で有名な山崎監督である。

 

友人は、同監督の「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」の評価がすこぶる悪かったらしく、そこも不安に繋がったようだ。

 

自分はドラクエを観ておらず、「鎌倉ものがたり」が好きだったのでそんなに悪印象はないのだが、とはいえやはり「ハートフル系に強い監督」のイメージであり、ゴジラとの相性は良くないのではないかと思っていた。

 

予告にはバッチリ叫ぶシーンも映っているし、「またこういう映画かよ……」と嫌な予感がヒシヒシした。

 

 

 

それが、蓋を開けてみればこれほどの傑作なのだから、本当にゴジラ映画は分からない。というか、ゴジラと感動系って実はそんなに相性悪くないのか?

 

元々、自分も感動系の映画が嫌いではない。涙腺ユルユル人間だし、いい映画を観るとボロボロ泣いてしまう。

 

このマイナスワンでも何度も「うるっ」ときたし、終盤では「ほろり」とさせられた。というか、人間ドラマのシーンでは基本泣いてたと思う(笑)。


例の叫ぶシーンも、「確かにこの場面なら叫んでもしょうがないよな」という納得度の高いもので、観客側の空気を白けさせるものではない。

 

どうやら、自分の中で凝り固まっていた「ゴジラと感動系は相性が悪い」というイメージは、「日本のお涙頂戴映画はつまらない」という先入観から生まれた偏見に過ぎなかったようだ。

 ⇒ まったく関係ないが、先の「ウナギと梅干し」の食い合わせも、昔から言われていて何となく悪いイメージがあるが、最近は考え方が改められていて医学的・栄養学的にも全く問題ないらしい。いや、まったく関係ないのだが

 

いやしかし、まさか、ゴジラ映画でこんなに感動してしまうとは。今までゴジラ映画に人間ドラマなんて蛇足なだけだと思っていたのに……。

 

まあでも、今後もゴジラ映画を感動路線にして欲しいかと言われたら、今回が奇跡の完成度だっただけで、やっぱりそれはご免被りたいと思うのだが(笑)。

 

 

 

その他、色々な感想。

 

 

■熱線

 

シン・ゴジラともハリウッドともアニゴジとも異なる、また新しいタイプの放射熱線である。火炎放射でもレーザービームでもない、単発型の熱線とでも言うべきか。

 

最近、ゴジラの熱線シーンが「映像屋の腕の見せ所」「最大の見せ場」のような立ち位置になりつつある気がするが、それはともかく、さすがVFX制作者として名高い山崎監督であり満足度は非常に高い。

 

海中が青白く光っただけでワクワクするし、陸上での熱線シーンはしっかり尺を割いて観客のテンションを否応なしに高めてくれる。

 

歴代でも間違いなく上位に入るカッコよさの熱線だと言えるだろう。

 

 

 

■ゴジラの弱さ

 

先ほども言ったが、今回、戦後すぐの日本という舞台の戦力不足を鑑みてか、ゴジラの戦闘力が大幅にデフレしている。

 

まずスペックから言って、身長50.1m・体重2万トン。KoMのゴジラが身長119.8m・体重約10万トンであった事を考えると、半分以下の体躯でしかない。

 ⇒ ちなみに、序盤では放射性物質を浴びて巨大化する前のゴジラも出てくるのだが、こちらはもっと小さく、最初見たとき「ゴジラ小っちゃ!!」と思ってしまった。

 

耐久力も正直高くなく、人間の武器が割とふつうに通用する。

 

ゴジラ討伐までを描く作品としてはあまりゴジラのスペックを盛るわけにはいかないし、デフレも止む無しだろう。

 ⇒ たとえば今回の海神作戦でギャレゴジを倒せるかと言われたら、それは無理だろう。

 

最近のゴジラは作品を重ねるごとに設定がインフレしていったが、そこに歯止めがかかった形とも言える。


 

もちろん、歴代ゴジラと比べて弱くなったからといって、作品がつまらなくなった訳ではない。

 

むしろ戦後日本という乏しい戦力で立ち向かうには「ベストな強さ」であり、作中では紛れもなく圧倒的な脅威として描かれているので、「弱っちいゴジラ」という印象はない。


やはりその作品に応じて「ちょうどいい強さ」というのがあるのであり、適当にゴジラのスペックだけ盛れば映画が面白くなる訳ではないという事である。どの作品がとは言わないが

 

また、マイナスワンのゴジラの特徴として人間をハッキリ認識し襲い掛かってくるというものがあり、ゴジラの「恐ろしさ」という点ではむしろ従来作より強化されている。

 

 

***【余談】**************************************

 

これと対称的な映画に「ゴジラVSコング」がある。

 

ギャレゴジ、KoMの続編であり、この2作を愛してやまない自分としては、もちろん公開してすぐ観に行った。

 

観に行ったのだが、なぜか前2作ほどハマれなかった


映像は相変わらずド迫力のハリウッドクオリティだし、実際自分も字幕と吹き替えで2回観に行ったにも拘わらず、である。

 

2回観ておいて何故かレビューを書く気にもなれず、自分でも不思議だったのだが、最近ようやく理由が分かった気がする。

 

要するに、自分が観たかったのは「圧倒的に強い主人公としてのゴジラ」だったのだ。

 

ギャレゴジ、KoMのゴジラは間違いなくこの条件を満たしている。

 

しかしゴジラVSコングはどうか。あれはどちらかというと「コングが主人公」だったと思う。女の子と意思疎通ができるヒーローポジションだったし、地底探索など明らかにゴジラより活躍シーンが長い。

 

一応、「ゴジラVSコング」というカードだけを見ればゴジラの勝ちと言えなくもない展開だったが、出番や描写の質、最後の美味しいところもコングが持っていくなど、「試合に勝って勝負に負けた」ような内容だった。

 

「圧倒的に強い主人公としてのゴジラ」を求めて映画を観に行った自分としては、これでは到底物足りない。

 

ゴジラがメカゴジラ相手に苦戦する展開も気に入らない。メカゴジラといえばシリーズお馴染みのキャラクターであり、ゴジラを圧倒する事も多いのだが、やはりあまり好きになれない。

 

他の怪獣相手ならいざ知らず、メカゴジラに苦戦するという事は「人間の技術でも割とどうにかなってしまう」という事に他ならないからだ。

 

スペックはマイナスワンのゴジラより上でも、コングに苦戦するわメカゴジラに苦戦するわで、到底「圧倒的に強い」とは言えないゴジラだった。

 

しかも(メカゴジラを出すためとはいえ)人間側の技術力は明らかに現実離れしているし、作品のノリは悪い意味でハリウッドらしい軽薄さ、俗っぽさが出てしまっているし、ギャレゴジの時の静謐さやリアリティはもはや欠片もない

 ⇒ 予告映像で「イェーイ!カモーン!」とやたら軽い音楽が流れ始めた時点で嫌な予感はしていた。

 

まあ、映像は豪華なのでポップコーンムービーとしての優秀さは相変わらずなのだが。

 

ギャレゴジやKoMのような「滾らせてくれるもの」は全くない映画だった。

 

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ただ、ゴジラの強さがデフレしている事自体はいいとしても、ゴジラの強さの質に多少「う~ん」となってしまったのも事実。
 
まず、今回のゴジラの一番の強みは「再生能力」だと思うのだが、「強い主人公ゴジラ」を求める自分としては、再生能力が強みのゴジラはちょっと微妙。どちらかというとキングギドラっぽい。
 
また、(先ほども少し述べたが)ゴジラがはっきりと人間を認識し、殺しにかかってくるというのも近年のゴジラでは珍しい。
 
ギャレゴジやKoMのゴジラは人間など全く意にも介さず、それがまたゴジラの超越的な存在感、王者の風格を引き立たせていて良かったのだが、マイナスワンではかなり積極的に人間を殺しにくる。その分、ゴジラの脅威や恐ろしさが増しているのだが、引き換えに小物感もちょっと増したかな……。
 
また、今回は人間ドラマに重きを置かれているため、ゴジラが若干舞台装置と化している感も拭えない。
 
他の映画のゴジラは、紛れもなく「主人公」であり「物語の軸」である。他の登場人物や怪獣は、すべてゴジラというキャラクターを引き立たせるために存在する。
 
これに比べるとマイナスワンはまず「物語ありき」であり、ゴジラというキャラクターもその物語を動かすために存在する。実際、本作の主人公が「ゴジラか敷島か」と尋ねたら、けっこう意見が割れると思う。
 
 
 
■オチ

 

結末は予想しやすい。というか、かなり早い段階でオチが読めてしまった。

 

元々、結末が予想しやすいよう作られている作品だと思う。丁寧に伏線も張られていたし。

 

それでも、ラストを観るまでは監督の「ひねくれ」が発動して、予想を裏切ってくるんじゃないかとハラハラしたのだが、きちんと着地を決めてくれて一安心。

 

そもそも、今回のテーマ的に終わり方はあれしかない訳で、そこを裏切ったらこの映画そのものが無意味なものになってしまうのだが。

 

でも、たまに安易な感動に走ろうとしてそういう事をする監督がいる。でも、この監督はそんな事はしない。

 

観客が観たいものをちゃんと見せてくれる。大事なことだろう。

 

 

 

■登場人物

 

良キャラクター揃いである。特に「新生丸」のメンバー達は、ともすると陰鬱なだけになってしまいかねない本作の雰囲気を、大幅に中和する役割を担う。

 

「敗戦直後の日本をゴジラが蹂躙する」という、あまりにも凄惨な舞台設定の本作において欠かせないキャラクター達である。

 

主人公も、(当時の価値観だと非国民呼ばわりされるのかもしれないが)現代人には感情移入しやすい造形になっていて、好感度が高い。

 

あと、太田澄子(敷島のお隣さん)は聖人すぎると思う(笑)。

 

 

 

色々書いたが、とにかく多くの人に観てもらいたいと思うし、実際太鼓判を押してオススメできる作品である。

 

というか、感想を書いていたらまた観たくなってきた。あの熱線シーンももう1度拝みたいし、とりあえず来週もう1回観に行こうと思う

 

■終末のワルキューレ

 

「終末のワルキューレ」、という漫画がある。

 

自分は初めてこの作品を知ったとき「なんて安直な漫画だろう」と思った。

 

史上最強の13人を集め、人類の存亡を賭けた神々との戦い「神VS人類最終闘争(ラグナロク)」が勃発。

 

その対戦カードは全て神と人。1回戦は呂布VSトール、2回戦はアダムVSゼウス……まるで中学生が考えた黒歴史ノートではないか。

 

そんな、手に取るのに恥ずかしさすら覚えるような漫画でありながら、いざ読み始めると止まらない。悔しいけど、面白い。

 

 

 

なぜこの漫画はこんなに面白いのか。1つは企画の勝利だろう。

 

