何もかも憂鬱な夜に/中村 文則 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)


※ネタバレふくみます。

仕事に忙殺されそうになったので、ダイイングメッセージを書こうとしたら
容疑者が多すぎて、書ききる前に絶命しそうです。こんにちは。

ぜんぜん帰れなくて、毎日「何もかも憂鬱な夜」です。
「世界に向かって火を投げる」…そんな時期は13年ほど前に終わりました。
今はただ、箱根にでも行って、温泉につかり、そのまま温泉に溶けて、
妖怪硫黄ババアになりたい、と願っています。すごい臭いお湯をかけてくる妖怪です。

掏摸』がよく飲み込めなかったから心配したけど、おもしろく読めた。

死刑にまつわる小説といえば、『13階段』も『グリーン・マイル』も名作だったなぁ。
この小説はそれらほど濃くないし、深くはまってしまうストーリーではないにしろ、
やっぱり死刑については考えさせられる。

「死刑を執行するなら、確実さと、公正さが必要だと思うんだよ」
という主任のあの一連の語り。なるほど、と。

裁判とか、服役とか、そういうものに関わったことがないから、
自分は感情でしか考えられないことに気づいた。
たとえ最期に謝罪をしようとも、許すべきじゃない、そんなのズルいっていう幼稚な感情。

私も佐久間には同じように接してしまうだろうから、主人公の憤りがわかるなぁ。

ちょっとムカついた相手でも、しょげられると、怒ってることに罪悪感をおぼえたり、
こいつ嫌い!っていう相手でも、ちょっと優しくされたら撤回したり、
簡単にコロコロ変わる人間だから、よく言えば素直でとても優しくて素敵ってことだけど、
大事なことなのでもう一回言いますね、素直でとても優しくて素敵な人間なんですけども、
だから、裁判員とかに選ばれたらマズイでしょうね。左右されすぎて。

これを読んだからって、罪を犯すのにも理由があるとか、同情の余地があるとか、
まったく考えないけども、新鮮な角度で“犯罪者”を見られた気がする。

納豆巻きかじりながら「あーもっと楽しく仕事がしたい」なんて嘆いている私は、
刑務官から見たらじゅうぶん甘っちょろくて笑っちゃうよね。