COVID19緊急事態宣言下における拘置所での家族との面会 | 空気を読まずに生きる

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弁護士 趙 誠峰(第二東京弁護士会・Kollectアーツ法律事務所)の情報発信。

裁判員、刑事司法、ロースクールなどを事務所の意向に関係なく語る。https://kollect-arts.jp/

COVID19緊急事態宣言が出て以降、東京拘置所にはこのような貼り紙がされている。

そして入口は施錠されており、屈強な刑務官が立っていて、来た人に対して「弁護士バッジか身分証を見せてください。一般面会(注:弁護士以外の家族や友人等の面会)は中止しています」と言い、拘置所に収容されている人に会いに来た家族はうつむきながら帰っていく。

 

このような東京拘置所(法務省)の一般面会一律禁止の対応については、法律の根拠はない。

拘置所における一般面会等のルールを定めた刑事収容施設法という法律にも、拘置所に収容されている未決囚(これから裁判を受ける人=無罪推定がはたいらいている人)の面会を一律に制限できるなどという規定は存在しない。

 

確かに感染拡大を止めるために様々な工夫は必要であろう。しかしだからといって何していいわけでもない。

まして、強制的に人の自由を奪い、牢屋に入れられている人に対して、法律の根拠なしに家族との面会を一切禁止するということが許されるのか。

(ちなみに現状は拘置所に収容されている人は外部と電話することもできない。ましてZOOMやSkype、Googlemeetなどは言わずもがな)

 

ということで、このような拘置所の対応(=門に貼り紙をして、鍵を閉めて、一般面会を一律に遮断する対応)は違法だということで、このような対応を止めることを求める裁判を仲間たちと起こした(拘置所の対応(=処分)の取消訴訟と執行停止申立て)。

 

これに対して、東京拘置所の言い分は、

門に貼り紙をして、鍵を閉めているのは、「不要不急の面会はご遠慮下さい」というポーズであり、一律禁止していない。面会を遠慮いただくようお願いしても引き下がらない方には、面会が必要な事情を聞いて、緊急性、必要性が高いと拘置所が判断した面会については認めている。

そして、現にこのような個別判断で一般面会を認めている。

というものであった。

私たちの主張は、このような貼り紙をして、ホームページ等でも「一般面会禁止」と告知して、入り口を施錠して刑務官を立たせているという対応は、それ自体「面会拒否処分」にあたるというものであった。だからこれを取り消せ、いったん止めろ、というものであった。

が、裁判所はこのような拘置所の対応を踏まえて、貼り紙をして、入り口を施錠して刑務官を立たせて、面会に来た人に面会を遠慮してもらうように言って帰らせる拘置所の対応は「面会禁止処分」ではないとした。

 

つまり、裁判所は、このような貼り紙とか入り口で施錠されているとか、刑務官に追い返されるだけではなく、それであきらめずに拘置所に対して面会の申請をきちんとした上で、拘置所から正式に拒否処分をもらってから出直してこい、と言ったのである。

 

さらに裁判所はこのような判断に加えて、拘置所の中にいる人が家族と面会できないことが「重大な損害」にあたるかどうかについて、

・そもそもこのような拘置所の措置は、被収容者の安全の維持と家族の安全の確保のための措置

・中にいる人は弁護士とは面会できるんだから、家族と会えなくても互いの状況を伝えてもらえるから問題ない

・手紙は出せる

といった理由から、家族と面会できないことは「重大な損害」ではないとした。

 


 

この決定については当然言いたいことが山ほどある。

拘置所に貼り紙をして、入り口を施錠して、面会したくても中に入れさせてもらえないようにしていながら、「それはあくまでお願いであって、一律禁止処分ではない」なんてことが、普通の市民に通用するわけねえだろ!とか。

家族とのコミュニケーションをなんだと思ってんだ。家族とのコミュニケーションは弁護士を経由すれば問題ないとか、お前の家族はそれでいいのかもしれないが、そんなもの普通の市民に通用すると思ってんのか!とか。

 

それはそれで、別途対応を考えるが、私が今回これをブログに書こうと思ったのは、拘置所(法務省)は決して一般面会を一律禁止しているわけではないと裁判で主張し、裁判所がそれを受け入れて決定を出したという事実を広めるためです。

 

先の見えない感染症拡大のこのご時世でも、家族とのコミュニケーションのかけがえのなさは何も変わらない。

まして、強制的に身体を拘束されている人を心配し、中の人も外の家族の安否を心配するコミュニケーションは本来誰にも止められないはず。

安倍首相は「GWはオンライン帰省を!」と言った。

拘置所にいる人も家族とオンライン面会できるならば、対面での面会の中止をすることもありえるかもしれない。

しかし日本の拘置所には今日の時点ではそのような設備は何もない。電話すらできない。

だとしたら、拘置所に会いに行くしかない。

拘置所(法務省)は一律禁止していないと言っているので、面会に行って、屈強な刑務官に対して2メートルの距離を保って「家族と会わせてくれ!」とぜひ言ってもらいたい。拘置所は拒否できないはずである。

 

今回の決定文のPDFを公開するので、ぜひこれを持参して、マスク・ゴーグル・手の消毒・ソーシャルディスタンスを保って拘置所に面会に行ってもらいたい。

 

面会制限「合理的」 拘置所の新型コロナ対策―東京地裁(時事通信)