ST上昇だけではありません | 水戸済生会総合病院 臨床研修ブログ

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70歳代の男性が胸痛を主訴に

近医から急性冠症候群(ACS)の

疑いで、転院搬送となりました。

前医では糖尿病と高血圧、脂質

異常症で処方を受けています。

 

来院後に患者さんの話を聞くと

胸痛は呼吸や体動で悪化する

刺し込むような痛みです。

どうもACSらしくアリマセン。

 

バイタルは血圧146/86 mmHg 

心拍数92 bpm、体温 37.9℃ 

呼吸回数 22回/分、

SpO2 96%(室内気)でした。

身体所見は特記ありません。

 

前医では大動脈解離も疑って

CTを施行していますが、

解離の所見はなく、肺炎像や

胸水も認めません。でも、

少量の心嚢液がみられました。

 

さて、何を鑑別に挙げますか?

考えてみてください。

来院時の心電図を示します。 

ST変化は・・・、はっきり

しないですね。

 

ところが、その約4時間後には

心電図はこうなりました。

この4時間後の心電図では

Ⅱ、Ⅲ、aVFやV2~V6は

来院時のものと比べて、明らかに

STが上昇しています。 

 

発熱と体動や呼吸に伴う胸痛

そしてST上昇、心嚢液貯留から、

急性心膜炎と診断しました。

 

でも、ちょっと待ってください。

 

急性心膜炎の心電図変化は

ST上昇だけでしょうか?

 

ここまで読んでくれたあなたには

是非もう一つ、覚えてもらいたい

ことがあります。

 

急性心膜炎の心電図変化は 

ST上昇(下に凸)に加えて、

PR低下を来すこと覚えて

おきましょう。

 

同時に、PR低下をどうやって

判定するかも知っておきましょう。

(実際に答えられる人は極めて

少ないです)

 

PR低下は、基線から低下

しているかで判定するのですが、

心電図における基線は、

P波とP波を結んだ線になります。

 

 

ちなみにこの症例では、

回復期の心電図は下記のように

なりました。

 

もう一度繰り返しますが、

急性心膜炎の心電図変化は

・下に凸のST上昇

・PR低下

 

急性心膜炎が鑑別に挙がる時は、

ST上昇だけでなく、PR低下も

探し出してください。

(編集長)

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