ドランのキャデラック/スティーヴン・キング | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


ドランのキャデラック (文春文庫)


※ネタバレふくみます。

妻を殺された男の復讐劇。その計画が、なんともアメリカ的だなぁ。
あの執念と行動力をもった男がいたとしても、
勤勉な日本人は工事の段階で発見して成功しなさそう。

確実に仕留めてくれ…!って手に汗にぎった。自分もシャベルを握ってるかのように。

ミザリー』もそうだったけど、
うまくいくの!? 見つかってしまうの!? どうなるの!? っていう極限で振り回す感じ、
スティーヴンってほんとうまいよねっ(ほっぺたを膨らませて)。

日常生活において突然悲惨な事態に陥るかもしれない、
っていう恐怖心を植え付けるのもうまい。
恐怖のどん底に突き落として、ドサクサにウォーターサーバー売ったり、
保険に入らせたり、プロポーズしたりしたら、さくさく成功すると思う。

『ポプシー』も爽快だったな。あっ、キング作品の中ではって意味ね!
キング作品に、“爽やかで快い”とかないから。
スラムダンクが9000爽快だとしたら、ポプシーは0.6爽快ってかんじ。

「生きてる人間がいちばん怖い」と思わせるなかで、『ナイト・フライヤー』は違ったな。
「だが、忘れるな、その前にきさまの頭とけつの穴をすげ替えてやるからな」とか、
アメリカ版の「奥歯ガタガタ言わせたろか」的表現が多くておもしろかった。
おもしろがるところがおかしいけども、すごい!アメリカ人ぽい!(アホの子の感想)

ぜんぶフィクションであってほしい、
自分とは一生かかわり合いのない世界であってほしい、
そう願わずにいられないですね、いつも。

それでも読んでしまうのは、やっぱりひとつひとつが物語としておもしろいから。
ただビビらせるだけじゃなく、起承転結の構成がしっかりしてるから。

いろいろな恐怖が味わえる短編集でした。デザート盛り合わせ、みたいな。
ウォーターサーバーは断れるけど、輪ゴムくらいなら買っちゃいそう、っていう程度です。