だって呂布とトールが戦うのである。考えてもみてほしい、呂布とトールの戦いを見たいか?と聞かれたらそりゃ見たいよ。夢のカードじゃん。それが終わったら今度はアダムとゼウスである。たまらない。

 

世界中の誰もが知っている歴史上・伝説上の人物と、これまた世界中の誰もが知っている神々が、異能タイマンガチンコバトル。
 

もうこの時点で掴みとしてはバッチリすぎるほどバッチリである。どれほど「安直」と言われようとも、気になって読んでみたいと思わせた時点で企画側の勝ちだ。

 ⇒ 実を言うと、神側はともかく、人類側は「なんでこいつが?」「戦うタイプじゃないだろ」みたいな奴がチラホラいる。しかし、それはそれで「こいつはどんな戦い方をするんだ?」というのが気になって楽しみだったりする。

 

 

もちろん、どれだけ夢のカードを思い描いたところで、それを作品として落とし込めなければただの黒歴史ノートである。

 

だが、そこに作者の高い画力、魅力あるキャラクター造形が加われば黒歴史ノートも立派な「作品」となる。終末のワルキューレという作品は、作者の力量なしには成立しない。


特にキャラ造形に関しては、たった1度戦っただけのキャラクター(呂布やジャック・ザ・リッパー)が外伝として単体のスピンオフ作品を成立させてしまうほど、高い人気を誇る。

 

例えるなら映画「パシフィック・リム」のような。子供のころ思い描いていた夢に溢れた妄想を、大のオトナが大真面目に具現化させてしまうロマン。

 

自分のような初めは否定的であった者ですら、掌を返して食い入るように読んでしまう。それだけの魅力がこの漫画にはある。

 

アニメ化もされ、間違いなく今最も勢いのある漫画の1つだと言えるだろう。

 

 

 

 

■魔女大戦

 

で、本題の魔女大戦である。友人から勧めてもらった漫画だ。

 

「終末のワルキューレを読んでるなら、これも読んでみるといいよ」

 

最初はその言葉の意味が分からなかったが、少し読んでみてすぐ合点がいった。あまりにも内容が終末のワルキューレすぎる

 

設定や展開、細かい描写に至るまで………いや、ちょっと、ここまでワルキューレと丸被りでいいの??

 

 

歴史上・伝説上の著名な人物を集め、異能タイマンガチンコバトル。

 

バトルの最中にはこれまたワルキューレ的な回想シーン。

 

表紙の構図もワルキューレとまったく一緒。

 

闘技場の客席に、対戦者にちなんだ人物(たとえば呂布戦なら関羽とか)が出てくるところまでワルキューレと同じ。

 

見開きにデカデカと描かれたトーナメント表を見て、ワルキューレの「あのシーン」を思い浮かべなかった読者はいないだろう。

 

 

これが他社作品なら「パクリ」の誹りはまず免れなかったところであろう。しかし、この魔女大戦、実はワルキューレと同じ雑誌の掲載作品なのである。

 ⇒ どちらも月刊コミックゼノンという雑誌に連載されている。

 

同じ雑誌の作品なら「パクリ」じゃないのかと言われると微妙だが、単行本の帯を見ても分かるとおり、この魔女大戦はワルキューレの公式ライバルという位置づけであり、コミックゼノンが大手を振ってワルキューレを模した作品だという事が分かる。

 

つまり、言い方は悪いが、この魔女大戦という漫画は「終末のワルキューレ人気」にあやかって二匹目のドジョウを狙って作られた作品なのである。

 ⇒ というか、二匹目どころじゃないかもしれない。コミックゼノンについて調べてみたところ、他にも「ワルキューレ」的な作品を1、2つ見つけた。

 

出版社としてより売れる作品を、というのは理解できるのだが、しかし、これはいくら何でも露骨すぎやしないだろうか。

 

そもそも、元が「安直」なワルキューレである。それがウケたからって、それと同じような作品を乱発するなど安直の上に安直を重ねたようなものではないか。

 

とはいえ、一度「ワルキューレ」で掌返しを経験している自分である。これだってワルキューレと同じようなドンデン返しを見せてくれるかもしれないと思い、試しに読んでみる事にした。

 

 

 

この魔女大戦、ベースはほぼ「ワルキューレ」と同じだが、あちらとの差別化を図るため以下のような違いが存在する。

 

 

■①対戦者がすべて女性である

 

最大の違いだろう。魔「女」大戦のタイトル通り、対戦者は全員女性。そしてその全てが魔女という設定である。

 ⇒ この漫画では紫式部だろうとキュリー夫人だろうと魔女である。いわゆる一般的なイメージの魔女ではなく、能力バトルとして魔法を使うので「魔女」という呼称なのだろう。

 

「ワルキューレ」が神VS人類最終闘争(ラグナロク)なら、魔女大戦は魔女千夜血戦(ヴァルプルギス)

 

また、「ワルキューレ」のような神側は存在せず、ほぼ全員が歴史上の人物である。

 

 

 

■②トーナメント形式である

 

「ワルキューレ」はいわば神側と人類側の「団体戦」であり、1人につき1回しか戦わないが、魔女大戦はトーナメント形式なので、勝ち上がりがある。

 

ちなみに対戦者は全部で32人。グラップラー刃牙の最大トーナメントに匹敵する規模である。

 

 

 

■③「魔女階位」の存在

 

「ウィッチズ・オッズ」と読む。出場する魔女の中から「推し魔女」を選び、誰が優勝するかを賭けるというもの。

 

この倍率が低いほど「優勝の可能性が高い」と思われているという事であり、出場者の中でも「本命」という事になる。

 

ちなみに魔女階位が一番高いのはクレオパトラで1.8倍。一番低いのはジャンヌダルクで1065倍である。

 

むろん(作中でも語られているが)、これはあくまで魔女の「人気順」を表したものであって、強さを表すものではない。

 

しかし、次に出てくる魔女がどれぐらい有力な存在であるかを示す指標にはなる。

 

これは「ワルキューレ」にはなかった(というか、「優勝」の概念がないワルキューレには存在し得ない)システムであり、作中の観客と読者の視点をシンクロさせる、面白い試みだと言えるだろう。「では読者の皆さん、貴方なら誰に賭けますか?」という訳だ。

 

 

 

さて、ここでもう勘のいい人なら気付いたかもしれないが「女性限定、歴史上の人物32人」という厳しい制約のために、魔女大戦では登場キャラクターに対する「誰?」が頻発する

 

というか、歴史に疎い自分など半分ぐらい誰が誰だか分からない。八百屋お七って誰?ボニー・パーカーって誰??

 

調べてみたところ、八百屋お七は恋人に会いたい一心で家に火を付けた放火魔、ボニー・パーカーは銀行強盗や殺人を繰り返した犯罪者らしい。なんかどっちもあんま応援したいタイプじゃないが

 

まあ、「なんでこいつが?」という意味なら「ワルキューレ」のジャック・ザ・リッパーなんかも同じタイプだが、それでもあちらは、少なくとも名前を知っているぐらいの知名度はあった。

 

それに対して魔女大戦は、戦うタイプじゃない上にそもそもの知名度が低い、という謎チョイスが大量に紛れ込んでいる。

 

しかしそれも仕方ないだろう。歴史上で、女性で、戦う人物と言われたら自分はジャンヌダルクぐらいしかパッと思い浮かばない。

 ⇒ 実際、魔女大戦ではジャンヌダルクが主人公的な扱いを受ける。

 

一応、魔女大戦には「魔法」の概念があるので、戦うという点については(戦闘タイプの人物でなくとも)何とでもなる。

 

しかし「女性限定、32人」という厳しい制約で選ぶ以上、登場キャラクター(元ネタとなった歴史上の人物)の知名度の低さはいかんともしがたい。

 

この点、魔女大戦は「ワルキューレ」に比べ、大きなハンデを負っていると言えるだろう。

 

 


で、実際のところこの「魔女大戦」は面白いのか。

 

実をいうと、はじめはあまり面白くないと思っていた。

 

絵は綺麗なのだが、そのぶん荒々しさもなく、バトルものとしては「ワルキューレ」ほどパワーを感じない。

 

何より致命的な問題として、主人公(ジャンヌ)に魅力がない。もっと言えば、トーナメント形式のバトル漫画で主人公を設定したのは失敗だとすら思う。

 

元から主人公がいる漫画なら別として、魔女大戦は「歴史上の有名な人物を集めて対等に、タイマンで戦わせる漫画」である。

 

誰が勝ちあがるか分からないワクワクがトーナメントの醍醐味なのに、主人公なんて設定してしまったら、もうそいつの勝ち上がりは約束されたようなものである。

 ⇒ そういえばグラップラー刃牙の最大トーナメント編も、刃牙の試合が一番つまらなかった。理由はもちろん「勝敗が見えているから」である。

 

魔女階位が一番低いなんてのも正直前振りにしか見えんし、1話からメインを張ってきた主人公が1回戦で負けてしまう訳もない。

 

しかもそのジャンヌ戦が無駄に長い。刃牙ですら1回戦のアンドレアス・リーガン戦はサクッと終わらせたというのに。

 

結果が見えているのにダラダラと長い試合など最悪である。ジャンヌ戦は1回戦の第2試合だが、今のところ、魔女大戦の全カードの中でもこの試合が断トツで評価が低い。

 

 

正直、この1回戦第2試合で読むのをやめようかと思ったほどである。

 

 

 

 

■卑弥呼 VS クレオパトラ

 

(ここから先、ネタバレを含むので注意してほしい)

 

 

ここからが本題である。1回戦第3試合。卑弥呼 VS クレオパトラ。

 

魔女大戦屈指の注目カードである。魔女階位の高さから言っても、卑弥呼が4位、クレオパトラが1位。1回戦にして本命 VS 本命の対決である。

 

しかも卑弥呼とクレオパトラといえば、ほとんどの人が知っている人物だろう。そういう意味でも、2人がどんな戦い方をするのか興味が沸く。

 

 

そんな読者の期待を裏切らず、2人は初登場シーンからして印象的である。

 

 

 

 

まずは卑弥呼。第3試合が始まろうとする直前、単行本3巻の第12話にて初登場する。

 

もうすぐ自分の試合が始まろうというのに、なかなか闘技場に向かおうとしない卑弥呼。どうやら控室の中で何かやっているようだ。

 

そんな彼女に業を煮やし案内人がドアを開くと、そこには壁全体に呪術的な、いかにも怪しげな紋様が描かれていた。

 

案内人が困惑する中、さらに卑弥呼は続ける。

 

 

「魔女千夜血戦は100%確実にワシが優勝する。キミは、信じるかなァ?」

 

 

なかなか自信ありげな発言である。魔女階位1位のクレオパトラ戦を前にこうも言い切るあたり、彼女なりに何か作戦があるようだ。

 

※ ところで、表紙を見れば分かるとおり卑弥呼の髪は銀髪である。作中の印象で黒髪だと思っていた人も多いのではないだろうか。というか、銀髪を黒塗りで表現するのって珍しい気がする。

