”片頭痛は医療機関では治らない” 番外編 脳過敏症候群 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまでOCNのブログ「頭医者のつぶやき」に掲載していたものです。
 アクセス数の多かったものを、ここに再度掲載させて頂きます。
 
 2012年 東京女子医科大学の清水俊彦先生は、「脳過敏症候群」について、日本臨床 第70 巻・第1号での中で、以下のように述べております。
 この論説には、間中病院の間中信也先生、獨協医科大学神経内科教授の平田幸一先生、帝京平成大学薬学部の荒川一郎先生の諸先生方が名を連ねております。
 その論説を一部、抜粋させて頂くことにします。(忠実に伝えるのが目的です)


 近年、片頭痛の体質を有する患者は、小児期より脳の過敏性が高いことが論じられている。特に片頭痛発作時は、視覚野である後頭葉内側に始まった興奮波が大脳の前頭葉に向かい波及していくが、後頭葉での興奮症状は閃輝暗転と呼ばれる視覚前兆として出現する。 毎回出現するこのような興奮症状を的確に抑制し、片頭痛発作を鎮静化するのがトリプタン製剤の概略的な作用である・・


脳過敏症候群における基本病態として・・・


 片頭痛の痛みは、三叉神経核を介する興奮性の情報が視床を介して、最終的に前頭前野の大脳皮質で痛みとして感じとられるとされている。この興奮性の情報を抑制して、片頭痛発作を頓挫させるトリプタン製剤による適切な対処を欠いたり、また片頭痛の痛みを我慢したり、見過ごしていたりしたことに起因し、水面下で脳の過敏性が増大した結果として、視床が感作され、易興奮性が増大することが、重症片頭痛の際に随伴する頭部顔面のアロデイニア症状である。この易興奮性も経年性に減弱し、大脳皮質まで到達しなくなると痛みとしては認識されなくなる。また脳の大血管周囲に存在する三叉神経の末梢が片頭痛の際に周囲に出現する神経炎症タンパクに反応して、脳血管壁の拡張浮腫をきたし、それが三叉神経末梢を刺激することにより、片頭痛の情報が三叉神経核に伝えられる三叉神経血管説が片頭痛の基本病態とされているが、この血管拡張も経年性の動脈硬化とともに徐々に減少していくものと推察される。一側の視床は対側の小脳半球と視床小脳路で情報交換をしており、この感作を受けた易興奮性の情報は大脳皮質まで到達せずに、この視床小脳路を介して小脳半球に伝播され、これが脳過敏症候群の主要症状であるめまいとして表現されているものと推定される。また頑固な頭鳴症状は側頭葉に位置する聴覚路の感作を受けた状態か、もしくは大脳辺縁系の抑制系の減弱したことにより生じている可能性をを想定している。また、圧倒的に更年期以降の女性患者が多いことから、女性ホルモンの変動や衰退も、病態の一因をなしているものと推測される。
 (以下省略させて頂きますが、これらの病態に対して、抗てんかん薬や抗うつ薬を使用すべきと述べております。)


 このような考え方を、以下のようにテレビで頻繁に紹介されておりました。

主治医が見つかる診療所(テレビ東京) 「頭痛:カルテ(3) 宇崎竜童を襲った頭痛の意外な原因とは?」
宇崎竜童は、持病の頭痛が悪化し、難聴・腰痛・帯状疱疹・花粉症にもかかり、活動を控えていた時期があった。
彼の頭痛・難聴等の症状は、子供の頃のかかった水疱瘡の痕(神経)にウイルス(帯状疱疹ウイルス)がすみついたことが原因。

<追記>
テレビ東京の「主治医が見つかる診療所」でも、「脳過敏症候群」が紹介されていた。
「専門医にかかっても治らない不快な三症状 めまい・不眠・耳鳴りの意外な原因を解決します!」(2012年5月14日放送)
「いくつもの病院を回っても治らなかった 原因不明の病気解決スペシャル!」(2012年7月30日放送)
※7月放送分では、よく似た症状をおこす病気として、「脳脊髄液減少症」も紹介されている。

 平成23年9月28日NHK放送の「ためしてガッテン  不眠・めまい・耳鳴り 不快症状を解消せよ!」について[耳鳴りホームページ]
"耳鳴り治療"の観点から、抗うつ剤、抗テンカン薬、トリプタン製剤の有効性などを解説している。

