生命保険:民事再生手続中の会社の団体定期保険等の更新手続等の対応 | なか2656のブログ

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ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

1.はじめに
 保険会社はさまざまな保険商品を扱っていますが、個人のお客さま向けのいわゆる個人保険以外にも、総合福祉団体定期保険・団体定期保険(Bグループ)などの法人(団体)向けの保険商品も扱っています。これらの法人向けの保険商品は、会社を保険契約者、従業員を被保険者とするものです。これらの団体定期保険は保険期間(=保険契約の有効期間)はいずれも1年で、毎年更新をしてゆく制度となっています。

 このような法人向けの保険商品に関して、もし保険契約者である法人(会社)が倒産処理中であった場合、保険会社として当該会社の総合福祉団体定期保険など(以下、「団体定期保険」とします)の収納保全手続きをどのように行なうべきかは、保険会社内の法人保険を担当する事務部門(以下、「団体保険事務部門」とします)から、法務・コンプライアンス部門にしばしば問い合わせが寄せられる問題です。

2.民事再生法
 わが国の会社の倒産のための手続き方法は複数あります。会社を清算・消滅させる方向に持ってゆく破産法や、会社を存続させ会社を再建・復活させる方向に持ってゆく会社更生法・民事再生法などの方法があります。このなかで再建型の民事再生法は、同じく再建型の会社更生法にくらべて小回りがきき、スピーディーな対応ができる制度なので中堅企業において多く使われている制度です。また、原則として会社・経営陣が民事再生手続き中も会社の業務遂行権や財産管理権を持ち続けることができることも大きな特色です。保険会社の実務対応としても、民事再生法が多い状態です。

3.問題点
 そして民事再生法関連で団体保険事務部門から法務・コンプライアンス部門に多くよせられる質問は、「ある団体定期保険契約の保険契約者である会社が民事再生手続き中であることが判明した。そして現在、当該団体定期保険契約の更新時期が来ている。当該保険契約者(会社)は当該団体定期保険契約の更新を希望しているが、その場合、当該会社の代表者名義で更新手続きを進めてよいだろうか?」という団体定期保険の収納保全に関する内容です。

4.実務対応
 うえですでにふれたとおり、原則として、民事再生手続き中も、会社の財産管理権は会社の代表者がもち続けます。しかしまれに会社代表者に代わって会社の財産管理権を持つ「管財人」(民事再生法64条)が選任されたり、会社財産の管理に関して否認権を有する「監督委員」(同54条)が選任されたりすることがあるので、現在、誰がその会社の財産管理権を有しているかを確認する必要があります。

 そのため、団体保険事務部門としては、その会社の民事再生手続きを行なっている裁判所に対して、裁判所に提出された申立書や裁判所の決定その他の書面を閲覧・謄写させてもらい(同17条)、誰が現在の会社の財産管理権を持っているかを確認し、財産管理権を有する者と団体定期保険契約の更新手続きなどの収納保険事務を行なうべきです。

■参考
・山本晃夫『民事再生法の要点』42頁、81頁
・出口正義・福田弥夫・矢作健太郎・平澤宗夫『生命保険の法律問題』192頁、314頁

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