先日、専門コースの2年生の授業でこのレメディを担当しました。
原料はバイケイソウ(梅恵草)。
白緑色の花が梅に似ていることと、葉が鶏卵ににていることから、バイケイソウという名がついたそうです。
緑色の花が多く、なんだか、奇妙な感じがします。
この植物の毒性は強く、交感神経に作用し、各内臓の痙攣をおこします。
激しい嘔吐と下痢から極度の衰弱になります。
顔面蒼白、冷汗がでます。
悪寒で体中が氷のようになり、頭痛がして頭が氷漬けになったような感覚になります。
この症状は、コレラにとても良く似ています。
今の日本では、あまりなじみのない病気ですが、かつて日本でも恐れられた病気です。
https://xn--ja-o83a6ioa.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%83%A9
19世紀、コレラが欧州で蔓延した時に、このレメディは、カンファ―(樟脳)、カプラム(銅)とともに、素晴らしい治療効果を上げ、ハーネマンの名声を高めました。
衛生状態の良くないところでは、今も蔓延するこの病気は、今まで元気に生きていた人に突然襲い掛かります。
激しい下痢と嘔吐が、人間の大切な命のもとである水分を急激に奪ってしまいます。
このレメディの特徴は「虚脱」状態です。
マテリアメディカでは、”Collapse”という言葉で出てきます。
意味は、虚脱、崩壊、倒壊、衰弱、挫折・・・。
人間の身体における「水」という存在は、人間の社会的な場面では、どんなものになるでしょうか?
血液やリンパ液、粘液や漿液、唾液などとなって、身体のスムーズな循環を支えてくれる存在のような役割を、社会において担ってくれているのは、「お金」ではないかしら。
お金は、人の様々な必要をスムーズに満たしてくれます。
急激で激しい脱水から虚脱状態になるという現象が、社会的な側面で起きたらどうなるかしら?
それが、このレメディの精神症状を表しています。
インドの巨匠 ラジャンサンカランは著書“Soul of remedeis”で以下のように書いています。
”社会的地位を失ってしまったというフィーリングがあり、いかなる手段を用いてもすぐそれを回復しなければならず、さもないと自分は終わりだと感じている。
一度に何かを得る方法、たとえばギャンブルとかうそをつくとか詐欺行為とかいった方法を見つけようとする。冨や自分の重要性を示すことがVerat.の際立った特徴であり、これを使って失った社会的地位を埋め合わせようとする。”
身体における水分というのは、社会人としての冨や地位かもしれません。
サンカランは、このレメディをプルビングしたときに見た夢についても書いています。
“まもなく引退することになった年老いた男性は、引退することで社会的な地位を失うことになっていた。彼はそのことを恐れていて、まだ、自分は重要人物であることを示すために派手なパーティを開いた。”
嘘をついてでも、自分の裕福さを示したい。
このレメディを必要とする人は、本人だけでなく、その前の世代が失った場合にも多いそうです。
宗教や政治、ビジネス、などの世界での指導者のなかには、こういった状態の人が結構いるのかもしれません。
サンカランと並ぶインドの巨匠サルカー先生は、彼の著書“Just you see”のなかで、
このレメディについて、
“アルセニカムとハイオサイマスHyos.(ヒオス)の色合いがあると思う。”と書いています。
“このレメディは主要な急性病レメディの1つとして使えるが、大多数はアルセニカムを代わりに使っている。”
アルセニカムの人は、好色、呪う、だます、といったことはしなさそうです。
ヒオスは、しそうですが。
Verat.は下痢と嘔吐が同時に起きるアルセニカムと症状が似ているので植物の砒素ともいわれます。
私は、このレメディの授業をするときはいつも、渡辺淳一が書いた「遠き落日」という本をご紹介しています。
https://honto.jp/netstore/pd-book_26001244.html
野口英世の人生を描いた本ですが、子供のころに読んだ英雄伝記とはまるで違った人物像で、驚きました。
ものすごい野心家で、浪費家、嘘つき、大ぼら吹き。
でも、どこか憎めない可愛い愛すべき人。
サンかランも、Verat,は、一緒にいて楽しい人だと書いています。
“おしゃべり、歌い、冗談を言い、陽気である。また、神とつながっているというような愉快なファンタジーを思い描いていた利もする。”
「遠き落日」一度読んでみて!