 さらに、書籍でも「脳過敏症候群」について多数出版され、その結果、耳鳴、不眠、不快症状を訴えて、トリプタン製剤を求めて医療機関に殺到されました。これに対して、日本頭痛学会は、理事長名で平成24年8月14日に、そのホームページ上に以下のようなコメントが掲載されました。


脳過敏症候群に対する日本頭痛学会からの公式コメント



 この1~2年テレビなどで話題になっています「脳過敏症候群」について日本頭痛学会からの正式なコメントが平成24年8月14日に学会のホームページに出されました。しかし、このコメントは現在削除され閲覧できませんが、なおネット上では以下のサイトに掲載されています。


頭痛日記 http://blogs.yahoo.co.jp/neuroikeda/37396972.html


 以下は、その内容をお示し致します。


 最近、マスコミで「脳過敏症候群」が何回か取り上げられましたが、その際に、「頭痛」と関連してまちがった情報が視聴者に伝わり、また医療現場でも混乱が生じました。日本頭痛学会理事会も、この状況を放置できないと憂慮しています。

 ことの発端は、清水俊彦医師が、「耳鳴り・頭鳴りは脳過敏症候群によることが多く、脳波をとれば診断がつき、抗けいれん薬を飲めば治る。片頭痛などの慢性頭痛を適切な処置なしに放置したことによって発症するので、日本頭痛学会のホーム・ページに掲載されている頭痛専門医を受診すると良い。」という趣旨をテレビで繰り返し主張したことにあります。
 この説は多くの視聴者に期待を持たせたようです。しかし、「脳過敏症候群」なる説を信じている日本頭痛学会の専門医はほとんどいません。「現時点では科学的根拠のない、個人的な考え」とみなされています。清水医師が強調する脳波の所見は正常人に日常的に見られる脳波である、と多くの研究者が考えています。また、過去に片頭痛のあった人が頑固な耳鳴りを起こしやすい、という説にも根拠がありません。
「脳過敏症候群」は清水医師により日本頭痛学会学術総会に報告され、議論されています。ただ、研究者の多くが清水医師の考えは科学的根拠に乏しいと指摘しているのが現状です。その点、一部のテレビ番組での「日本頭痛学会の会員の多くが認めている学説」とのコメントは正しくありません。日本頭痛学会が清水医師の治療法を「信憑性のあるもの」として是認しているかの誤解が、国民の皆様に伝わり、医療情報の混乱を招いたことは極めて遺憾です。
 学問の進歩は日進月歩であり、頭痛関連の分野でも新たな研究成果と治療法の開発が強く望まれています。日本頭痛学会では、引き続き、頭痛について幅広く、また科学的な議論を会員全体で推進します。今後も正しい医学情報を社会に提供し、常に国民の皆様の健康増進に貢献する努力を続けてまいります。


 これが会長からの正式なコメントです。


 平成23年12月にある患者団体の主催で、先述の先生が回答者になった「頭痛相談会」が東京銀座で行われました。この相談会の多くの質問は「脳過敏症候群」に関するもので、軒並みに「抗てんかん薬の服用について」でした。この質問に対するこの先生の回答に「疑問」を多くもつ人間として、果たしてこのまま放置しておいてよいかどうかという点でした。患者団体の代表には、この点を直ちにメールで指摘させて頂いたところですが、代表自身は、顧問を務める先生の理論がすべてで、日本頭痛学会に抗議するとの返事を戴きました。
 しかし、個人的にこのような理論を容認されることは自由だろうと考えますが、会員数が40~50人程度の組織であれば、それ程問題はないと思いますが、650人もの会員数にのぼる組織を考えるなら公的な組織と同様に考えなければいけないと思います。そうなれば、「脳過敏症候群」という理論が日本頭痛学会でどのような評価をされているのかを”公平な立場から”代表自身が会員の方々に伝えるのが本来の在り方と考えます。このような考え方は、患者会の組織自体を”私物化”していると解釈されても仕方ないと思われます。「効くかどうかも分からない抗てんかん薬を延々と服用させられている方々」のことを少しでも配慮されておられるのかと疑いたくなり、この点をどのように思われているのかと考え、以上の点を指摘させて頂いた次第です。あくまでも、個人的に「信じるかどうかは」勝手なのですが・・・