 

 

 

一方のクレオパトラもインパクトでは負けていない。卑弥呼に先駆けること第6話、そこには案内人の生首が転がっていた。

 

 

 

 

何事かと思えば、どうやら案内人がクレオパトラの姿を見ただけで惚れてしまい、襲い掛かってきたため返り討ちにしたようだ。さすがは世界三大美人の1人。

 

闘技場の観客たちも、絶世の美女クレオパトラが見られると知って大盛り上がり。対戦相手ばかりが注目され、卑弥呼としてはちょっと面白くない展開である。

 

 

「ウォォーー!待ってましたァ!!」

「この魔女が見たかったんだよ!!」

 

 

そんな観客たちを横目に、こっそりと不服そうな表情を浮かべる卑弥呼が面白い(笑)。

 

 

 

あらゆる人が一目見ただけで虜になってしまうクレオパトラの美貌だが、同じ魔女である卑弥呼には通用しないようだ。

 

クレオパトラの顔を覗き込み、面と向かって「ワシの好みとはちょっと違う」と言い放つばかりか、あまつさえこんな暴言まで。

 

 

 
 
絶世の美女たるクレオパトラに対し何とも大胆不敵な発言だが、実際これはその通りだと思う。そもそもクレオパトラは可愛い系じゃないしな。
 
だが、そんな卑弥呼の挑発を前に、クレオパトラはこの態度である。
 
 

 

 

一蹴。さすがは魔女階位1位、そう簡単にペースは握らせない。この返しはさすがに卑弥呼も予想外だったらしく、不満げな表情を浮かべる。

 

 

まず前哨戦はクレオパトラが一歩リードか。そう思わせたところで両者は互いに「魔装」を身にまとう。

 

「魔装」とはこの漫画に出てくる造語の1つであり、戦いの際に魔女が身に付ける戦闘服のことだと思えばよい。

 

つまり、この作品に登場する魔女は「通常モード」と「戦闘モード」、2つの衣装を併せ持つのだ。

 

クレオパトラが魔装「命冥加たる艶美」によって観客たちを一層釘付けにする中、卑弥呼も遅れて魔装「日出処鬼巫女」を身にまとう。

 

 

うーん、カッコいいじゃないか。魔装をまとった卑弥呼の不敵な表情もイカす。二振りの刀を携え、さらに頭部には角に見立てた仕込み短刀を装備し、その外見はさながら鬼のようだと評される。

 

 

まずは卑弥呼が自慢の仕込み短刀で一歩リード………したかに思えたが、その時、卑弥呼の腕を掴んだクレオパトラがただ一言、こう言い放つ。

 

 

 

 

次の瞬間、卑弥呼の左腕が文字通り「ねじれ」、もの凄いスピードで折れ曲がっていく。

 

クレオパトラの腕を振り払ってもねじれは止まらず、卑弥呼は咄嗟に自分の左腕を切り落とすことで難を逃れる。

 

これこそがクレオパトラの「魔法」であった。あまりの美貌を持つクレオパトラは、願いさえすれば誰もがその願いを叶えた。欲しいと思ったものを誰もが与え、憎いと言えば人さえ殺したのである。

 

そんなクレオパトラの魔法は、「自分の右腕が触れた相手に何かを『願う』ことで、それが叶う」というまさにチート級のものであった。

 

右腕で触れるという条件はあるものの、「願えば叶う」というあまりにも強力なクレオパトラの魔法。しかも卑弥呼は既に左腕を失っているという大きなハンデ。

 

卑弥呼は絶体絶命のピンチを迎えた状態で、魔女大戦第3巻、終了。

 

 

 

 

 

うがあ続きが気になる


ちなみに自分は、この時点でだいぶ卑弥呼派に寄っていた。卑弥呼のほうがキャラが立ってると思ったし、「100%確実に優勝する」と豪語していた根拠も気になる。それに、卑弥呼はまだ自分の魔法を明かしていないのだから、少なくとも1回は卑弥呼のターンがあるはずである。

 

じゃあ続きを買って読めばいいじゃん、と思うかもしれないが、本屋に3巻までしか置いていなかったせいでまだ3巻しか出ていないと勘違いしてしまったのである。

 

続きが出ていると知ったのは、友人(例の、魔女大戦を勧めてくれた友人)と遊びに行ったとき。

 

「早く卑弥呼戦の続き見たいんだけどさ~次の単行本出るのいつなんだろうね~」みたいな話を振ったときに「は?何言ってんの?」みたいな反応を返された(笑)。

 ⇒ ちなみに、この時点で6巻まで刊行されていた。

 

この時の自分の驚きと興奮たるや。しばらく待たされると思っていた作品の続きが、今すぐ読めると分かったのである。家に帰ったら絶対魔女大戦の4巻を買うんだと心に決めた。

 

「え、さすがに卑弥呼が勝つでしょ?だって100%勝つって言ってたじゃん?まさか負けたりしないよね?卑弥呼が勝つよね?」とだいぶ興奮気味にまくし立てる自分に対し、結果を知ってる友人は「いや~それは読んでからのお楽しみだから……」とはぐらかすばかり。こんニャロウ(笑)

 

既にこの日は0時を回っていたので、家に帰り電子書籍版の魔女大戦4・5・6巻を購入。

 

「頼む!卑弥呼が勝っていてくれ!!」と祈るような気持ちで4巻のページをめくった。

 

 

 

 

いきなり左手を失うという大きなハンデを背負った卑弥呼ではあるが、その戦意はいまだ衰えていなかった。

 

 

「でもまぁ、ギリ想定の範囲内かなぁ──…」

 

 

 

左手を失ってなおこの威勢の良さ。これが虚勢なのか、それとも何か根拠があっての物言いなのかは分からないが、少なくともまだ卑弥呼には「逆転の一手」の用意があるらしい。

 

事実、この後卑弥呼はあの手この手で巻き返しを図るのだが、やはりクレオパトラの魔法は強力で、悉く潰されてしまう。

 

それどころか、戦いの中で手の内を晒すうち、とうとう卑弥呼の魔法の正体が暴かれてしまうのだった。

 

 

 

「”相手の信じた嘘を真実に変える魔法

 それが其方の魔法ではないか?」

 

「一度術に嵌れば実に恐ろしい魔法。だが…

 ネタが割れればまるで意味を成さぬな」

 

 

文字にすると少し分かりづらいが、要するに、卑弥呼が相手に「毒を盛った」と言い、相手がそれを信じれば、本当に毒を盛った効果が表れる。それが卑弥呼の魔法である。

 

口八丁でペースを有利に運ぼうとする卑弥呼には、まさにうってつけの魔法と言えるだろう。

 

しかしクレオパトラが言うとおり、ネタが分かってしまえば対策するのも簡単である。要するに、卑弥呼の言うことを信じなければいいのだから。

 

仕込み短刀による最後のあがきも失敗し、とうとうクレオパトラに捕まってしまう卑弥呼。

 

 

 

 

まさに絶体絶命、この状態でクレオパトラが願えばそれでジ・エンド。自分も「え……?まさかこれで終わり?卑弥呼ここで終わり?」と内心穏やかではない

 

だが、これこそが卑弥呼の用意した「逆転の一手」であった。

 

クレオパトラの背後から忍び寄る1つの影。何とそこにもう1人の卑弥呼がいるではないか。

 

 

 

 

訳が分からず観客が騒然とする中、クレオパトラの胴体には刃が深々と突き刺さっていた。

 

一体何が起こったのか。それは遡ること試合前。部屋の異様な雰囲気に困惑する案内人に、卑弥呼は「魔法をかけた」のである。

 

 

「ワシの魔法とは…『卑弥呼を増やす』魔法。

 その魔法にかかった者は…”卑弥呼”に…なる」

 

 

もちろん、これは卑弥呼が吐いた嘘である。だが、案内人はその嘘を信じてしまった。そしてその瞬間、案内人の姿は「卑弥呼になってしまった」のである。

 

 

 

 

どんなに信じがたい嘘でも、巧みな話術と布石づくりで相手に真実だと信じ込ませる。それこそが卑弥呼の真骨頂である。

 

それが見事に嵌った今、形勢は完全に逆転したと言ってよい。片や胴体を刃で貫かれたクレオパトラ、片や全くノーダメージの卑弥呼。

 

 

 

 

これはもはや勝負あったか。というか、勝負あってくれ。どうかこのまま終わってくれ

 

そんな自分の祈りも虚しく、策に嵌ったクレオパトラの反応は、卑弥呼もまったく予想だにしないものであった。

 

 

「フ… 良いのう… 愛せるぞ

 見事じゃ… 妾と戦うためにここまで策を練り上げてくるとは」

 

 

 

卑弥呼の策に嵌り、立腹するでも、悔しがるでもなくなぜか興奮するクレオパトラ

 

この状況でもまだまだ敗色を匂わせないあたり、さすが魔女階位1位は伊達じゃない。というか、全く予想外の反応に卑弥呼も若干引いてる(笑)

 ⇒ でも、読んでいて自分は気が気じゃなかった。「げぇっ!?まだ終わらないのかよ!」「え、まさか卑弥呼負けるのか……?」と内心ドキドキである。

 

 

 

思えば、クレオパトラの生涯は一方的な愛を受けるだけの人生だった。

 

あらゆる者が一目見ただけでクレオパトラの虜になり、絶対的かつ一方的な愛を捧げた。しかしそれは、「愛」というより「盲信」に近いものだったのだろう。

 

美貌だけで人々を魅了してしまうクレオパトラだったが、それ故に、誰も彼女の心を知ろうという者は現れず、そしてそれ故に、彼女自身も心から人を愛したことがなかった。

 

しかし、今こうして目の前に、生まれて初めて自分の事を知ろうとする者が現れる。

 

卑弥呼がクレオパトラを倒すために積み上げてきた策や布石、それらが全てクレオパトラにとっては自分を知ろうとする行為、すなわちだというのである。

 

 

「その眼でしっかりと妾を見ておる。妾を知ろうとしている。

 全身全霊で妾を感じている!!

 こんなにも妾を感じようとした者はいない!

 そして妾も全身全霊で其方を感じている。

 

 あぁ…!

