サンシャイン!!2期感想「#9 Awaken the power」篇 | 肯定ログ

肯定ログ

好きなものは好きと言います。肯定ペンギンなので。備忘録。

  

 貴石から貴石へ送る愛のうた。

 前回の記事で書いたこれ、あとで気がついたのですが5・7・5調になってました。川柳かな?

  

 劇場版だと言われたら信じてしまいそうなほどのスケールとクオリティ。

 

 #9「Awaken the power」、とても良かったです。

 

 今回も感じて想ったこと、文字通り「感想」を書いていきたいと思います。

 

 

 

  • あの日観た星のように

 #8「HAKODATE」にて、一度も「会話」をしているところが描かれなかったルビィと花丸・善子がついに「会話」します。

ライブ?
ここで?
うん…理亞ちゃんと一緒にライブをやって…見せたいの。
聖良さんと、おねぇちゃんに。
できるの?
わからないけど…でも、もし出来たら理亞ちゃん元気になってくれるかなって。
準備とかは?
それは…
面白そうずら。
そうそ…え?
マルも協力するずら
本当!?

 

 なんの躊躇いもなく「面白そうだから」と即答する花丸。

 

 ここのやり取り、好きです。

 

 1期「#4 ふたりのキモチ」にて、花丸が千歌から言われた「できるかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ」という言葉が花丸の中で生き続けているんだなぁと。

 

 

 理亞と合流し、曲作りの打ち合わせを始めます。

 

 「友達の友達は友達」と思えるような全人類皆兄弟思考の人間だったら嬉しいかもですが、少なくとも理亞は「友達の友達は他人」思考なようで、この状況は結構キツイものがあるでしょう。すごくわかるぞ…!

 

 とは言え、会話を進めていくうちに以外な一面を知り、共感する部分もあってか心を許していきます。

 

 こういう時の津島善子という存在は非常に心強いです。

 堕天使を出したりイジられ上手だったり、善子がいてくれる限り極端に場が重くなることが無いのです。

 

 

 打ち合わせをしていると梨子から呼び出しがかかり、1年生3人はAqoursへ合流します。

 

 ところがここで花丸から「もう少しここに残る」という提案が。

 

 ルビィが関わる時の花丸の行動力には眼を見張るものがあります。

 親友のためなら何だってしてあげたい、ということなのでしょう。

 

 せっかくだから自分たちも残ろうかと言いかけるダイヤにルビィがやんわりと、確固たる拒否で返します。

 

 昨日は涙ながらに「置いていかないで」と言っていたのに、今日になったら「ここに残る」なんて言われた時のダイヤの心情、とても穏やかじゃあないでしょう。

 

 

 理亞の部屋へ場所を移し、曲作りを始めます。

 

 「#2 雨の音」にてみんなで曲を作った経験があったおかげか、「すごくいい」歌詞ができます。

 過去の経験は無駄じゃない。全てに意味があるんです。

 

  あとは無事にエントリーできるかどうか、という話になります。

 

 「無事に」というのはプレゼンテーションの意味もありますが、まず「知らない人と話す」ことが大変なルビィと理亞。

 

 ビクビクと怯える2人を善子と花丸が支えてくれます。

 

 

でもさ、自分たちで全部やらなきゃ。
全て意味がなくなるずら。

 誰かが不安なときには誰かが支えてあげる。

 

 「#7 残された時間」にて、コンビニへ買い出しに行った時にルビィが星を見上げながら言った「支え合ってる気がする」という言葉。

 

 あの時星を見ていた3人が理亞をも巻き込んで支え合っている光景、素晴らしい。

 

 

 

  • 姉がくれたもの、姉に送るもの

 

 

 面接会場に入ったものの、やっぱり怖くなって、つい「おねぇちゃん」がこぼれてしまいます。

 

 そこで脳裏をよぎったのが、遠い昔の記憶から今までの「ダイヤから貰った勇気」の記憶。

ルビィは強い子でしょう?ほら、勇気をお出しなさい。

 

