タイでの同性婚、大きく前進 | 「アジアの放浪者」のブログ

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7月8日、タイのプラユット首相率いる内閣が、同性のパートナーに一定の権利を認める「市民パートナーシップ法案」を閣議決定しました。今後、国会で審議されることになりますが、おそらく承認されることでしょう。仮に承認されれば、台湾に続きアジアで2番目に同性カップルの権利を認める法律となります。

 

紛らわしいのですが。

この法案、「同性婚」を認めるものではありません。「同性カップルの権利」を認めることが趣旨の法案なのです。それゆえ、これを報道しているマスコミも、「同性カップル」、「事実上の同性婚」といった表現をしています。

 

では、いったいどのような権限が認められるのか。

まず前提として、17歳以上であること。17歳未満の場合は、裁判所の認定を受けた保護者の同意が必要です。また、カップル双方、ないし1人がタイ国籍であることも必要とされています。

 

パートナーとして登録した場合。

公的に養子を迎え入れることが認められます。また、パートナーが亡くなった場合、その資産を相続することができます。

 

この二つが主なのですが、養子と遺産相続は、同性カップルが長く求めてきた権利ですから、結婚とまったく同じではないにしても、大きな前進といえましょう。

 

但し、タイでは生まれた時に登録された性が生涯公式な性になります。たとえ性転換手術によって肉体的に異性となったとしても、身分証明証や旅券などは、生まれたときに登録された性のままです。今回、同性カップルが認められる法案が成立する見込みであるにせよ、トランスジェンダーたちや同性カップルたちによる「権利の平等」を求める運動は続くことになります。

 

同性愛やトランスジェンダーに比較的寛容なタイであっても、こうした法律を快く思わない人たちだっています。今回の法案だって、昨年から慎重に検討されてきて、パブリック・ヒアリングも行われここまで上がってきました。養子縁組を公認することで子どもの成長を心配する声があります。所有する財産が同性カップル相手に持っていかれてしまうことを懸念する親族もいます。しかし、どうやら時代の動向は、多様化を認める方向に流れています。

 

これは止めることが難しい。例えば10年後、この同性パートナーシップ制度が廃案になることは考えにくいです。それよりも、同性婚が承認される可能性の方が高い(その場合なら、同性パートナーシップ制度は廃案になるでしょう)。ま、好むと好まざるとに関わらず、多くの人が努力を続けていく方向に、時代は動いていくようです。