 これじゃ…

 これこそが妾の欲した… ”愛”じゃ…!!」

 

 

戦いの中で、ついに探し求めていた「真愛」を見つけたクレオパトラ。そして、なおも彼女を打ち倒そうと向かってくる卑弥呼に対し、クレオパトラは全身全霊をもってそれに応える。

 

 

戦いの最中、折れてしまった左腕で卑弥呼の顎をかすめるクレオパトラ。

 

折れた腕で攻撃してくるとは卑弥呼も思わなかったのだろう、モロに受けて脳震盪を起こしてしまう。

 

膝から崩れ落ち、動けなくなってしまう卑弥呼。クレオパトラに「あの魔法」がある以上、動けなければ決着は一瞬である。

 

卑弥呼に歩み寄り、その身体に触れたクレオパトラは、恍惚とした表情でこう囁くのだった。

 

 

「愛し… 愛される…

 それこそが 『愛』

 

 其方じゃ

 全部 其方が叶えてくれた」

 

 

 

凄い描写だ。愛を囁くクレオパトラと、死の恐怖に怯える卑弥呼の表情。「愛しておるぞ、卑弥呼」「『爆ぜよ』」というクレオパトラの台詞。互いに矛盾した相容れないはずの要素が隣に並び合い、アンバランスきわまった極限の対比を生んでいる。

 

って、今だからこそ落ち着いて文章を書いているが、正直最初に読んだときはこの辺もう「うわあああああ!!ぐわああああああ!!」と頭の中がグラグラして、ページをめくるのが辛かった

 

 

卑弥呼VSクレオパトラ、いよいよ決着の時である。

 

口から激しく吐血し、倒れ込む卑弥呼。そしてそれを優しく抱きかかえるクレオパトラ。

 

 

 

 

「ガッ アッ… アア…

 ア…

 アガッ… アリッ ガ…

 

 

 アリガ… ト… ウ…」

 

 

 

「信じてくれてありがとう」

 

 

 

さて、ここから先の展開は、ぜひ単行本を読んで確認してほしい。

 

ここまで語っておいて今さらネタバレもへったくれもないのだが、それでもここだけは、是非原作を読んでほしいと思う。

 

ただ、1ヶ所だけどうしても語っておきたいところがある。クレオパトラの最期だ。

 

地面に倒れ込むクレオパトラの生命はもはや風前の灯火。目も虚ろで、視力を失ってしまっているようだ。

 

 

 

 

最後の力を振り絞り、手を伸ばして卑弥呼の姿を確かめようとするクレオパトラ。だが、彼女の右手の「魔法」については、既に皆が知っての通りである。

 

誰よりもその恐ろしさを知るはずの卑弥呼。しかし、彼女は一瞬クレオパトラの姿を見据えたかと思うと、そっと自分の顔に手を添える。

 

 

 

 

右下で「危ない!」と叫ぶのは台与(卑弥呼の宗女)であるが、これは実質、読者の気持ちを代弁したものと言って差し支えないだろう。

 

ここで改ページが入るというコマ割りがまたニクい。クレオパトラは一体何をするつもりなのか。この状態でもう1度彼女が「爆ぜよ」と願えば、今度こそ卑弥呼は死ぬ。

 

自分など「お、おい……まさかここに来てまだどんでん返しがあるのか!?」と思いながら読んでいた。頼むからこれ以上ヒヤヒヤさせないでくれ

 

だが、クレオパトラの願いはそんな事ではなかった。

 

 

「まだ… 返事を聞いておらぬぞ」

 

 

そう、クレオパトラは「あの言葉」に対する返事を知りたかっただけなのである。

 

卑弥呼から答えを聞き、卑弥呼の腕の中で塵となって消えゆくクレオパトラ。

 

 

卑弥呼 VS クレオパトラ、決着。

 

 

 

 

■全体の感想

 

なんだ、この終わり方の美しさは。作者天才じみてるよ

 

これは勝手な想像だが、この卑弥呼VSクレオパトラ戦は、連載前から作者が既に構想を練り終えていた話なのではないだろうか。そうでないと、ここまで綺麗に着地を決めることはできないと思う。

 

終わりの美しさだけでなく、全体で見てもこの卑弥呼戦は抜群に完成度が高い。その理由をいくつか挙げてみよう。

 

 

 

① 最後までどちらが勝つか分からなかった

 

これが大きい。1回戦のカードを振り返ってみると、第1試合は「善」vs「悪」の対比が露骨すぎたし、第2試合は主人公補正マシマシの出来レース。そして、結果の見えているバトルほどつまらない物はない。

 

そこにきてこの卑弥呼VSクレオパトラは、最後までどちらが勝つかマジで分からなかった。

 

いや、自分は卑弥呼が勝つだろうと信じていたのだが、対戦相手のクレオパトラは全然格を落とさないし、終盤は卑弥呼が負けることを本気で覚悟していた。

 

二転三転とする展開はまったく先が読めず、有利不利が流動的に変化する戦いは、いわゆる「ターン制」と揶揄されるような退屈なバトルとは一線を画している。

 

つまり、まず「バトルとしての完成度が高い」のだ。

 

 

 

② 能力バトルとしてレベルが高い

 

加えてこれである。これまでの試合は、何のかんのと言っても「結局最後は力押し」であった。

 

魔女ごとにそれぞれユニークな魔法が与えられていると言っても、互いの実力が拮抗していくれば、最終的には「どちらのパワーが上か」という展開に収束しがちだったのである。

 

だがこの卑弥呼VSクレオパトラ戦は違う。

 

卑弥呼の魔法は、そのままでは直接戦闘を有利にするものではない。また、卑弥呼自身もたまに仕込み短刀が活躍していた程度で、特に武術面で優れていたという描写はない。

 

つまり、ただ魔法を使うだけで超人的な能力を発揮できた他の魔女と異なり、卑弥呼の場合、そのままでは凡人レベルの戦闘力しか持ち合わせていないのである。

 

そこにきて相手はあのクレオパトラであり、相手に触れられれば即・ゲームオーバーという一触即発の危険な状況。

 

そんな状況を打破すべく卑弥呼は布石を打ち、策を積み上げ、口八丁で自分のペースに持ち込み、己の魔法を最大限に活かす。

 

そうそう、これだよこれ。単なるパワー勝負ではない、自分の特性を活かしたトリック・プレー。これこそが能力バトルの醍醐味ではあるまいか。

 

 

 

③ キャラが立っていた

 

魔女大戦のような漫画では結局これが一番大事なように思う。どうでもいいキャラ同士が戦って、バトルが面白くなる訳がない。

 

もちろん展開の面白さも大事だが、自分の「推しキャラ」が戦い、応援し、勝ってほしいと思ったとき、バトル漫画は何倍にも面白くなる。「展開」と「キャラ」は車の両輪なのである。

 

だから、魔女大戦という漫画が面白くなるかどうかは「魅力的なキャラクターを生み出せるかどうか」とほぼイコールである。そしてそれが、キャラ造形力という名の作者の「力量」という事になる。

 

ごく個人的な感想だが、卑弥呼はこの漫画の中でも圧倒的にキャラが立っていた。「バトルとして完成度が高く」「能力バトルとしてもレベルが高く」「キャラは魅力的」ときているのだから、これはもう面白くならない訳がない

 ⇒ 最初はどうでもいいと思っていたクレオパトラも、試合が終わる頃には好きになっていた(特に散り際の美しさが大きい)し、やっぱり名試合はキャラの魅力を引き立てるよなあ。

 

 

漫画を読んでいて緊張で手に汗握るなんて一体いつ以来だろうか。マジでデスノートの最終巻を読んだとき以来かもしれない。

 

もちろん、それは自分が卑弥呼を気に入っていて、入れ込みながら読んだのも大きいのだが、読者にそう思わせるだけのキャラクターを生み出したのは、紛れもなく作者の「力量」である。

 

 

さて、初めは「なんて安直な……」と思いながら読み始めた本作であるが、気が付けばどっぷりハマっていた。終末のワルキューレに続き、2度目の掌返しである。

 

これほどの名試合を描ける作者ならば、今後も期待できる。魔女はまだ半分以上も残っており、卑弥呼と同等、あるいはそれ以上に魅力的な魔女が今後も登場するかもしれない。

 

読者のそれぞれに「推し魔女」がいることと思うが、とりあえず自分は魔女大戦の卑弥呼を応援します

 

 

 

 

■ところで

 

いま自分は、魔女大戦に対して抱いている懸念が2つある。

 

1つは最後までトーナメントを描いてくれるかどうか。途中で打ち切られたり、突然別の展開が始まったりしないよね?

 

 

特に前者については、漫画自体が打ち切られてしまったら応援もヘッタクレもない。

 

そもそも、トーナメントの規模を大きくしすぎではないだろうか。今更言ってもしょうがないのだが、32人は多すぎる。

 

ざっと計算しても、トーナメントが終わるまで31試合かかり、今のところ1試合1巻程度のペースなので、完結まで最低でも31巻はかかる。2回戦以上はもっと長引くだろうから、実際はそれ以上だろう。

 

31巻も続いたら相当な長期連載の部類だと思うのだが、本当に、コミックゼノンはそこまで続ける覚悟の上で連載を始めたのだろうか。

 

 

グラップラー刃牙ですら最大トーナメント編が始まったのは21巻以降、確固たる人気を得てからであった。しかも1回戦はサクサク進むので、31試合を20巻程度でまとめている。

 

これに対し魔女大戦は1回戦からじっくりページを割いて描くので、相当な長期連載になる事が予想される。

 

魔女大戦のようなオリジナルの新作が、こんな長期プロットで連載を始めてしまうのはけっこうな博打ではなかろうか。

 

まあ、そんな事は自分が気にしてもしょうがないのだが、だからといって途中で打ち切られてしまうのは困る

 

1回戦ぐらいもっとサクサク進めればいいのにとも思うが、そのお陰で卑弥呼VSクレオパトラのような名試合も生まれたわけで、一概に時間をかけるがダメとも言えない。

 

というか、試合に時間をかける事自体は全然構わないのである。そのほうが長く楽しめるし。兎にも角にも自分が心配しているのは「こんなに巻数の必要そうな設定を作って、本当に最後までやり切れるのか?」という事である。

 

 

トーナメントが途中で中断されて、別の展開が始まってしまわないかも心配である。

 ⇒ しかもトーナメントの主催者アグラットが何か目的を持って動いているようであり、いかにもあり得そうな展開なのが怖い。

 

グラップラー刃牙の最大トーナメント編が偉大なのは、内容の密度もそうだが、まず何よりあれだけの規模のトーナメントを「きちんと完結させた」点にあると思う。

 

魔女大戦も一度トーナメントとして始めたからには、まずきちんとトーナメントとして完結させてほしい。

 

 

ただ、本屋で7巻の帯をみると「100万部突破!」と書かれており、売れ行きは順調なようなので、すぐに打ち切られるという心配はなさそうだ。そうであってくれ

 

というか、7巻で100万部って普通に凄くないか?最近の漫画事情はよく知らないが、1巻あたり10万部以上売れているなら相当な人気漫画と言って差し支えないレベルだと思う。

 

単行本が売れればアニメ化などのメディア展開も期待できるだろうし、今後も魔女大戦の人気がどんどん盛り上がってくれるよう、応援したいと思う。

 

 

 

もう1つの懸念はもっと切実である。2回戦で卑弥呼が負けたりしないよね?

