保育士を倍増し、子育て中の夫婦の重圧を軽くせよ! | MATTのブログ ~ 政治・経済・国際ニュース評論、古代史、言語史など ~

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元新聞記者。 アメリカと日本を中心にニュース分析などを執筆します。

少子化は、いまや日本の将来を左右する大きな政治課題です。保育園を少しずつ増やしていると言っても、子育てのさまざまな重圧を両親(とくに母親)が過重に引き受けなくてはならないという現状に対して、子育て中の親の間で引き続き不満は大きいものがあります。出生数を増やす方策として、一つ確実に言えることは、子育てする夫婦のさまざまな重圧を、政府・地方自治体が分担することで、軽くしてあげる必要があるということです。

 

保育園の延長保育やゼロ歳児保育も、徐々に増えてきているとは思います。けれども、それでも自分一人ではなにも出来ず、2時間置きに授乳が必要な乳児や、目を離せばどんな事故が起きるか分からない小さな子供をつきっきりで面倒を見るのは、非常な労力であり、だれがやっても大変なことです。両親が育児に参加したとしても、共働きであれば大変なことには変わりありません。ましてや、シングルマザーやシングルファーザーだったらどうなるか、母親が障害を持っていたらどうなるか、そう考えると、本当に子育て世代は大変です。

 

「そんなの当たり前じゃないか」「手がかかるのが子育てというもの」という声があるのも承知していますが、いまは生活が全体として便利になり、若者の意識も個人のライフスタイルを重視して生きたいというようになっています。ひと昔前とは時代が違うのです。「どうして私だけがこんなに義務が多く、自由が少ないの?」「だったら僕たちは、子供を持たない選択肢を選ぶよ」という声が上がるのも、無理のないことです。

 

現在、法律上は子供の養育は両親の義務です。国に義務はありません。だから事実上、親ばかりが苦労している。しかし、もっと社会全体として子供を育てるというシステムになっていかねばならないでしょう。そういう声も、もちろんこれまでも出ていました。けれども、国や自治体がやってきたことは、せいぜい保育園の増設、保育時間の延長、それに雀の涙程度の子育て支援金の配布ぐらいです。

 

産業界に目を転じてみると、人工知能(AI)とロボット技術の進展で、2045年にはこれまで人間が行ってきた仕事の8割が消失すると推測されています。車の自動運転技術でタクシー運転手・トラック運転手は不要となり、工場での製造過程も自動化され、経理事務やそのほかの書類事務も機械化し、販売員・営業マンの多くもネット取引のために不要となり、工場労働者だけでなく銀行員、会計士、税理士、司法書士、行政書士、証券マン、一般公務員などの多くも職を失うことになります。

 

それでは人はいったいどんな仕事をすれば良いのか。まず、経営者や生産管理等の戦略を決定する人々は引き続き必要です。芸術家や歌手、俳優、ダンサー、作家、演出家、書道家などの芸術・パフォーマンス関係も必要です。それに加えて、人間相手の仕事である保育士や教師、看護師、医師、整体・マッサージ、介護士、心理士などは、人間でなければ務まりません。それどころか、サポートを必要とする高齢者が増え、子育てと教育、それに健康の重要性が高まるにつれ、その必要性は減るどころか高まる一方ではないでしょうか。

 

社会のニーズにしたがって、保育士も保育園もますます増えていかなければなりません。けれども、たとえばゼロ歳児保育はまだ全然足りていません。また、現在の公立保育園は、遅くとも7時や8時には閉まってしまいます。日曜・祝日は休みになります。早朝もあいていません。核家族化のため、祖父母の援助を得られない人も少なくありません。このままでは、両親の子育ての負担が大幅に軽減されたことにはなりません。

 

私の提案は、保育士の数を倍増すべきだということです。「保育士をやりたがる人が少ないうえ、保育園の建設もままならないのに、そんなに増やせるわけがない」という意見があるのも承知しています。

 

まず、ゼロ歳児保育を行う施設は、現在のような園庭のある立派な行政施設である必要はありませんので、賃貸ビルの一室でも十分に可能です。そのような場所で保育している無認可保育園もたくさんあります。公民館の一室や子供の数が減っている小学校の空き教室を活用しても良いでしょう。また、5歳児をまるごと、小学校の空き教室に移すというアイデアもあり得ます。空き家の民家を借りたり、買い取ったりしても良いでしょう。鉄道会社の駅舎に保育室のスペースを確保させるというアイデアもあります。これらの方策により、場所の問題はほとんど解決できます。

 

次に、定時以降の夜間保育や早朝保育を導入・拡充し、保育士をシフト交代制にします。そうすることで、両親のさまざまな勤務形態に対応することができます。

 

さらに、保育士を自宅へ派遣する派遣保育システムをつくります。これにより、「その日だけは夫婦で外出しなければならない」「買い物に行くので2時間だけ見ていてほしい」といった単発的な保育需要に応えることができます。

 

保育士がなかなか集まらない問題については、これは給与待遇が悪いからです。地方自治体の民生、衛生部門を除く一般行政職の人数は、全国で55万人です。これらの職員の仕事は、AIの導入や申請や通知事務のオンライン化などで今後、大幅に減らせますから、職員の人数も近い将来、半減させるべきです。そうすれば、保育士の人数(現在45万人)を20万人ぐらい簡単に増やせます。なにしろ、保育士の資格を持っていても働いていない潜在保育士は、全国に75万人もいます。

 

 

これを実現するには、保育園に関する規制を緩和し、自治体の保育サービスに対する根本的な考え方も変えてもらう必要がありますが、そこまで行政がやってこそ、「社会による子育て」であると、胸を張って言えるのではないでしょうか。