 そして、この抗議に対する日本頭痛学会の対応は以下のようなものでした。


「『脳過敏症候群』に関する頭痛学会コメント」が、日本頭痛学会のHPから削

除されていました。第一段階では清水俊彦先生の実名が消されたものになり、第二段階として削除になったようです。同時に、リンクが張られていた「News and topics」のページからもタイトルが消え、しかし「何でそうなったか」については触れられていないままです。
 結局、このような学会のコメントが、全て、ホームページから削除されてしまい、
以後の学会で取り上げて論議すると説明があったにも関わらず、何ら討論がなされないままとなり、結局”容認”しているような状態にあるようです。
 このように、患者団体にすぎない組織はどれだけの影響力を持っているのでしょうか?
 慢性頭痛診療ガイドライン作成に際しても、この団体は参画されたようですが・・・
 このあたりが、一般の素人には、腑に落ちない点でもあります。


 要するに、清水先生の論理は、単純に表現すれば、「一般の鎮痛薬で片頭痛の痛みを抑えていると、一部の脳の活性が高まり、そこにつながる血管が異常拡張して、痛みが生じ、血管の異常拡張がさらに脳の活性をもたらし、それが再び血管の異常拡張へとつながり、つまり、悪循環が終わらなくなり、それによって常に片頭痛がある状態になり、血管の拡張が繰り返されると、血管自体に炎症やむくみが残って、さらに頭痛を起こしやすくなる」ことによって、「易興奮性が増大する」というものです。
 結局、頭痛発作時に「トリプタン製剤を使っていないと、脳の興奮性が増大してくるという、「トリプタン製薬メーカーが聞けば”泣いて喜ぶ”ような」考え方です。
 そして、片頭痛の適正な治療とは、トリプタン製剤によって行うということに尽きるようです。


果たして、これが「脳過敏」によるものか?


「脳過敏症候群」を提唱される頭痛研究者の方々は、片頭痛は一言でいうと、頭痛の際に脳が異常な興奮症状をきたす頭痛であり、その興奮症状のために、痛み以外に光や音、さらにはにおいなどの外界の刺激に敏感に反応する頭痛とされます。市販の鎮痛薬は、この片頭痛の際の頭の痛みは取り去っても、水面下の脳の興奮状態は放置されたままとなっていると言われます。ですから、市販の鎮痛薬で痛みのみをごまかし続けると、水面下の脳の興奮状態が徐々に蓄積されて行き、ついには、はちきれんばかりの興奮状態が持続するようになると言われます。このような状態に陥ってしまうと、つねに光を敏感に感じ取り、太陽の光のみならず、室内の蛍光灯でも眩しがるようになります。診察室でも何となくまぶしそうに目を細めてしかめ面をされ、これを「脳過敏」と表現されます。

 私のような、古き時代に生きてきた人間にとって、このような点は甚だ疑問に思っております。現在のように、CTやMRIのような画像検査がまったく存在しなかった時代は、頭痛の「一般的な検査」は、眼底検査、脳波検査、頸椎X線検査しかありませんでした。
 現在では、眼底検査は、手軽に画像検査の行えない施設でしかされない検査ですが、画像検査の出来なかった時代は、頭蓋内病変の有無を調べるための唯一の手段でした。しかし、片頭痛の方々には、まさしく”忌み嫌われる検査”でした。といいますのは、先述のように「室内の蛍光灯でもまぶしがる」ほどですので、ましてや直接目に光を当てる検査など、患者さんにとっては、もってのほかの”言語道断な検査であったはずです。普通は、眼底検査といいますのは、余程熟練しませんと、瞳孔を開く点眼薬でもあらかじめ点眼しませんと、眼底は観察できないのが普通です。ところが、このように光を極端にまぶしがる片頭痛の方々は、散瞳薬を点眼しなくても簡単に眼底が観察されていました。といいますのは、散瞳薬を点眼しなくても、既に散瞳していたからです。この原因は、ストレートネックが長期間持続することによって、交感神経が優位となり、瞳孔が開きっぱなしになった結果です。当然、このような方々は頸椎X線検査でストレートネックを呈していたことは言うまでもありません。しかし、脳波検査上では、必ずしも高電位速波が確認された訳ではありません。「脳過敏」を提唱される頭痛研究者の方々はすべて、ストレートネックに関しては証拠・根拠(エビデンス)なしとされ、 頸椎X線検査でストレートネックを確認される方はどなたもいらっしゃらないようです。