 

卑弥呼の2回戦の相手はマタ・ハリという魔女なのだが、こいつがまた曲者で、複数の魔女たちで結成された「魔女の鉄槌」という集団の、頭目のような位置に君臨している。

 

 

 

そんなポジションのキャラが1回戦で消えてしまうはずもなく、魔女大戦でほぼ唯一の瞬殺劇を繰り広げ、相手を寄せ付けない圧倒的な強さで初戦を勝ちあがった。

 ⇒ ちなみにこの対決のせいで、対戦相手のメアリー・リードは自分の中で「残念な魔女ランキング」の断トツトップにランクインしている(笑)。

 

仮に2回戦を勝ち上がったとしても、その次の相手は主人公補正マシマシのジャンヌ・ダルク。いくら何でも鬼ブロックすぎんだろ

 ⇒ まるでもう巴御前に勝ったかのような物言いではあるが。というか、巴御前が勝ってくれて全然構わないのだが。でもジャンヌが勝つんだろうなあ。

 

 

 

まあ、と言っても魔女大戦自体まだまだ始まったばかりなので、これから先の展開がどうなるかは分からない。

 

そもそも作中でジャンヌが主人公だとは一言も言われてない(言われてないよね?)ので、実は卑弥呼が主人公でしたぐらいの大どんでん返しを見せてくれると、個人的には大変嬉しい。

 ⇒ あっ、でもWikipediaを見てみるとジャンヌの項目に「主人公」って書いてある……。

 

あるいは卑弥呼がマタ・ハリもジャンヌも蹴散らしてサプライズ優勝してしまうとか。ここまでくると予想というよりただの願望だが(笑)。

 

 

あと、これは友人と話す時よく話題になるのだが、1回戦が終わったあたり(つまり、全ての魔女が出そろったタイミング)でリアル・魔女階位を実施してほしい。

 

要するに、人気投票である。1番人気の魔女を2回戦で負けさせるなんて事はまさかしないだろうから、投票する側も俄然気合いが入ろうというものである。

 

推し魔女の順位を少しでも押し上げるべく、己が熱意を全て注ぎ込んで優勝してほしい魔女を選ぶ。まさにリアル・魔女階位である。

 

自分?もちろん卑弥呼に全ツッパですよ。

 

■外伝 蒼炎の勇者

 

「忠義尽くさん」「絆永久に」をアレンジしたBGMが最高にイカす。

 

マップ構成も懐かしく、蒼炎の軌跡8章をオマージュしたものとなっている。下の通路はポールアクスを持たせたボーレかティアマトで塞ぐのが鉄板だったなあ……などという話はともかく、アイクが強いので右と下は封鎖する程度にして左に戦力を集中するのがいいかも。

 

アイクは武器やスキルで耐久を高めてくるので計算を狂わされやすく、中々倒しづらかった。

 

 

■エーティエ

 

より破壊力を高めるため、力のしずく×1、はやての羽×1を使用。さらにカムイの紋章刻印を施したことで必殺率が65に。ほとんど全ての敵を1発で沈める。

 

 

 

■ロサード

やや物足りない初期値を補うため、竜の盾×1、秘伝の書×1を使用。

 

 

■クロエ

CCボーナスと必死のドーピングが活きたのか、最近強い。強いのだが、このマップでは大して高くもなさそうな壁を越えられないのが気になる。移動力もあまり高くないし、本作の飛行系は風花と違って育成必須という程ではないか。

 

 

■アイク

「紋章士は1作品に1人」という本作の法則からすると、このアイクは蒼炎アイクのはず(暁はミカヤがいるため)なのだが、どう見ても暁アイクにしか見えない。このマップのBGMも暁だし、アイクの見た目も完全に暁準拠のムキムキ体型だし。

 

 

MVP:クロエ&ルキナ

 

 

 

 

■17章 砕かれた平和

 

風花雪月チックで壮大なBGMがイカす。

 

キャラ設定を反映したものなのか、グリがいきなり単騎特効してくる。次のターンに続く部下たちが慌てて追いかけてるみたいで面白い。

 

マロンの獅子紅蓮焔舞で地形を変えられ、移動を大幅制限されるのが厳しい。そこで囮役を1人だけ待機させ、レスキューで救出する戦法をとった。

 

 

 

■クロエ

対魔導士ではさすがに強く、対グリをものともしない。

 

 

 

■エーティエ

持ち前の必殺率でボスも強引に撃破可能。正直、今や自軍で最も頼りになるアタッカー。

 

 

 

 

■外伝 導き手

 

ペラペラ喋りまくるベレトにすごい違和感。さらに先生だけあって(?)頭もよく、スキルで再行動させたり、ワープで敵を送り込んできたりと中々小癪な真似をしてくる。

 

戦闘をスキップしていたら敵のワープを見逃し、水晶を1個壊されてしまった。

 

 

 

■エーティエ

まるで命中率のようなノリで必殺を出す。基本的に1人1殺なので、リンの「速さの吸収」ともすこぶる相性がよく、低めの速さを補ってくれる。魔よけ×1を使用。

 

 

 

■ジャン

上級Lv.8で速さ17。ルイ並に遅く、基本的に追撃は取れないので火力も低い。

 

 

MVP:エーティエ&リン

 

 

 

 

■18章 冷たい海路

 

FEではお馴染みの船上マップ。

 

従来の船マップのように四方八方から飛行ユニットが飛んでくるわけではないので、難易度は低いほうか。リンデンを仲間にするのだけちょっと面倒だった。

 

 

■ロサード

体格が上がりやすく、リーフの指輪を装備すればハンマーも速さを下げずに使える。成長率も高く、初期値の低さによる出遅れを取り戻しつつある。

 

 

 

■主人公

成長率もよく、ステータスも隙なく強いはずなのになんか地味に感じるのは、間接攻撃手段を持たないからか。

 

 

■シトリニカ

はやての羽×1を使用。

 

 

MVP:クロエ&シグルド

 

 

 

 

■外伝 聖騎士

 

残っていた外伝マップを消化。

 

橋をかけると大量の増援が出てきてビビるが、シグルドが1人で単騎特効してくるおかげでほとんど相手にしなくて済む。逆に、経験値を稼ぎたいときは迷惑かも。

 

というか、この状況で単騎特効って脳筋すぎないかシグルド。

 

 

MVP:クロエ

 

 

 

 

■外伝 未来を選びし者

 

出撃枠がたったの8しかない。

 

最初は川に隔たれており敵に近付かれにくいが、途中でカムイが竜脈によって地形を変えてくる。初見殺しだが、最近のFEには巻き戻し機能があるのでこういった初見殺しも対処しやすいのがありがたい。

 

 

MVP:主人公

 

 

 

 

■19章 死の港町

 

地形が瘴気ばかりでビビる。民家を訪問すると異形兵が出てきてさらにビビる。

 

1ターン目にレスキューで主人公を上に引き上げ、ザフィーアを説得。砲台要員に2発ずつ弾を撃たせて瘴気を払う。特に中央の砲台は敵の足止めにも使えて便利。

 

 

■シトリニカ

素の回避は130弱。魔攻、速さも高く、気が付けば自軍で最も強力な魔法ユニットになっていた。

 

 

■セリーヌ

火力、速さともにシトリニカに劣る。いつの間にかちょっと物足りないキャラに。

 

 

■ザフィーア

最初みたとき新キャラかと思った。完全に存在を忘れていた

 

 

■ロサード

成長率が高く、最近割と安心して前に出せるようになってきた。体格の成長率も高く、今やモーヴ(体格12)よりデカい。

 


■エーティエ

硬いモーヴを難なく撃破。

 

 

■クロエ

総合力が自軍で最も高く、弓以外には隙がない。

 

 

 

■ジャン

後方でずっと大砲をぶちかましていた。このほうが普段よりむしろ活躍できているのが悲しい。

 

 

■ルイ

速さがたったの15でカンスト。いくら何でも低すぎる。これならグレートナイトにしたほうがよかったか……?

 

 

MVP:クロエ&シグルド

 

 

 

 

■外伝 暁の巫女

 

「強き思いここに」のアレンジ……だと思うのだが、アレンジが効きすぎてもはや別物。最初何の曲か全然分からなかったぞ。

 

マップのほうも暁3部13章を元にしていると思うのだが、段差システムがないので大分ベツモノ。

 

ミカヤの隣にはサザを意識したっぽいシーフが、さらにミカヤが「私の本気を~」と言った後は「それっぽい」増援が出てくる。

 

ソドマス、スナイパー、ウォーリアー、ハイプリースト、この辺は何を意識したのか分かりやすいが、ブレイブヒーローとドラゴンマスターはちょっと何を意図したのかよく分からない。そこはハルバーディアじゃないのか……?

 

 

■エーティエ

ほぼ必殺ばかり出すので、力アップが実質3倍の恩恵がある。

 

 

■フラン

2回攻撃のおかげで、相手を選べば割とダメージが出せる。物攻に関していえば何気にロサードより高い。しかし耐久がないので、迂闊に前には出せない。

 

 


■シトリニカ

魔攻46、速さ30。しかも回避が123もある。今のところ魔法4人衆の中で一番優秀。

 

 

 

■セリーヌ

魔攻43、速さ27。シトリニカ、クランに比べ足の遅さがやや気になる。

 

 

■クラン

魔攻38、速さ29。シトリニカ、セリーヌに比べパンチ力不足が気になる。

 

 

■ジャン

魔攻38、速さ18。魔攻もさほど高くはないのだが、それ以上に速さが冗談みたいに低い。実質他のユニットの半分以下の火力しか出せず、かなり使いづらい。

 

 

MVP:クラン

 

 

 

 

■20章 王なき城

 

蒼炎20章を彷彿させるタイトル。グリが暗闇の中に潜んでビビるが、復活の石を1回割ったら大人しく玉座に戻っていった。

 

こういう索敵マップだとどこに弓兵が潜んでいるか分からず、クロエやロサードの使い勝手が悪くなる。結果的にこのマップには全然弓兵がいなかったので、もっと強気で前に出してよかった。

 

 

■シトリニカ

速さがもう上限に達してしまった。回避キャラとして使っているだけにもっと速さを伸ばしたかったのだが……というかはやての羽を損した

 

 

MVP:クロエ&シグルド

 

 

 

 

■21章 帰還

 

蒼炎終章を彷彿させるタイトル……って妙に蒼炎を彷彿させる章タイトルが多い?単なる気のせいか?

 

敵のハイプリーストが動き出すあたりで、鬼のように増援が沸いてくる。隅っこで何ターンかやり過ごしてみたが、一向に敵が減る気配がない。ひょっとして無限沸きか?

 

 

敵の沸きが激しすぎてまったく状況が好転しないので、巻き戻して速攻でヴェイルを倒す作戦に切り替える。しかし敵が多すぎるせいで1回では巻き戻せず、4回ぐらい連続して巻き戻し機能を使うハメになった。

 

そして章クリア後、またも主人公が指輪を奪われる。物語の最重要アイテムなのにホイホイ敵に奪われすぎ……というか、指輪は各キャラが個別に装備してるんじゃないのか?

