☆ポストフィナステリド症候群(PFS) | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ポストフィナステリド症候群(PFS)についての総説です。

 

Fertil Steril 2020; 113: 21(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.11.030

要約:前立腺肥大症と男性型脱毛症に用いられるフィナステリド(プロペシア)デュタステリド(アボルブ)は、5α-還元酵素阻害薬(5ARI)で、投薬中も投与終了後にも持続する副作用があり、ポストフィナステリド症候群(PFS)と呼ばれています。1989〜2019年に発表されたPFSに関する250論文を調査しました。PFSは、勃起障害、制欲減退、射精障害、ペニスサイズ減少、女性化乳房、筋萎縮、疲労、乾燥肌、抑うつ、不安、認知障害、自殺企図、男性不妊、白内障、虹彩緊張低下症候群、偽ポルフィリン症、T細胞性急性汎発性発疹性膿疱症など多彩な臨床症状が認められ、現在のところ有効な治療法は見つかっていません。5ARIは、テストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素をブロックするだけではなく、プロゲステロン(P)をジヒドロプロゲステロン(DHP)に変換する部分とデオキシコルチコステロン(DOC)をジヒドロデオキシコルチコステロン(DHDOC)に変換する部分も阻害します。このため、性機能異常のみならず、神経系や精神的な症状が出現します。

 

解説:育毛剤の一部は精子形成に悪影響を与えることがありますので、妊娠を目指している方には望ましくありません。フィナステリドやデュタステリドは、もともと前立腺肥大症の薬剤(5mg/日)として開発され、現在は男性型脱毛症用薬(1mg/日、育毛剤)として広く使われています。DHTが減少すると育毛には良いのですが、精子形成や性機能を低下させます。フィナステリドおよびデュタステリドの服用中止後も持続する副作用として勃起障害やうつ状態があり、PFSと呼ばれており、大きな社会問題になっています。本論文は、ポストフィナステリド症候群(PFS)についての総説であり、30ページにもおよぶ長編ですが、結局のところよくわかっていないので、今後の検討が必要としています。

 

ポイントは、5ARIが①のみならず②③も阻害することに尽きるでしょう。

① テストステロン(T)→ジヒドロテストステロン(DHT)

② プロゲステロン(P)→ジヒドロプロゲステロン(DHP)

③ デオキシコルチコステロン(DOC)→ジヒドロデオキシコルチコステロン(DHDOC)

 

下記の記事を参照してください。

2015.9.20「Q&A825 育毛剤で男性更年期症状

2014.12.17「Q&A544 ポストフィナステリド症候群(PFS)

2014.4.2「Q&A301 ☆ポストフィナステリド症候群(PFS)で悩んでいます」

2014.3.25「☆男性ホルモン関連のまとめ」

2014.3.25「☆妊娠を目指す男性に男性ホルモンはいけません!」

2014.2.24「フィナステリドを使うのはやめましょう」
2013.12.11「Q&A175 薄毛か性機能か」

2013.12.11「☆ポストフィナステリド症候群(PFS)」
2013.8.24「アボルブ、知ってますか?」
2013.8.18「☆プロペシア以外の育毛剤やハーブの影響は?」
2012.10.7「育毛剤の精子(精液)への影響は?」