 このストレートネックに関連して、「片頭痛と肩こり」の問題が存在します。


 現在の頭痛学会の理事長である坂井文彦先生が、北里大学の時代に五十嵐久佳先生と発表された成績を引用させて頂きます。


 片頭痛患者の首の痛みや肩のコリには、片頭痛治療薬トリプタンが有効であることがわかりました。トリプタンを服用した片頭痛患者の7割で、頭痛の緩和とともに首や肩の症状も改善したためです。神奈川歯科大学横浜クリニック内科の五十嵐久佳先生と北里大学医学部神経内科の坂井文彦教授が、京都で開催された第12回国際頭痛学会で発表されました。
 対象は、片頭痛患者101人(うち女性88人、男性13人、平均40.7歳)で、兆候のない片頭痛(MO)が83人を占めていました。調査の結果、69人(全体の68%)では首や肩に痛みやコリがあり、そのうちの約半数は首の症状が肩よりも重症と答えましたた。また症状があるのは女性では73%、男性では39%と、性差が見られました。
 薬剤による効果を比較したところ、トリプタンを服用した群(66人)では、頭痛の緩和とともに首や肩の症状も改善した人が68%を占め、頭痛は緩和したが症状は改善しなかった人は16%でした。一方、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)を服用した群(33人)では、頭痛が緩和した人は約6割、そのうち首や肩の症状も改善したのは12人で、頭痛が緩和しなかった人でも4人は首と肩の症状は改善したといいます。これらの結果から「片頭痛患者の首や肩の症状には、三叉神経と頚神経根が関わっているだろう」と五十嵐先生らは述べておられます。
 また片頭痛のどの段階で首や肩の症状が出るかを尋ねたところ、「片頭痛の前駆症状だった」と答えた人が47%と最も多く、「1時間前から」および「1~4時間前から」と答えた人がそれぞれ約3割。「首や肩の症状が片頭痛発作の引き金になった」と答えた人も26%でしたが、「片頭痛発作の間に症状は悪化していった」(31%)、「片頭痛発作の間に症状が始まった」(12%)、あるいは「片頭痛発作の後に症状が起こった」(2%)など、首や肩の症状は片頭痛のさまざまな段階に関連して起こってくることもわかりました。
 また、間中信也先生の成績では、前駆期に61 %、頭痛期に92 %、頭痛消失期に41 % このように、片頭痛の全経過中に、肩こりは出現してきたと報告されておられます。


ある片頭痛患者さんの体験談として


 片頭痛が起こる前は、こりが首と肩の接点の辺り(C3)から首の後ろ側を伝わって、頭に這い上がってくる感じがします。そして、頭と首の接点のくぼんだ所(天柱、C2)にものすごい圧迫感を感じます。その後、こめかみがズキン、ガンガン 吐き気もして、寝込んでしまいます。この頭痛経過は、三叉・頚神経複合体(cTNC)が賦活される様子を如実に表しています。

 この、片頭痛に見られる「肩こり」もストレートネックに関連したものです。


 「脳過敏」を提唱される頭痛研究者の方は、肩こりは三叉神経核の興奮性が引き金になる下行性のアロディニアではないかと述べています。もし、仮に「アロデイニア」と考えるなら、このような方々への「トリプタン製剤」の有効率が矛盾することになります。
 すなわち、片頭痛発作で、アロデイニアが出現した段階で「トリプタン製剤」を服用しても効かないのが一般常識です。
 また、 相撲解説者の舞の海秀平さんは「片頭痛もち」で有名ですが、舞の海さんは、現役時代の「ぶつかり稽古」で首の筋肉に損傷を受けていたのでしょうか、引退して3~4年後に片頭痛を発症されたようです。「脳過敏」を提唱される頭痛研究者の方を受診され、「元来の片頭痛と頸椎の椎間板ヘルニアが引き起こす頭痛が複合したもの」と診断されたようです。ここでも、ストレートネックの存在が頭になかった診断です。
 「セロトニン不足」と「ストレートネック」は相似性がみられます。ということはストレートネックが長期間持続することによって、慢性的な「脳内セロトニン不足」が引き起こされます。そうなれば、セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応してしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。すなわち、 めまい・耳鳴り・不眠・不安・イライラ・頭痛などの不快症状を引き起こすことになります。
中高年になると、脳の血管のしなやかさがなくなってくるため、めまい・耳鳴り・不眠・不安・イライラといった症状が前面に出現してくるに他ならないということです。


 ということで、これらの症状はどこからきているのでしょうか?