 

 

■エーティエ

倒せない敵がいない。最強アタッカー。

 

 

MVP:エーティエ&リン

 

 

 

 

■22章 神竜と邪竜

 

終盤の盛り上がりステージで、なかなかの燃え展開あり。主人公はここでクラスチェンジでも良かったんじゃないか?それだとゲーム的には遅すぎるけど……でもロイなんかもっと遅かったぞ。

 

マップ的には前の章のような怒涛の増援もなく、どうという事のないステージ。

 

 

■フラン

火力はまあまああるが、命中に大分難がある。せめて紋章刻印をつけないと使いづらいか。

 

 

MVP:エーティエ&リン

 

 

この後、残っていた外伝マップを全て消化した。

 

 

■外伝 賢王

はやての羽持ちの敵が逃げるのでワープ&レスキュー。あとはターン制限もないのでゆっくり進めて弓砲台の玉切れを狙う。橋を落とす演出だけちょっとビビる。

 

クロエとロサードは弓砲台ばかりなので満足に動けず、残敵処理に専念。

 

 

 

■若き獅子

事あるごとにドラゴンの増援が沸いてくるのが面倒。山地形が多く、クロエ&ロサードは前マップとうって変わってイキイキと動き回る。

 

 
 

■外伝 碧き風空

さすがに挑むタイミングが遅すぎたのか、適当に突っ込ませてもまったく味方が死なない。経験値もほぼ入らない。格下ばかりなので全く攻撃が当たらず、回避率の高いシトリニカが大活躍。

 

 

 

■外伝 慈愛の王女

外伝はこの曲ばっかりアレンジされるなあ……いい曲なんだけどこうも毎回擦られると食傷気味。

 

セリカがワープライナで急接近してくるので短期決戦で終わる。増援の経験値も入らないので長期戦になっても困るのだが。

 

 

 

■外伝 英雄王

宝箱を盗られそうになって焦るが1つも大したものがない。下にいる秘伝の書持ちの盗賊だけ倒せば十分かも。

 

 

 

 

 

■23章 四狗

 

火山弾がこちらの動きを読んでいるかのごとく適切なタイミングで落ちてくるので鬱陶しい(笑)。

 

火山弾で大ダメージを受けるとか言われるのでビビったが、言うほど大ダメージでもなかった。守備31の主人公が9食らったので攻撃力40だろうか。

 

火山弾を避けながらチマチマ進めていたら19ターンもかかってしまった。

 

 

■ルイ

火山弾を受けてもノーダメージ。

 

 

■フラン

攻めるときの攻撃力は素晴らしい。が、一転受けに回ると脆い。

 

 

■ヴェイル

とりあえず重要キャラなので余った枠に入れているが、速さが低いし、武器が重すぎて追撃取れないのが痛い。体格はリーフの指輪で補う。

 

 

MVP:主人公&エーデルガルト

 

 

 

 

■24章 追憶

 

前の章に続きマップ兵器が鬱陶しい。しかも今回は範囲が広いのでうまく回避するのに頭を使う。

 

ターン制限のあるマップはFEでは定番のイメージだが、本作ではこれが初?いきなりターン制限に関する説明が始まって「なんで今さら?」と思ってしまったぞ。

 

 

■ロサード

移動に制約がかかりやすいマップなので、移動力が高く、いつでも山に逃げ込める飛行系のユニットが活躍。はやての羽、ブーツ、秘伝の書×2を使用。

 

 

■ジャン

うっかり雪崩に巻き込まれその後何もできず。

 

 

MVP:クロエ&シグルド

 

 

 

 

■25章 最後の門番

 

宝箱を狙うシーフは沸くし、後半敵は無限沸きだしで急がざるを得ないマップ。

 

ボス周辺は敵が固まっていて近寄りづらいのだが、かといって追いつかれた増援をいちいち相手にしていられない。

 

ユナカの竜脈で煙幕を張り、ルイ、シトリニカと共に下の通路を封鎖。増援を食い止めてくれている間にボスを倒した。

 

 

 

■エーティエ

流星群で厄介な異常杖持ちを強引に潰す。

 

 

■フラン、クラン

試しに戦わせてみたら、ルミエルとの特殊会話が発生した。多分ヴァンドレにも会話があるのだろう。ここまでヴァンドレを使い続けてる人がどれだけいるかは分からないけど。

 

 

■主人公

そろそろ終盤なので誰を支援Sにするか考えなければならないのだが、支援Aになってるのが現状クランしかいない。このままだとクランしか支援Sにできないぞ……。

 

というか他のキャラは軒並み支援Aまで達成しているのに、なんで主人公だけこんなに支援の進みが遅いのだろうか?必要な支援値が他のキャラより多く設定されているのだろうか。

 

最序盤からいるフランですらBまでしか行ってない。

 

 

MVP:ルイ&マルス

 

 

 

 

■26章 ラストエンゲージ

 

ムービーから戦闘開始に至るまでの流れがなかなか熱い。

 

第1形態。敵の装備がS級武器ばかりでめちゃくちゃ豪華だが数は少ないし、ソンブルもわざわざこっちに特攻してくるので取り巻きは無視できる。ソンブル自体、取り巻きと比べてそんなに強くもない。

 

第2形態。各シリーズ(紋章士)に対応するボス級キャラクターが登場。これには意表を突かれ「おおっ!」となった……のだが、見た目が汎用グラフィックでしかないのが残念。

 

これで見た目も原作再現してくれた激アツだったんだけどなあ……まあ、たった1章きりの敵キャラのためにそこまで労力は割けないか。

 

ちなみにこのボス紋章士、対応するシリーズの紋章士で攻撃することで特効ダメージになる。マルスが「近付かないとどいつが有利キャラか分からない」的なことを言うので「なるほど、最終決戦は過去シリーズを熟知しているほど有利に戦えるんだな!」と思っていたら、普通にステータス画面で「〇〇からの攻撃が特攻」と表示されるので笑ってしまった。

 

 

そもそも有利キャラが特攻というだけで、他キャラの攻撃もふつうに通るので、わざわざ対応する紋章士にこだわる必要もない。特殊会話が発生するのが一番の見どころ。

 

4人の紋章士を倒し、ソンブルのバリアが剥がれたところで総攻撃を仕掛け、ゲームクリア。
 
 
 
 
 
 
えっ、これで終わり??この流れなら当然全員分のボス紋章士が出てくる流れだと思ってたのに……。
 
調べてみると、ソンブルのバリアが剥がれた後、2ターン経過すると次の紋章士が出てくるらしい。でも普通、そんな事になる前に倒しちゃうよなあ。
 
っていうか、これが終章だったの??終章なら「終章」って書いてくれないと……「26章」なんて書かれたらまだ続くのかと思っちゃうじゃん。
 
いや、展開的にはもう最終決戦だし、章タイトルも「ラストエンゲージ」だしで、この章が終章である事自体には違和感はないのだが、「終章」と書かれていなかったばっかりに「ここからさらにもうひと捻りあるのか!」と無駄に期待してしまったのである。でもそんなものはなかった
 
 
という訳で、若干の肩透かし感が残りつつ、エンゲージ1周目をクリア。

 

 

■クロエ

これで終わりだと思ってなかったので、最後のトドメをあっさり持っていかれる。

 

 

MVP:エーティエ&リン

 

 

 

 

■全体の感想

 

あんまりハマれなかった、というのが率直な感想だろうか。買ってからクリアするまでに4ヶ月もかかってしまった。

 

決してつまらなかった訳ではないのだが、前作「風花雪月」が買って一気に5周遊んだ(他のFEも、だいたい3周以上は遊んでいる)ことを考えると、今回のFEは客観的にみて「あんまりハマれなかった」んだろう。

 

何故クリアするのにこれほど時間がかかったかと言えば、22章「神竜と邪竜」をクリアしたタイミングでモチベ的に大ブレーキがかかり、再開するのに3ヶ月以上開いてしまったためである。

 

では何故モチベにブレーキがかかってしまったのか。これは端的に言えば「ストーリーがつまらなかったから」である。

 

元々本作は「紋章士」というシステムを売りにし、完全新作でありながら過去作キャラの人気にあやかろうとしているように見えて、第一印象からして良くなかった。

 ⇒ しかもその紋章士の扱いが「マルスとその他大勢」ぐらいの格差があり、シリーズファンからしても「まーたマルス優遇か」とゲンナリさせられる代物。

 

しかしそれは一旦置いておくとしても、物語の最序盤でルミエルが「各地に散らばった紋章士の指輪を集めろ」と言い出したとき、自分は嫌な予感がした。

 

要するに、「各地に散らばった紋章士の指輪を集める」という「クエスト」が序盤に発行され、それを達成するだけで物語の大部分が消化されてしまうのではないかと危惧したのである。

 

そしてその予感は悪い方向に的中する。物語の大半は指輪集めに終始し、集めきったときにはもう終盤、ヴェイルから「3つの邪竜紋を壊せ」という新たなクエストが発行され、そのままラスボスまで一直線で終わる。

 

 

これは「指輪を集めるだけの単純な物語だから悪い」と言っている訳ではない。自分の好きな蒼炎の軌跡だって、簡単に言えば「亡国のお姫様を傭兵団が助け、国を取り戻す」という単純明快な物語である。

 

しかし、蒼炎の場合は「じゃあどうやって一介の傭兵団が国を取り戻すのか」という過程と内容が気になるのであって、だからこそ「もう夜遅いけど、あと1章だけ!」と先を読み進める手が止まらないのである。

 

しかし本作の場合「各国に散らばった指輪を集める」という「主人公のやるべき事リスト」が与えられ、そのタスクを処理するだけで物語は進んでいく。ルミエルに「指輪を集めろ」と言われたから指輪を集め、ヴェイルに「邪竜紋を壊せ」と言われたから邪竜紋を壊す。本作のストーリーはこのタスク処理に終始しており、基本的に意外性が入り込む余地はない。だって本当に各国を巡って指輪を集めていくだけだし。

 

先ほどは「ストーリーがつまらない」と言ったが、より正確に言えば「予定調和」「先の展開が読める」と言ったほうが正しい。

 

さすがに「覚醒」や「if」のように破綻している訳ではないが、かといって特に先が気になる事もない無味無臭なので、ヴェイルが「3つの邪竜紋を壊せ」と言い出した時点で「ああ、この物語はあと邪竜紋壊してラスボス倒せば終わりなのね……」と途端に続きが気にならなくなった。

 

 

そんな予定調和の物語でも、テキストと演出によって巧みに面白さを表現するのが「力量」というものだが、残念ながらストーリー以上に出来が良くないのがこの2つである。


死にかけのキャラが長々と喋り続けて緊張感がないし、最重要アイテムであるはずの紋章士の指輪も簡単に奪われたりして妙に扱いが軽い。今まで悪逆非道の限りを尽くしてきた敵が、死に際になっていきなり「自分には実はこんな一面があって~」とか語りだすのも逆に萎えるだけなので止めてほしい。

