上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

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帝国データバンクが3月15日に発表した2021年度の雇用動向に関する企業の意識調査によると、2021年度に正社員の採用予定がある企業は55.3%と、1年前の調査(2020年2月)から3.9ポイント減少して3年連続の減少となり、2012年度(54.5%)以来の水準まで低下しました。規模別では、「大企業」は79.5%(同3.4ポイント減)で8年ぶりに8割を下回り、「中小企業」は50.2%(同3.4ポイント減)となり、規模を問わず慎重な姿勢を示す結果となっています。

(表は帝国データより引用)
 

コロナショックから労働力調査と毎月勤労統計を欠かさずチェックし、新型コロナウイルスが労働者の状況に少なからず悪影響を及ぼしていることを繰り返し伝えてきましたが、やはり新規採用についても同様に小さくない影響を与えているようです。

 

なお正規雇用は直近10年間のピークだった2018年と比較して3年で約10%の低下となっていますが、非正規雇用の低下はより顕著でピークの2018年と比べて約16%の低下となりました。元々非正規社員の採用は高くとも50%を超える程度しかないため、正規雇用の採用予定がある企業が1/6程度減少したのに対し、非正規雇用の採用予定がある企業は約1/3減少したことになります。非正規雇用は雇用の調整弁として便利に使われがちですが、こうした不況の際には特に大きく影響を受けることが改めて浮き彫りになった形です。

(表は帝国データより引用)

こうして企業が新規採用にネガティブになっている一方で、東京商工リサーチが本日発表した第14回「新型コロナウイルスに関するアンケート」では「コロナ禍が収束した後に懸念されることは何ですか?」という設問に対し、最多となる47.5%の企業が「経済活性化に伴う人手不足」と答えています。採用を絞れば人手不足になるのは当然なので、他の企業が採用を絞っているところをチャンスと見て採用を拡大し、優秀人材を囲い込めばアフターコロナにおいて有利になるのでしょうが、そう簡単にはいかないのが現実のようです。
 

(表は東京商工リサーチより引用)
 
同アンケートでは、大企業(資本金1億円以上)の2020年度「黒字」が71.5%(1,258 社中、900社)なのに対して、中小企業(資本金1億円未満)では50.5% (7,753社中、3,917社)と21.0ポイントの差がついており、コロナ禍での売上高の落ち込みは、コスト削減余力が乏しい中小企業の利益水準により深刻な影響 を及ぼしていることが示されました。
こうした余裕のない中小企業は仕方ないにせよ、資金に余裕がある大企業においても同様に一斉に採用を絞ってしまうことで「就職氷河期」が発生してしまうため、もう少し長期的視野に基づいて採用活動を行う企業が増えてほしいと思います。