 千歌たち2年生のライブを見せ、より身近な存在になったスクールアイドルを見せて、「浦の星女学院スクールアイドル部」という舞台を作らせ、ダイヤなりに「スクールアイドルがやりたい」というルビィの本心に発破をかけていたのかもしれません。
 

 東京のイベントで折れてしまった時には絶妙なタイミングで支えてくれる姉。

 

 困らせてしまうと分かっていても出てしまった「置いていかないで」というワガママにも取り合わず、前を向くための言葉をくれていました。

 

 そしてこのルビィの回想で、長らく引っかかっていたものを解くヒントを得られた気がしました。

 ルビィからダイヤへ「渡している」シーンなのに「勇気を貰っていた」という回想は一体なぜなのか。

 

 このシーンは1期屈指のシーンですが、ダイヤの返答が描写されていないのがずっと気になっていました。

 

 ダイヤ自身の「また大好きな仲間や妹とスクールアイドルができる」という願いが叶う純粋な嬉しさが半分。

 

 引っ込み思案だったルビィが、自信を持って「自分はスクールアイドルだ」と胸を張れるようになったという誇らしさがあったからこその安堵が半分、という具合なのではないか。

 

 僕は自立するものを「見守る」側に立ったことがないので、1期時点でダイヤが返答していたとしても真意は掴めなかったでしょう。

 この答えはきっと、僕自身が何かを「見守る」側の人間になった時に分かる気持ちなのではないだろうか、と思いました。人生の課題です。

 

 

 話がそれました。窮地での回想は覚醒の王道フラグです。

 

 ついにルビィは「ルビィ」から「わたし」になります。

 

わたしたちはスクールアイドルをやっています。
今回はこのクリスマスイベントで遠くに暮らす別々のグループの2人が手を取り合い、新たな歌をうたおうと思っています。
大切な人に送るうたを。

 #8、#9 のテーマは「自立」や「巣立ち」であると見て間違いないですが、それらは「他人の力を借りてはいけない」わけではないということ。

 誰の力も一切借りることなく、完全に自分ひとりで生きていける人間なんて存在しません。

 

 伊波杏樹さんが1stライブのメイキング映像で口にしているように、「不安になったら目を見て」生きていけばいいんです。

 

 

 ルビィと理亞は面接で「ぜったい満員になる」と大見得を切ってしまったようですが、今やラブライブの優勝候補となったAqoursと北海道では圧倒的な実力があると評されているSaintSnowのコラボレーション、盛り上がらないはずがないですよね。

 何より、SaintSnowプレゼンツのユニットライブが発表された今、僕たちはそれを実感しています。

 

 そしてルビィは鞠莉に力を借り、ダイヤを再び函館へ向かうように仕向けます。

 

 ダイヤが函館に到着すると、どうやら函館山へ来るように連絡があったようで、そこで鹿角聖良と偶然遭遇します。

 仕組まれた偶然は必然。必ず巡り合う運命だったこと、満天の星空も相まって完全に【GALAXY HidE and SeeK】です。ありがとうございました。

 

 

 ダイヤと聖良の姉ペアが山頂に到着すると、ルビィと理亞の妹ペアが待っています。

 

 そして、何かをくれました。

 

クリスマスプレゼントです。
クリスマスイブに、ルビィと理亞ちゃんでライブをやるの。
姉様に教わったこと全部使って、私達だけで作ったステージで。
自分たちのチカラで、どこまでできるか。
見て欲しい。

 歌詞か手紙か、何なのかは分かりませんが、僕は「招待状」だったらいいなぁと思っています。

 ライブを見るには基本的にチケットが必要ですし、この時点ではダイヤと聖良の姉ペアは「お客様」です。

 

  「自分たちだけで出来る」ということを証明したくて思いついた計画、集大成を見せることが最大のプレゼントです。

 つまるところ「私たちがクリスマスプレゼント」というヤツです。

 

姉様。
おねぇちゃん。
私たちの作るライブ、見てくれますか?

