ホメオパシーを学び始めた人が、まず最初に勉強するレメディの一つです。
このレメディは、白燐を原料とします。
「燐」は、文字からわかるように、「火」に関係が深い物質です。
昔、土葬だったころ、墓地では、人魂が浮かんだようですが、これは、人体に含まれる燐が燃えていたのだったということです。
空気中におくと、自然発火して、なくなってしまいます。
自然発火するので、暗闇でも光ります。
フォスフォラスというのは、ギリシャ語の「光をもたらす」という意味から名づけられました。
Phos.の体質の人も、光をもたらしてくれるような人です。
その人がいるだけで、その場に明かりが灯るような。
雰囲気を明るくしてくれるムードメーカー。
燐は、単体では存在できません。何かと結びついて化合物として存在します。
Phos.の人も、常に、誰かと結ぶ着くことを必要とします。
仲間が欲しい人。
子供であれば、「クラスで仲良しのお友達は誰?」と聞かれたら、「クラスのみんなが仲良しの友達!」って言うようなタイプです。
仲間とうまく交流できていれば、明るく輝いていますが、なにかで、うまく交流できなくなると、急に暗くなって、引きこもってしまうような人でもあります。
Phos.の人は、「交流」という「軸」をもっていて、明るく輝いていたかと思うと、暗く沈んでしまうこともあります。
ホメオパシーでは、これを、“Polarity“ 極性 といい大切な概念の一つです。
燐は、空気中で自然発火するので、水につけて保存します。
Phos.の人も、水を必要とします。
とても喉が渇き、冷たい水を冬でもごくごく飲むような人。
渇きと共に、身体の中心に熱感を持っていて、冷やしたいという欲求もあるようです。
水を求める「火」のような人と言えば、Sulph.ですが、この二つのレメディには、共通したところがいくつかあります。
Sulph.の人も、喉の渇きを持ち、冷たいものをごくごく飲みたがります。
そして、どちらも、社交的です。
燐も硫黄も、かつて、花火の原料にもマッチの原料になっていました。
焼けるような痛みや感覚を持っているのも共通項です。
どちらも、エネルギッシュですが、枯渇しやすい人でもあります。
Shulph.が空腹に弱いのは有名ですが、Phos.の人も、低血糖になりやすい。
そして、Phos.の人は、睡眠を必要とします。
疲れやすいのですが、少しお昼寝すると、また、よみがえるような人です。
同じ「火」のイメージでも、Sulph.の人は、「火山」のような、力強く、粗い感じ。
Phos.の人は、「花火」のような、繊細で、弱い感じだといえます。
原料となっている白燐の毒性は強く、昔、燐を使ってマッチを作っていた時代には、マッチ工場で働く人の多くが「燐顎」という顎の骨が壊死して腐り落ちるような症状に苦しんだそうです。
「マッチ売りの少女」というアンデルセンの童話ができた時代の話です。
人体においては、骨と歯の大部分に燐が含まれています。
Phos.の人も、骨や歯に問題を持ちやすい人です。
古典的なマテリアメディカ“Allen’kyenote”では、
・成長が早すぎる若者、猫背。前かがみで歩く(Sulphと同様)。
“Boericke”のマテリアメディカでは、
・骨の破壊、特に下顎と脛骨。
・背が高く、狭い胸、痩せている。
とあります。
いわゆる、結核体型です。
Phos.の人は、呼吸器に問題がある場合が多いです。
燐は、筋肉、神経、脳にも多く含まれています。
食べ物をエネルギーに変換するときになくてはならない物質だからです。
筋肉に存在するATP(アデノシン三リン酸)がADP(アデノシン二リン酸)に変換する時にエネルギーを放出します。
このエネルギーで、私たちの身体が動くのです。
このように、燐は、エネルギー循環にかかわる存在です。
これは、Phosの人の特徴に反映しています。
エネルギッシュだけど、エネルギーが枯渇しやすい。
補給するとすぐに元気を取り戻す。
元気いっぱいなのに疲れやすく、少し昼寝をするとよみがえる。
カロリーの多いものを欲しがり、空腹で弱ってしまいます。
低血糖にもなりやすいです。
燐は肥料としても有名です。
三大肥料の一つです。
葉や茎を豊かに茂らせるのに必要なのが窒素(N)。
カリウムは、根を張らせるのに必要なのがカリウム(K)。
花を咲かせたり実を結ばせるために必要なのが燐(P)。
根や葉、茎ではなく、燐は、「花」や「実」の成長を助けます。
ここにも、私はPhos.らしさを感じます。
どこか華やかさがあり、楽しさや、おいしさのある人です。
また、燐を含有する良質の鉱石は、はるか昔の先史時代に海に堆積した生物の死骸や、古代の海鳥の群生地に積まれた、膨大な量の糞尿の堆積物から生成されたといわれています。
動物の死骸や糞尿から燐という鉱物ができるなんて・・・・。
大自然の、動物、植物、鉱物(三界)の垣根を越えた循環を感じます。
Phos.の人は、チャーミングで、勘がよく、セクシャリティの強い人でもあります。
ファタックのマテリアメディカの精神症状は、
・好色。裸になって性器を露出する。
・興奮しやすい。怒りやすい、むきになる、そしてそのことで苦しむ。
といような記述から始まります。
動物レメディの代表格Lach.(ブッシュマスター)とも共通の精神症状
・おしゃべり。外国語などの習得が得意。
・千里眼的
・頭の回転・ものごとの理解が早い
があります。
燐は、鉱物レメディなのに、動物的な要素も強く持っています。
動物の身体からできた鉱物だったということがその背景にあるからだといわれています。
周期律のテーマから眺めてみても興味深い発見がいっぱいです。
Phos.は第3シリーズのレメディです。
このシリーズは、アイデンティティ、エゴ、ケア、などが中心的なテーマです。
ここには、初級コースで勉強する基礎的なレメディが並びます。
Nat-m.(塩化ナトリウム)Mag-c.(炭酸マグネシウム)Mag-m.(塩化マグネシウム)Alum.(アルミナ)Sil.(シリカ)Phos.(燐)Sulph.(硫黄)。
最初の二つ。
ナトリウムとマグネシウムは、まだ、アイデンティティが確立されていません。
自分が全くないので、誰かに全面依存したいのがナトリウムです。
マグネシウムは、もう少し進んで、サポートを欲しがります。
サポートしてくれたら、私はうまくやっていける、という人。
アルミナは、さらに、進んでいるのですが、どう進めばよいのかわからなくて混乱している人。
シリカまで来ると、アイデンティティは、確立されてきます。
そして、確立したイメージに固執して、柔軟性にかける状態。
燐になると、アイデンティティは成熟し、自分を表現できるまでになります。
「私とあなたは違う。」ということを経験し、孤独を感じて友達を探しに行くことになります。
硫黄は、アイデンティティがさらに発展し、「私は、あなたより、賢い。あなたは馬鹿である。」というところまで来ます。
不健康な状態であれば、怠惰で、自分の世界で満足してしまいます。
自然界でのあり方。
人間とのかかわり。
人体での役割。
そして、周期律表のテーマから。
これらからみた「燐」という物質のイメージが、プルービングや臨床経験から書かれたマテリアメディカのPhosのイメージに重なります。
これが、ホメオパシーを学ぶときに一番面白いと感じるところです。
しかも、この情報は、私たちを苦しみから解放するための知識ともなるのです。