ホテルジューシー/坂木 司 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


ホテルジューシー (角川文庫)


※ネタバレふくみます。

入社して1ヵ月で先輩(年下のギャル)が逃走した前の会社のこと思い出したわ。
しかも年末の繁忙期、クリスマスやら歳末セールにニューイヤーセールに福袋、
まわりのギャルがクリスマスに彼氏に何あげるかってキャッキャッしてる中、
私は家にすら帰れなかった日々のこと、浩美に重ね合わせている。

女子大生が、夏休みに沖縄でリゾートバイト!甘くきらびやかな響き!
…なんて騙されちゃいけないのである、このお話。

寝ぼすけのオーナー代理や、お客さんのパンツを広げて見ちゃうクメばあにセンばあなど、
個性的な従業員たちがいっぱいで、とても夏を満喫している暇はない。
私ならすぐ「ちょうブラック会社なんだけど!!」ってTwitterで愚痴るな。

しかもお客さんたちもまた、何やら裏事情を抱えたひとばっかり。
ホテルマンはお客様のプライベートに首を突っ込まないもの、関係ないはずだが…。

世話焼きすぎて山火事かってくらい焼きすぎて、紫芋がほっくほく、ってそうじゃなくて、
その熱さで人を救ったり、自分の不甲斐なさに気づいたりして成長していくわけだけど、
これ文体や設定がポップなわりに、毎回起こる事件がけっこうヘビィ。

アヤとユリ、偏見もってごめんよ。ギャルにはトラウマがあるもんで(上記参照)。
事情があるにせよ、ゴミを散らかしたり、平気で「ウザイ」とか言うのはよくないけどね!

ヤスエさんみたいな女性も苦手だわ。ステキライフを演出してる系女子。
この結末を“イイ話”とは思えない私は、心が汚れているのかしら。
浩美がお人好しすぎて、有り得ないと感じてしまう。

矢野くんもそうよ、同情はするけど、今こういう浮かれた若者多いから、教訓になるわ。

沖縄は開放的な観光地かもしれないけれど、
そこにずっと住んでる人、そこで生活してる人がいるわけで、夢の楽園じゃない。
そんな寒々しい現実を突きつけられたような感じ。
いい意味の裏切り、いい意味の現実の重みがあっておもしろかった。

沖縄の郷土料理がたくさん出てくるのもいい。豚肉好きにはたまらんさー。

ちなみに『シンデレラ・ティース』とリンクしている部分があるので、
続けて読むのがおすすめ。どっちかっていうと『シンデレラ~』のが先かな?