もちろん。
喜んで。

 

 「クリスマスイブにライブをやる」と言っているので、このとき見せたものは「最速先行お披露目」というやつでしょう。

 オタクをやっていると最速先行お披露目のプレミア感はとても分かりますし、何より「スクールアイドルが大好き」なダイヤと聖良から観ても嬉しいもの。

 

 黒澤ルビィと鹿角理亞だからこそできた、姉へのプレゼントだったと言えるでしょう。

 

 

 

  • 雪の女王

 SaintSnowの衣装を見て、まず淫靡な悪魔的であったり、女王のようなイメージを感じました。

 妖艶なフォルム、頭にはティアラ。

 

 SaintSnowの「雪」と「女王」。

 

 アンデルセンの童話、「雪の女王」を思い出しました。

 

 

 この「雪の女王」のあらすじというか、要点だけをものすごくざっくり書きます。

 

 ある日、悪魔は不思議な鏡を作ります。 

 その鏡は「どんな美しいものでも醜く映してしまう」魔法の鏡。

 悪魔はうっかりこの鏡を割ってしまいます。この鏡はたとえどれだけ細かい破片になっても、もとの効力を失うことはありません。

 

 カイという男の子とゲルダという女の子がいて、彼らは兄妹同然の仲良しです。

 ある時、カイの目と心臓にこの「悪魔の鏡の破片」が刺さってしまいます。

 

 カイは雪の女王と出会い、女王の城へ連れて行かれます。

 女王は大変美しく、カイはゲルダと過ごしていた日々のことも忘れてしまいます。

 

 ゲルダは山賊に襲われたりしながらも色々な人の力を借り、女王の城にカイを助けに向かうことになります。

 ゲルダは城へ向かう途中、とある王子と王女に出会い、馬車を借りて雪の女王の住む城へ向かいます。

 

 物語の結末は書きませんが、100ページくらいだったと思うのでぜひ読んでみてください。

 

 この「雪の女王」と#8・#9には密接に関係があったりオマージュがあるとは言わないまでも、ほんのり「雪の女王」の「要素」を匂わせるものがあると感じました。

 

 冒頭に登場する「悪魔の鏡」。

 黒澤姉妹と鹿角姉妹は鏡に写したかのようにとても良く似ています。

 この「鏡」が割れてしまうのが、SaintSnowの失敗の瞬間。

 この時、ルビィの瞳に鏡の破片が突き刺さります。

 

 次にルビィは理亞と出会い函館に、つまるところ「雪の女王」の根城に残ります。

 そんなルビィを迎えに行くため、ダイヤは鞠莉から馬車(飛行機)を借り、雪の女王の城へ向かいます。

 

 童話の本編にて登場する不思議な家の場面にて「その家の窓は、赤や青、黄色の窓ガラスだったので、お日さまの光はおもしろい色にかわっていた」という場面があるのですが、【Awaken the power】のライブパートにてそれを示唆するような演出があったこともあり、童話「雪の女王」との関連付けてみても面白いかな、なんて思います。

 

 

 

  • 水と雪、宝石と結晶

 ライブパートの話題ついでにもうひとつ。

 AqoursとSaintSnowのコラボユニットの名前は「Saint Aqours Snow」.

 ド直球ですが、とてもいいと思います。

 

 ライブを始める前、小雨が降っています。

 

 

 ルビィと理亞が手を掲げ、「ComeOn! Awaken the power yeah!」の掛け声とともに雨は雪に変わります。

 

 水と雪がコラボしていたSaint Aqours Snowにピッタリだと思いませんか?