 

中でもテキストに関しては「風花雪月」から一変、「覚醒」「if」を彷彿させる軽いノリに逆戻りしており、予定調和の物語がさらに薄っぺらさを増してしまっている。

 

 

自分も風花雪月のシナリオを信奉するつもりはないし、むしろあれも大分粗の目立つ内容だったのだが、それでも「楽しかった学園生活から一転、かつての学友とも殺し合いを迫られる戦争の無情さ」が軸となって骨太の物語を構築できていたし、実際それが多くの人にウケていたようにも思う。

 

まあ、風花雪月は元々周回前提の作りをしていたというのもあるが、それでも5周続けて遊ばせるゲームは、それだけ惹きつけられるもの、パワーを持っていた証拠でもあると思っている。

 

本作にはそれだけのパワーがなかった。少なくとも、シナリオ面に関してはそう思う。

 

 

 

最大の欠点はそんな所だが、自分が遊んでいて気になった不満点が他にもいくつか。

 

まずルナティックの仕様。成長率の方式が固定成長しか選択できないとは何事か。

 

そもそも自分がFEを遊んでいて最も嬉しい瞬間は「ユニットが神成長したとき」である。あの喜びは何物にも代えがたい。その楽しみを固定成長で奪うなど言語道断である。

 ⇒ そういえば蒼炎の軌跡にも固定成長があるが、13周遊んで1回も選んだことがない。

 

だいたい、どうしても固定成長を搭載したいならランダム成長との選択式にすれば済むハナシである。18年前に発売された蒼炎の軌跡さえそれが可能だった。対戦ゲームならまだしも、FEという1人用ゲームで「ルナティックでランダム成長」を選ばれたら何が困るというのか?強制的に固定成長を選ばせてわざわざプレイヤーの遊びの幅を狭めるなど実に独善的だし、そんな仕様にする意味がない。

 

実際、自分は1周目をクリアした後2周目ルナティックで遊ぼうと思っていたのだが、この仕様を知った瞬間一気に遊ぶ気が失せた。これが22章でモチベーションが下がった2番目の理由でもある。

 

その他にも本作には周回意欲を削ぐような仕様が多い。その最たるものは引き継ぎ要素がない事だろう。絆の指輪なんてどう見ても1周でコンプリートできるような代物じゃないのに、新しく始めるたびに1から集め直しなど到底やってられない。せめて絆の欠片と絆の指輪、できればSP、所持金等も持ち越しできるようにすべきである。閲覧済みの支援会話がマイルームでしか確認できないのも不便すぎる。

 

 

スキル関連もよくない。一見、豊富な種類のスキルがあって様々な戦術を試せるように見えるが、SPは消費式で付け替えが効かず、しかも大半のスキルは消費SPが重すぎてまともに取得すらできないので、結局安価で汎用性の高いスキル(ぶっちゃけ再移動)を付けるのがド安定となってしまう(というか消費SP5000とか何考えて設定したんだ?これ)。

 

一部UIもよろしくなく、紋章刻印は今どの武器に付いているのか分かりづらいし、蚤の市は数百個の在庫があるのに1つずつしか購入できない。蚤の市に関しては本当にテストプレイしたのか怪しいレベル。

 

 

それとシナリオに関してもう1つ、自分が大きく評価を下げたのが11章「撤退」である。

 

 

世界の命運を握る重要アイテムをあっさり敵に奪われる迂闊さも酷いが、それは百歩譲ってまだいいとしても、このイベントの都合上、自軍はこれまで集めた紋章士の指輪を全て失ってしまう。

 

これの何が困るかというと、セリカやミカヤといった魔法キャラの指輪を失うので、魔法系で育てようと思っていたキャラが魔法の素質を習得できなくなってしまうのである。

 ⇒ 他にも色々と弊害はあると思うが、自分が遊んでいて最も手痛いと感じたのがこれ。

 

そうでなくとも「ストーリーの都合を優先してプレイヤーに不便を強いる」というやり方が自分は嫌いなのだが、そこまでしてやりたかったのがあのしょーもない展開なの?と思うとますます悲しい。

 

正直、ストーリーの終盤は(記事にも書いたように)熱くていい展開もいくつかあった。しかし、この中盤の大失点といい、これまでのマイナス評価を覆すには至らず、口が裂けても「良いシナリオだった」とは言えないかな……。

 

 

 

欠点ばかりをつらつら挙げたが、良い所がない訳ではもちろんなく、FEシリーズとしての面白さはキチンと押さえられている。自分は先が気にならないシナリオのせいでブレーキがかかってしまっただけで、ゲームとしては十二分に面白い。

 

特に3Dモデルの出来栄えは間違いなく過去最高。顔の造りが平べったいせいか光の当たり方によっては「ん?」となる場面があったり、服装が妙に現代的で世界観にそぐわなかったりするものの、全体的な出来はとてもよい。

 

今回、イラストとしての立ち絵がなくなったが、モデルの出来がいいのでまったく違和感なく見ていられた。アニメ絵を見事に3Dモデルに落とし込んでおり、この辺のこだわりはさすがFE。モーションは最初ちょっと大袈裟かなと思う場面もあったが、すぐ慣れた。

 

戦闘アニメもかなり気合いを入れて作り込まれており、見ていて飽きない。単純にモーションの数が豊富だし、リアルさと派手さが絶妙なバランスで両立されている。今までFEの戦闘アニメはGBA3部作が最高だと思っていたが、今回はそれを超えたっぽい

 

音楽も相変わらず素晴らしい出来だし、キャラは魅力的だし、本当に、シナリオさえ除けばかなり得点の高いゲームなのである。あとはシナリオさえ改善されればなあ……。

 

 

 

 

いつまでもシナリオの不出来さを嘆いてもしょうがないので、以下、戦績発表。

 

 

 

 

■12位 ヴェイル(37戦29勝)

 

戦績としては自軍最下位となったヴェイルだが、これは仕方がないだろう。そもそも加入が遅すぎる。

 

ストーリー上の重要人物だし、ちょうど枠も余っていたしでとりあえず入れてみたが、戦力的にはこれまで育ててきたキャラに比べてふた回りほど弱く、1軍として使うには物足りない。

 

あまりに弱いので、ノヴァを持たせて2回攻撃ができるようにしてみた。その結果多少火力は上がったが、貴重なS級魔法なので、他のユニットに持たせたほうがパーティ全体の戦力は上がっただろうと思われる。

 

 

 


■11位 ジャン(73戦48勝)

 

大器晩成、振るわず。「レベルアップ時の神成長」を見るのが何より好きな自分は、この手の大器晩成キャラ(サザ、ドニ、モズメ、ツィリル、ジャン)を毎回期待して育成するのだが、見事に毎回裏切られている。

 

システムに見放された蒼炎サザ、本編ならエースを張れるドニはともかく、モズメ、ツィリル、そして今回のジャンと毎回微妙な奴らばかり。

 

一応彼らも全く使えないという訳ではなく、育てればそこそこ活躍できるだけの能力はあるのだが、この手の大器晩成キャラは「最初は弱い」「育成するのが大変」というのが常。

 

それを無理して頑張って育てたのに、最終的な強さが「そこそこ活躍できる」では、かけた労力に対してリターンが見合っていない。

 

このジャンはまさにその典型とも言えるタイプで、打たれ弱く、前線を任せられるようなキャラではない。

 

特に速さの伸びがヘタれてしまったのが致命的で、追撃が取れず、火力が出せない。

 

最終的に、ジャンの仕事は「単発攻撃による削り」と「杖による回復」が主。でもこんなん誰でもできるんだよなあ。大器晩成に期待して育成したユニットとしてはあまりにも残念な結果である。

 

毎度毎度大器晩成という「原石」に惹かれ、「今回こそは!」と奮起しては失敗ばかり。我ながらいい加減学習しろよと思う。でも次回作も「大器晩成」キャラがいたらやっぱり育てちゃうんだろうなあ……

 

 

 


■10位 フラン(71戦59勝)

 

今作最もシステムに見放されたユニット。魔力の伸びがよく、魔法系としての活躍を見込んで育成していた。

 

ところが物語中盤に自軍の指輪をすべて奪われるイベントが発生。魔法素質のないフランは適性を得られず、魔法職にクラスチェンジする事ができなくなってしまった。

 

仕方なくマスターモンクとして育成したが、このジョブ、上限がイマイチだと思う

 

技が25しかなく頻繁に攻撃を外すし、速さも30なのでせっかくの格闘武器なのに4回攻撃が取れない。力の数値も、物理職で38は低いと思う。

 

使い勝手としては、回復できる代わりに攻撃性能をごっそり落としたウォーマスターという感じ。フランは力の初期値が低いので、相当気合いを入れて育成しないとまともにダメージが通らない。

 

仮に上限まで育てても38なので、アーマー等の守備が高い相手には手が出せない。そのうえキラーナックル+のようなぶっ壊れ武器もないので、前作のウォーマスターに比べると攻撃性能はだいぶ大人しめ。

 

自分から攻撃した時のみ追撃という格闘武器の性質といい、フラン自身の打たれ弱さといい、こっちから攻める分には強いのだが、受けに回ると途端に脆い。

 

そのため「後方で残敵処理もできるサポート役」というのがフランの立ち位置である。チェインガードはハードだとあまり使わないが、それでも最初の1発をスカせるのは便利で、壁役の安定感が大きく変わる。

 

正直ユニット性能としてはそこそこなのだが、最序盤からの仲間であること、(クランもそうだが)主人公を「神竜さま!」と慕ってくれるのが可愛いので、ついつい愛着が沸いて使ってしまう。この辺は最序盤キャラの強みか。

 

 



■9位 ロサード(101戦77勝)

 

他の斧使いがことごとく2軍落ちしていく中、「自軍にまったく斧キャラがいない!」という事で白羽の矢が立った後半加入キャラ。

 

ヴァンドレ … 露骨なジェイガンポジション。使うわけがない

ブシュロン … 早々にヘタれた

アンナ … 初期値が低く育てにくい。枠も足りない

ジェーデ … 壁役の絶対エース、ルイに大きく見劣りする

ボネ … 速さ低すぎ

パネトネ … 登場マップ1ターン目でやられて育てる気が失せた

 

そんな中、枠もちょうど増えたタイミングでの加入だったし、ロサードは運もよかった。

 

斧使い、という観点でいえばハード帯だとそこまでブレイクを意識しなくてもごり押し可能なので、別に斧使いを育てなくても良かったんじゃないか、とは思う。

 

しかしロサード自身の使い勝手は決して悪くなかった。地形無視の飛行ユニットは特定マップでかなり便利だし、体格が神成長したおかげで、トマホークを(指輪込みで)速さを下げずに使えるのも大きい。後半加入のユニットにしては、十分活躍してくれたほうだと思う。

