今後トランプ陣営が逆転する道筋はあるか | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
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バイデン陣営がミシガン州に続きペンシルヴェニア州でも勝利し、大統領選勝利に必要な選挙人270名を上回る290名を確保しました。通常のアメリカ大統領選の流れであれば、この後勝者の勝利宣言と敗者の敗北宣言があり、粛々と次期アメリカ大統領が確定するのですが、今回の大統領選では早々からトランプ陣営が法廷闘争を行っております。
過去記事[アメリカ大統領選 バイデン氏リード/法廷闘争と今後の流れ]トランプ陣営はウィスコンシン、ジョージア、ペンシルヴェニア、ミシガンの各州で、開票について州裁判所に訴えていると書きましたが、それに加えてネバダ州でも開票の差し止めと集計の監視を州裁判所に訴えました。

今後トランプ陣営が逆転するための道筋が残っているのか、確認したいと思います。

現時点のトランプ・バイデン両陣営が獲得した選挙人の数は下記のとおりです。
○トランプ陣営:214名
○バイデン陣営:290名
これに優勢を含めるとこのようになります。
○トランプ陣営:232名(アラスカ州3名+ノースカロライナ州15名を追加)
○バイデン陣営:306名(ジョージア州16名を追加)

現在再集計等を訴えた各州の選挙人数は下記のとおりです。
・ペンシルヴェニア州:20名
・ジョージア州:16名
・ミシガン州:16名
・ウィスコンシン州:10名
・ネバダ州:6名
これらすべてを合計すると68名となり、バイデン陣営の獲得した306名から差し引くと238名になります。
大統領選は270名を確保した方の勝ちですので、
ペンシルヴェニア州
②ジョージア州
③ミシガン州
④ウィスコンシン州+ネバダ州
の①~④のうち、二つ以上をバイデン陣営が維持するとその時点で270名以上が確定し、バイデン陣営の勝利となります。(ウィスコンシン州とネバダ州の勝敗が別れた場合、選挙人の数の関係でいずれの州の決定も勝敗に影響しません)

今回の大統領選挙後動きとして、各州は12月8日までにどの候補者が勝利したかを決定し12月14日に各州の選挙人が投票し、来年1月6日上下両院の合同会議で開票されます。
12月8日の時点で全ての投開票を済ませれば話が早いのですが、交通や通信手段が発達していなかった時代の名残りでこのようなスケジュールになっています。今回の郵便投票が引き起こした混乱を見ると、アメリカは進歩しているのか疑問を持ちますね。
この選挙で270名の選挙人を獲得すると大統領選決着になりますので、トランプ陣営としては12月8日の時点で自陣営が270名を確保するか、最低でも法廷闘争によってバイデン陣営が上記の①~④のうち二つ以上確保するのを防ぐ必要があります。
なお1月の開票で両候補者がどちらも過半数を取れなかった場合、連邦議会の投票で結果を出すことになります。連邦議会の投票では下院が大統領を選出し、上院は副大統領を承認するよう定められており、下院では各州の代表に1票が与えられ、26票以上を得た候補者が次期大統領になります。

法廷闘争と一言に言われますが、州によって訴えている内容が異なり、当然下される判決も異なります。特にペンシルべニア州とミシガン州では集計停止を訴えていましたが、すでに開票はほぼ終わって結果が発表されていますので、次は郵便投票の一部無効などを訴えることになるでしょう。
前代未聞の事態であり私にはアメリカの裁判所がどう判断するかなど全く予想できませんが、最高裁の判事の過半数が共和党寄りとはいえ5つの州のうち最低3つの州で投票結果を覆すか未確定にしなければバイデン陣営の勝利が確定する(残り2州がペンシルヴェニア州とジョージア州かウィスコンシン州であればバイデン陣営の勝利)ため、『理屈の上ではトランプ陣営の勝ち筋が残っている』というレベルであり、残念ながら実現性は極めて低いように思います。
菅総理が早々にバイデン氏にTwitterで祝辞を述べているのもそうした判断なのでしょう。


※アメリカ大統領選について改めて調べ、過去記事[アメリカ大統領選 バイデン氏リード/法廷闘争と今後の流れ]を修正しました。

※トランプ大統領再選の場合とバイデン氏当選の場合の比較については過去記事[トランプリスクとバイデンリスク]をご参照ください。