 雨はRainだろ!って言うのはロマンがないのでやめてください。

 

 【Awaken the power】で彼女たちが見せてくれた、隠されたチカラ・新たなる可能性・新しい世界。

 

 先ほども少し触れましたが、SaintSnowプレゼンツのユニットライブなんて「新しい世界」そのものです。

 

 

 アニメ本編では敗者として描かれたSaintSnowですが、彼女たちや他のスクールアイドルにも人生があって、矜持があって、物語がある。

 当初、理亞にはあまりいい印象を抱いておらず、「スカしたヤツ、なんかいけ好かないヤツ」というイメージでした。

 

 #8・#9を観た今ではもうそんなことは言えません。鹿角理亞のファンです。

 

 「知ることは好きになること」の第一歩、というのが個人的な持論です。

 

 Aqours 1stライブにて伊波杏樹さんが口にした「Aqoursをもっと知ってもらいたい」という言葉、これはAqoursだけじゃなくてSaintSnowもずっと思っている気持ちのはずです。

 そんなSaintSnowを、鹿角理亞を好きになるためにこの物語を作ってくれた、「知る」きっかけを作ってくれて、ただなんとなく散っていったライバル的なキャラで終わらせるのではなく、SaintSnowを愛せるようになったことに感謝したいです。

 

 

 Saint Aqours Snowの歌声はものすごく相性がいいと感じました。 

 Aqoursは声質が高めですがSaintSnowは低めの声質なので、お互いがお互いを補い合っています。

 

 お互いに補い合うというのは歌声の話だけではありません。

 宝石の瞳の色は「緑」。

 雪の瞳の色は「マゼンタ」。

 

 この2色は「補色」の関係にあります。

 

 補色とは「互いの色を最も目立たせる色の組み合わせのこと」です。

 

 #8・#9を観ていたら嫌でも分かることですが、お互いを最も引き立てていたからこその素晴らしい物語です。

 よく2話でこれだけまとめたものだと手放しで絶賛したいです。

 詳しく描写されることのなかった鹿角姉妹に対してもこんなに感情を入り込ませることが出来るのは、黒澤姉妹がいままで積み重ねてきたかけがえのない日々があったから・それを僕たち視聴者は知っていたからですね。

 

 

  • ルビィの輝き

  

 描かれなくても物語は存在する、ということでひとつ気がついたことがあります。

 たびたび「ルビィは台詞が少ない、不遇」などと言われていたことに疑問を持ち続けていました。

 

 ルビィは3年生以外のメンバーで一足早く「3年生の最後」を考えていた人間です。

お姉ちゃんたちは、3年生は、これが最後のラブライブだから。

だから、だから──
ぜったいに優勝したい。

  普段は自分の意志をハッキリと表示することがないのがルビィ。

 #8では、姉のことを考えて口数が少なくなってしまいました。

 

 もしかしたらルビィはずっと、ダイヤがAqoursになったときからずっと、画面に写っていなかったり描写されていなかったとしても、ずっとあの寂しい眼差しをダイヤに向けていたのではないだろうか。

 ともあれば、これは不遇でもなんでもなく「黒澤ルビィ」を最大最高に活かした「優遇」です。

 

 

 ルビーが語源となった「ルビ」という用語があります。

 漢字に並び立つふりがなのことですね。

 

 「黒澤ルビィ」という人物もまた、誰かと並び立つことで真価を発揮す人物だと思うのです。

 花丸であったり、ダイヤであったり、理亞であったり。

 ルビィと並び立った人間もまた同じように真価を発揮しているのです。

 

 「情けは人のためならず」ということわざがありますが、ルビィはこれでしょう。

 #8・#9では理亞を助けた形にはなりましたが、その根幹にあるものは「自分のため」です。

 

 誰かのために行動することが自分のためになる、自分のために行動することが誰かのためになる。

 これがルビィの魅力であり、ルビィの輝きです。

 

 1期#4「ふたりのキモチ」で花丸が語った「中に詰まっているいっぱいの光、世界の隅々まで照らせるようなその輝き」。

 

 

 

 その輝きが雪のかけらをも照らしてあげる、とても暖かく素晴らしいお話でした。

 

 

 貴石から 貴石へ送る 愛のうた

 照らし給うは 雪のひとひら

 

 

 

 お姉妹(しまい)

 

次回、「#10 シャイニーを探して」