ホメオパシーを学び始めた人が、まず最初に勉強するレメディの一つです。
このレメディは、ライコポディウムの胞子の部分を原料とします。
ライコポディウムは、北半球の山岳の湿地や森に生育する常緑のシダ植物です。
日本でも、古代から親しまれてきました。
和名は、「日陰の蔓」。
日当たりの良いところを好む植物ですが、なぜか、「日陰の蔓」。(笑)
清浄なものとして古くから神事に使われてきました。
巫女さんの髪飾りに。
お正月の神社でも使われています。
「古事記」にも登場します。
天照大神が天の岩戸に隠れ、世の中が光を失った時、天鈿女命(あまのうずめのみこと)が素肌にライコポディウムをまとって、踊りました。
その騒ぎに、岩の隙間が開き、天照大神は、岩戸からでてきて、世に光が戻ったというお話です。
今では、地面を這うように繁っていく姿をしていますが、古生代の後半頃(石炭紀)には、天をつくリンボクという大木だったそうです。リンボクが化石化して、石炭の原料となりました。
ですから、Lyc.の人は、「俺のご先祖様は、すごかったんだぞ!」という優越感と「でも、今の僕は、こんなにちっぽけ・・・。」という劣等感の両方を持ちます。
そうった二面性も、このレメディの特徴です。
レメディの原料とするのは、夏に切り取った穂から集めた「胞子」です。
この胞子を「石松子」といいます。
この黄色い粉は、水分をはじき、炎に入れると、一瞬の閃光が走ります。
昔は、花火の材料に使っていたこともありました。
石松子には、燐、硫黄が含まれています。
燐も硫黄も花火の原料として使われてきたものです。
「石松子」に含まれているのは、燐、硫黄以外では、酸化アルミニウム、シリカです。
なんと、有名な鉱物レメディばかり。
Alum.(アルミナ)Sil.(シリカ)Phos.(フォス)Sulph.(サルファ)。
周期律表でみると、アイデンティティ、エゴ、人間関係をテーマとする第三シリーズのレメディが並びます。
Lyc.は、植物レメディですが、鉱物レメディの人に見えることも多いのですが、こういったところからきているのかもしれません。
これらのレメディの中では、特に、シリカの人と間違えやすいです。
どちらも、あまり頑健な人ではありません。
シリカは、水晶のように純粋な人。
頭脳は明晰で、コンピューターに強い人。
コンピューターの原料は、シリコンでできています。
水晶は、純度を保つために、異物を排除します。
異物を排除する傾向のある人は、栄養もうまく取り込めません。
やせっぽちで、弱い人です。
Lyc.も、古典的なマテリアメディカ“Allen’s Kyenote”には、一行目に、
For persons intellectually keen, but physically weak.
知的には鋭いが、身体的には虚弱な人のために。
と、あります。
どちらも、恥ずかしがり屋で、自信がない、知的で、ソフトで、弱弱しいタイプです。
ライコポディウムの胞子、石松子を顕微鏡で見ると、
硫黄の結晶と、似ていませんか?
Lyc.は植物のSulph.とも言われています。
どちらも「エゴ」のレメディで、名声、エゴ、自己イメージへの強い欲求があります。
ただ、Lyc.は、Sulph.のように単純ではありません。
私は、インドの巨匠ラジャン・サンカランのセミナーに参加したとき、彼が、Lyc.の心理について、「小さな胞子が、空気中を漂っているときの気持ち。」と言ったことが心に焼き付いています。
「僕は、どんなところに落ちるんだろう?」
生育しやすい環境かも知れない。
光も、水もない、冷たいところなら、育つことはできないな・・・。
でも、条件さえよければ、繁茂して、また、たくさんの子孫を増やしていけるかもしれない。
胞子は、限りないポテンシャルをひめた存在でありながら、運を天に任すような存在でもあります。
野心はあるが不安もいっぱい。
誰かに、そばにいて欲し人です。
そばにいて欲しいけれど、責任はとりたくない。
自分より弱い人には、強く出るが、相手が強いとわかれば、下出に出る。
植物レメディの柔軟さともいえますが、嫌な奴かもしれません。
処世術にたけていて、成功する人も多いでしょう。
自信のなさと慎重さから、男性なら結婚が遅いといわれています。
そして、パートナーとして選びがちなのが、マイルドで支配されやすいPuls.の女性。
Lyc.とPuls.は、レメディを選ぶときにも、相性の良い関係とされています。
ホメオパシーでは、こういったレメディ同士の関係性を“Complementary”(相互補完的な)といいます。
これとは逆に相性が悪く、続けて飲んではいけない関係もあります。
身体症状としての一番の特徴は、消化器の問題です。
消化力が弱いのに、口を喜ばせることが好きな人。
症状としては、鼓腸。
お腹が張って、ゲップやおならをよくします。
上半身はやせて、お腹が出てくる洋ナシ体型。
マテリアメディカFocusでは、
“INFLATION(ego,stomach,abdomen)”インフレーション(エゴ、胃、腹部)
という一行があります。
物価が上がるという意味で、インフレーションというがありますが、
Lyc.の人をよく表現した言葉だと思います。
・自信がないのに、偉そうにする。
・自分をちっぽけだと思って、大きく見せたい人。
・自信のなさを隠して、必死で努力する。
・見栄っ張りかもしれない。
・消化力が弱くて、お腹が張る。
臓器としては、胃や肝臓。
右側の臓器です。
Lyc.の人は、右側に症状が出やすいです。
身体は右ですが、タイプ的には左脳型。
理知的に考える人です。