 

ただし、後半加入キャラの宿命として、叩き上げキャラに比べると若干ステータスが物足りない。

 

特にドラゴンナイトとしては守備の値が低く、竜の盾などを使って補強してはいるものの、安心して前線に出せるほどではない。

 

 

 


■8位 ルイ(179戦92勝)

 

壁役の絶対エース。特に守備の値は2位の主人公(32)を大きく引き放し、他の追随を許さない。

 

物理盾としては最後まで安定した強さを見せてくれたが、中でも味方が育っていない序盤は「これ、ルイなしでどうやって乗り切るの?」と思うような場面が何度もあった。まさに自軍の守護神。

 

感覚としては暁の女神のブラッドに近く、周りが打たれ弱いユニットばかりなので、前線は安心して前に出せるルイに頼りっぱなし。ステータスだけ見ると何の変哲もないいつものアーマーなのだが、このゲームではそれが強い。これほどアーマーが頼りになるFEは、if暗夜とエンゲージぐらいではないだろうか。

 

ただしルイに関しては速さと魔防の上限が極端に低いため、育てようにも早々に頭打ちとなり、ストーリーが進むほど敵の魔法が怖くなってくる。そのため、後半は前に出せる機会が減る。

 

敵の攻撃をずっと一手に引き受けていた印象なのに、思ったほど戦績が伸びていない(300戦ぐらいしてるかと思った)のは、恐らくそれが理由だろう。また、追撃が絶望的なので攻撃面においては基本削り役であり、そのため撃破数も伸び悩んでいる。

 

それでもルイがいなければ成り立たなかった場面は多く、自軍の中でもその存在感は大きい。撃破数こそ伸び悩んではいるが、その活躍は準MVPクラス

 

 
 


■7位 ユナカ(175戦107勝)

 

前半アタッカー、後半回避盾として活躍。

 

前半は優秀なステータスと移動力5が便利、さらに本作の短剣は威力が高く、射程1-2の汎用性も相まって他の剣使いの存在意義を食ってしまいかねないほどのユニット。

 

ただし力の成長率はそこまで高くなく、クラスチェンジボーナスもないので、後半はやや力不足が目立つようになってくる。

 

1人1殺できるだけの火力は基本的に出せないので、後半は専ら削り役か、「隠密」「竜脈」を活かした回避盾として活躍。素の回避率も高いので、魔法を含めほぼ全ての攻撃を受けきることができる。

 

短剣や竜呪によるデバフもボス相手に効果を発揮し、力不足になってからもキッチリ仕事はこなしてくれた印象。

 

ただ、今回扉は全て破壊できるし、宝箱も誰でも開けられるようになったので、シーフを育成する意味自体が若干薄れてしまったような気はする。

 

 

 


■6位 シトリニカ(148戦121勝)

 

この辺から、壁役が引きつけてくれた敵を返しのターンで倒していく「火力要員」という扱いになる。そのぶん、撃破数も他のユニットより多い。

 

クラン、セリーヌに続く第3の魔法ユニットとして育成したが、初めのうちは速さも低く使い勝手が悪かった。

 

しかし武器に暁の紋章刻印を施したことで状況が一変。回避率が高く、前線に積極的に出していける魔法ユニットに大化けした。

 

過去シリーズを見ても「前線に出せる魔法ユニット」というは総じて強力であり、射程1-2かつ火力があるので反撃で敵の数をどんどん減らしていける。より回避率を盤石にするため、ユナカと組んで2人で回避盾を務める場面も多かった。

 

身も蓋もない言い方をすればシトリニカが強いというより暁の紋章刻印が強いだけなのだが、クラン、セリーヌより遅れて参戦となったぶん、何か個性を出そうと画策したらそれがカッチリ嵌ったという感じ。

 

シトリニカ自身は速さの上限値が低く壁役向きのキャラではないので、回避盾として使うならもっと適性の高いキャラは他にいくらでもいる。しかし「強いユニットを使いたい」のではなく「シトリニカを活躍させたい」のであれば、オススメの運用方法なのでぜひお試しあれ。

 

 

 


■5位 セリーヌ(161戦132勝)

■4位 クラン(168戦133勝)


 

この2人は役割もステータスもほぼ同じなのでまとめて記載。戦績もほぼ横並びである。

 

自軍の「火力」として中核をなすことが多い魔法ユニットだが、本作ではこの2人がその役割を担う。その頼れる火力ぶりは、撃破率の高さ(セリーヌ82%、クラン80%)にも表れている。

 

2人のステータスを比較すると、魔力の伸びがよいセリーヌに対し、クランは速さが伸びやすい。上限の関係で最終的には逆転したが、中盤まではずっと「一撃のセリーヌ、追撃のクラン」という図式だった。

 

また、クランに関してはHPや守備の伸びも悪くなく、守備に関してはルイに次いで自軍2位だった時期さえある。このまま耐久が伸びてくれれば「前に出せる魔法キャラ」として頼れる存在になったと思うのだが、上限の関係であっという間に頭打ちになってしまったのが残念。

 

特に、中盤過ぎまでクランの火力はセリーヌに比べると大分物足りず、(セリカの指輪の有無という差があるとはいえ)長らく「劣化セリーヌ」という印象が拭えなかった。

 

速さが伸び始めたことでようやくその悪いイメージは払拭され、最終的には遜色ないユニットに育った。能力のメリハリが激しい最近のFEにおいては、厄介なアーマー系を潰すためなくてはならない存在である。

 

 

 


■3位 主人公(179戦135勝)

 

地味主人公。ステータスの伸びは決して悪くなく、守備を含めた全ステータスがバランス良く上がる。

 

なのだが、アタッカーとしてはエーティエや魔法キャラに劣り、壁役としてはルイに劣り、特に秀でた部分もないのでどんどん印象が薄くなっていく。魔法や杖も使えず、使えるのは間接攻撃のしづらい剣と格闘だけなので、前衛としてはロサードより印象が薄かった感がある

 

それでも自軍の中では特効を受けない貴重な前衛なので、部隊を2つに分けたとき(ルイがいないとき)に前衛を務めたりと、地味~に活躍してくれた。

 

エーティエでキラー武器運用が強いと分かるや否や倭刀を持たせて鍛えたりもしてみたが、間接攻撃できず、素の火力が遠く及ばないのでこれも地味な印象のまま終わる。

 

それでも最序盤からずっと使っているキャラなので戦績も稼ぎやすく、こっそり3位に入賞。そんなところも地味。

 

キャラクターとしてはともかく、ユニット性能としては歴代でもトップクラスに地味な存在だったと言えるだろう。もっと竜脈とかエンゲージ+を使ってやればよかったかな。

 

あと、(この画像もそうだが)立ち絵の表情がずっと不機嫌そうでモヤッとした顔なのは何故だ。他のキャラは大体笑顔か凛々しい表情してるのに。

 

 

 


■2位 クロエ(202戦161勝)

 

空のエース。ただし、エースとして運用できるようになるまでには大分時間がかかった。FEの花形と言ってもいいペガサスナイトだが、クロエに関しては序盤火力も耐久も足りておらず、戦場を縦横無尽に駆け回るエース運用には疑問符がつく。

 

そもそも本作は飛行ユニットのエース候補が少なく、自分のように後衛の数が多いとアイビーやオルテンシアを入れる枠がないため、16章でロサードが加入するまで実質クロエしか候補がいない。この辺はジョブチェンジを積極的に活用して、適性の高いユニットを見つけるべきかもしれない。

 

しかし1周目では誰がどんな成長をするかも分からないのでそれも難しく、無難に序盤からいるクロエを使い続けた。

 

頭角を現し始めたのはクラスチェンジ以降。グリフォンナイトは上限値も優秀なので、ドーピングアイテムも使い甲斐がある。

 

最終的には素の状態でも回避率が121とシトリニカ並みに高く、苦手な斧は基本命中率が低いのでまず当たらない。火力も錬成手槍で十分、シグルドの指輪補正と再移動で戦場を縦横無尽に駆け回る、まさに「空のエース」が完成した。

 

育てるのには苦労したが、それだけの見返りはあったキャラだと言えるだろう。

 

 

 


■1位 エーティエ(222戦193勝)

 

近接攻撃のできない弓兵だけに戦績は伸び悩むだろうと思っていたら、まさかの戦闘数・撃破数ともに堂々1位。終盤いかにエーティエに頼りっぱなしだったかが分かる。名・実ともに文句なしの自軍最強ユニット

 

しかしこのエーティエ、最初からこんなに強かったわけではなくむしろ序盤は2軍落ちスレスレまでいった時期もある。

 

初期値が貧弱でまともにダメージが通らず、敵のザコ弓兵相手にタイマンで打ち負けるなど散々な有り様。数少ない間接攻撃ユニットだからという理由で何とか食らいついている状態だった。

 

そんなエーティエがここまで覚醒した理由は、ひとえに「力の成長率」と「錬成キラーボウ」の存在だろう。

 

そもそも敵から反撃を受けることなく運用する弓兵において、耐久はさほど重要ではなく、力と速ささえ伸びれば後はどうとでもなる。そこにきてこのエーティエ、キャラの設定を反映したのか力だけが面白いようにグングン伸びていく。

 

全体的な成長率は、総合力を見ても分かるように褒められたものではない。しかしエーティエに関しては弓兵に必要な能力がしっかり伸びるので、まったく問題なく運用できてしまう。力の数値に関してはルイを上回り自軍1位であり、「女アーチャー=非力」というFE伝統の図式を完全に覆した。

 

その圧倒的な攻撃力に、錬成キラーボウの必殺率40と紋章刻印の必殺率30が上乗せされるのだからどうなるかは想像に難くない。後半、エーティエの攻撃を受けて耐えられる敵は(ラスボスを含めて)ほぼ皆無。

 

撃破率はクラン、セリーヌを上回る87%であり、エーティエが攻撃を仕掛ければほぼ確実に相手を沈めていた事になる。その圧倒的な確殺力は、厄介な敵を優先して排除するため自軍になくてはならない存在。

 

さらに後半はリンというエーティエの強さをもう1段階押し上げる指輪が登場。「速さの吸収」によってやや低めの速さを補強し、「攻め立て」によって反撃さえ受けなくなるためどうにも止まらない。遠距離から危険な敵を排除できる「流星群」も高い利便性と汎用性を持つ。

 

何より、一度2軍落ちスレスレまでいったキャラがここまで見事に返り咲くというのは過去のFEを振り返ってみても例がなく、無理やり使おうとして結局足手まといのまま終わる(蒼炎のワユ、ifのリンカなど)事のほうが大半である。そういう意味でも前代未聞で面白いキャラだったと言える。

 

これだけ頼もしくなってくるとキャラにも愛着が沸いてくるし、支援会話も面白いものが多いしで、最終的にどんどん好きになっていったキャラクター。でも衣装はクラスチェンジ前のほうがよかったなあ