因幡のブログ

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 最近米国への挑発度合いを高める北朝鮮ですが、米国は北朝鮮に対する新たな牽制策を打ち出すかもしれないという話が持ち上がってきました。

脅威でないミサイルも迎撃

 9月20日付けのCNNの報道(https://www.cnn.co.jp/amp/article/35107480.html) によれば、米国政府当局者の話として、北朝鮮が発射する弾道ミサイルでも、米国や同盟国への直接的な脅威とはならない弾道を描くものも迎撃する可能性を示唆したとのことです。つまり、日本や米国の領域内に着弾する可能性が全くない弾道ミサイルも迎撃しようということです。
 これは北朝鮮の弾道ミサイル発射試験が最近頻度を増していることや、それによるミサイルの性能向上を背景として、米国や同盟国へのミサイルによる将来的な脅威を減らすための措置だと思われます。特に、先日北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイル火星12が、米国の最重要拠点であるグアムを射程に収めることが実証されたという状況下で、北朝鮮にこれ以上のミサイル発射試験を思いとどまらせるには、こうしたいかなるミサイルの発射も米国は看過しないという姿勢を示す事が効果的だと考えたのかもしれません。

北朝鮮の対応は

 しかし、北朝鮮にもこうした米国の姿勢に抗う策があります。一つは、以前のように日本海でのロフテッド軌道によるミサイル発射試験に戻すことです。現在北朝鮮は、以前のように狭い日本海で、発射角度を垂直に近いものにして高い高度までミサイルを上げ、近い場所に着水させるいわゆるロフテッド軌道ではなく、通常の角度で発射して遠くまでミサイルを飛ばす通常軌道によって、日本列島を飛び越えて太平洋にミサイルを着水させる発射試験を行っています。しかしこれは、ロフテッド軌道よりもミサイルが弾道を描く際の高度が低くなり、相対的に米国のミサイル防衛システムにより迎撃される可能性が高くなります。

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(通常軌道とロフテッド軌道の違い。図は2017年2月10日放送のホウドウキョク 能勢伸之の週刊安全保障 https://www.houdoukyoku.jp/archives/0012/chapters/27252 より)

 そこで北朝鮮は、米国のミサイル防衛システムを回避すべく、再び日本海でのロフテッド軌道によるミサイル発射試験に戻る可能性があるわけです。ミサイルの高度が高くなれば、米海軍が保有する弾道ミサイル迎撃用のSM-3ブロック1A/Bの迎撃可能高度(500km程度と言われている)を上回り、迎撃が非常に困難となります。
 もう一つは、北朝鮮が弾道ミサイルの弾道を調整して、日本列島の手前に弾道頂点を設定することです。現在米海軍が保有する弾道ミサイル迎撃用のSM-3は、弾道ミサイルの速度が遅くなる弾道頂点部分(一番高度が高くなる部分)付近やその下層での迎撃を担当しています。つまり、その迎撃に適した高度に至る部分を日本列島上空に設定すれば、落下物等の影響による日本の世論などに配慮する必要などからミサイル迎撃のハードルが高まる可能性があります。

迎撃に関する課題

 また米国によるミサイル迎撃自体に関しても、様々な課題があります。例えば、現在横須賀に配備されている弾道ミサイル防衛能力を有するイージス艦戦力は、先般相次いだ事故により低下しています。その中で、ミサイル防衛以外の任務を遂行すべく西太平洋に展開するイージス艦戦力に、果たして余裕があるのかという問題があります。
 また、直接的な脅威とはならない弾道ミサイルの迎撃について、法的な問題も浮かび上がります。自衛権や国連からの武力行使容認のいずれも満たさない中で、いかなる根拠により迎撃を行うのかは、説明が必要となる部分でしょう。
 そして、もしミサイルを迎撃すれば北朝鮮が報復措置をとる可能性も否定できません。いかなる反応を示すか分からない中で、迎撃した後の展開を考えるのは非常に困難でしょう。