 神経細胞の易興奮性はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの代謝異常の結果として生じているものと推測されます。

 現在、新潟県の国立病院機構 さいがた病院の病院長の下村登規夫 先生が鳥取大学におられた頃の2002年の神経研究の進歩第46巻3号で「片頭痛とミトコンドリア」の中で以下のように述べておられます。(後に、MBT療法を提唱されておられます)


マグネシウム欠乏で片頭痛の起こるメカニズムとして


 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
マグネシウムイオンが不足すると細胞のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、細胞内に入り込んだカルシウムイオンは、細胞外へ出ていけません。カルシウムは細胞内に少しずつ蓄積してきます。細胞内カルシウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
 したがって、マグネシウムイオンの低下は細胞内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。これは能動的にナトリウムポンプを調節しているマグネシウムイオン感受性のナトリウム/カリウムATPaseの活性低下を招くとともに、同じくマグネシウムイオン感受性のATP依存性カルシウムポンプの活性低下を招くことになり、細胞は興奮しやすくなります。
このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの好気的代謝異常をきたして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。
 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。
 ミトコンドリア代謝異常が基礎にあったとすると、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神経細胞の易興奮性はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの代謝異常の結果として生じているものと思われます。このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。

 以上のように、述べておられました。


 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。

 こういったことから、片頭痛の諸々の症状は、「ミトコンドリア」「セロトニン」「ストレートネック」の3つの側面は無視できず、当然のこととして以下の図式が存在します。


「ミトコンドリアの活性低下」→「脳内セロトニン不足」→「ストレートネック」
片頭痛の病態は  「003.pdf」をダウンロード

 このように、「ミトコンドリアの活性低下」が第一義的に存在しています。
 このような観点から考えるべきと思われます。


 しかし、現実には「日本頭痛学会」を主導する立場にある東京女子医科大学・脳神経外科の清水俊彦、間中病院の間中信也、獨協医科大学・神経内科教授の平田幸一先生らのそうそうたる先生方が、提唱される考え方であるために、学会自体も一度はコメントで否定しながら、その直後、コメントを引っ込めてしまったという事実が、私には納得しかねるところですが、頭痛専門医はどなたも異論を唱えられないことは、私のような素人の出る幕はないようです。皆さんは、どのように思われるのでしょうか?


「抗てんかん薬・バルブロ酸」の是非


日本頭痛学会では、日本神経学会とともに片頭痛予防療法に使用する薬剤として”海外でのエビデンスは十分ある”ことから、厚生労働省に対してバルプロ酸ナトリウムの片頭痛への開発要望を行ってきましたが、保険適用可能となりました。ただし、以下のような使用上の注意点が記載されています。


追加される予定の使用上の注意:


・片頭痛の発症抑制のための安全性と有効性は16 歳以下の患者では検討されていない。
・片頭痛の発症抑制のための安全性と有効性は65 歳以上の患者では十分検討されていない。


ところが、 六号通り診療所の石原先生のブログの記事で以下のように指摘されます。。

アスピリンに代表されるサリチル酸製剤は、 幾つかの経路で、ミトコンドリアの働きを妨害する、 と多くの研究で確認されています。
それ以外に長鎖不飽和脂肪酸という油の一種や、抗痙攣剤のバルプロ酸(商品名デパケンなど)も、 同様にミトコンドリアへの毒性を持っています。
特にバルプロ酸は現在てんかん以外にも、 気分障害の治療薬として多用されており、
その使用には充分な注意が必要です。

 このように、抗痙攣剤のバルプロ酸(商品名デパケンなど)「ミトコンドリアへの毒性」
が指摘されております。


  バルプロ酸でも、薬剤性パーキンソニズムとなる報告があります。バルプロ酸がミトコンドリアの機能障害を誘発したためと推測されています。

 このように、抗痙攣剤のバルプロ酸(商品名デパケンなど)の「ミトコンドリアへの毒性」が懸念され、片頭痛とミトコンドリアの関連性が示唆され、これまでマグネシウム不足の改善とビタミンB2の投与が推奨された時期もあったようですが、現在では、片頭痛の予防薬として「バルプロ酸(商品名デパケン)」が認可されているということは、何なのでしょうか?
 ただ単に、一時的に「発作が抑制されれば」それでよいという考えなのでしょうか?
学会での暫定的に取り決めがなされているにも関わらず、一部の「頭痛専門医」
は、この抗てんかん薬の服用を強要されている現実は看過できないと思われます。