新型ミサイルか?北朝鮮が弾道ミサイルを発射 その意味とは | 因幡のブログ

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 今朝5時28分ごろ、北朝鮮西岸の亀城から弾道ミサイル1発が発射され、およそ800km先の日本海上に落下しました。

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(北朝鮮がミサイルを発射した北朝鮮の亀城 画像はGoogle Earth より)

新型ミサイルの可能性
 
 今回のミサイル発射は今までにないものとなりました。というのも今回飛んだミサイルの到達高度は2000kmというとてつもない高さに届いたのです。これがいかに凄いかというと、従来北朝鮮が発射したミサイルの中で最高の高度は、昨年6月に発射された中距離弾道ミサイル(射程が3000〜5500km程度の弾道ミサイル)であるムスダンで、これが1000kmでした。つまり今回はその2倍の高度に達したのです。これが意味することについて、稲田防衛大臣は今日の記者会見で「新型弾道ミサイル」の可能性を示唆しました。つまり従来の北朝鮮のミサイルではなし得ない成果を出したために、今回発射されたのはさらに強力な新型弾道ミサイルではないか?という分析です。

 今回北朝鮮は弾道ミサイルをわざと高く打ち上げて射程を短くする「ロフテッド軌道」という撃ち方を用いました。ホースで水を撒く時にホースを上に向けると水が手前に落ちる、という光景をイメージしていただければ分かりやすいと思います。つまり今回北朝鮮はわざとミサイルの射程を短くして発射したことになります。では本来ならばどのくらいの距離まで飛ぶかということについて考えてみると、およそ4000〜4500km先まで飛ぶのではないか?という分析がなされています。そうなると北朝鮮から約3000km離れた米軍の重要拠点であるグアムまでをも射程に収めることになります。

 従来グアムを狙うミサイルとしては先述したムスダンが注目されていました。

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(北朝鮮が今年の軍事パレードで公開した弾道ミサイル ムスダン。射程は約3000〜4000kmとみられている)

 実はムスダンはあまり兵器としての信頼性が高くないのではないか?という問題が浮上しています。ムスダンは2016年4月以来計8回の発射試験が行われましたが、成功したのは2016年6月のただ一度だけで、あとは全て空中爆発などにより失敗しているのです。そこで今回発射されたミサイルが稲田防衛大臣の言う通り新型弾道ミサイルであった場合、北朝鮮はグアムを攻撃するためのより信頼度の高い弾道ミサイルを開発していた可能性が高いと筆者は考えています。

本当の脅威は高度ではない

 今回の弾道ミサイル発射について、報道各社は2000kmという到達高度にばかり注目しています。たしかに日本のミサイル防衛態勢を考えた場合、イージス艦に搭載されているSM-3ブロック1Aという迎撃ミサイルは、到達可能な最大の高度が約500kmとされているので、2000kmの高さにある弾道ミサイルを迎撃するのは極めて困難です。また地上配備型のPAC-3も、2000km上から落ちてくる弾道ミサイルの速度を考えれば、こちらもまた迎撃は極めて困難と言わざるを得ません。

 しかし、今回北朝鮮がなぜ弾道ミサイルをロフテッド軌道で打ち上げたかというと、まともに飛ばせば日本列島の真上を通過することになってしまい、日本や米国を過度に刺激してしまいます。そこでこれを防ぐために日本海内で試験を完結させるべく敢えてロフテッド軌道を用いたと考えられます。またこのミサイルは先述した通り普通に飛ばせばグアムを狙える射程を有していると分析されていて、これが日本を主目標としたミサイルであるとは考えづらいのです。加えて既に日本にはスカッドERやノドンといった、射程1000〜3000km程度のミサイルが多数配備されています。そうなると、今回発射されたミサイルは実際の運用時にはグアムなどを狙うと考えられ、その際には2000kmなどという高度ではなくもっと低い高度を飛行することになります。つまり今回は2000kmという高度にばかり固執した報道はあまり的確ではないのです。

 むしろ今回の弾道ミサイルについては、北朝鮮のミサイル技術の向上を脅威と捉えるべきです。従来北朝鮮が発射したミサイルのうち、最も飛翔距離が長いと分析されていたのが先述したムスダンでした。しかし今回はさらに射程が長くなるだろうと分析されたミサイルが発射されたのです。これは北朝鮮がそのミサイル技術を着実に進化させていることを如実に表しています。今後の北朝鮮情勢について、より警戒が必要です。