旧かな習得法4◆[ i ]音の書き方その3 | 日本語あれこれ研究室

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 [ i ]音に関しては今回で終はりなので、言ひ残したことを何点か補足しておきます。語中語尾にあつても「ひ」ではなくて「い」と書く言葉に関してです。

 

 まず、動詞では「老いる」「悔いる」「報いる」の三つ。文語では「老ゆ」「悔ゆ」「報ゆ」なので、これらの「い」はヤ行(やいゆえよ)の「い」です。以前「あいうえおの決まり・2◆旧かな講座」で説明したとほりです。

 また、「あいにく」は「あやにく」が変化したもの、「かはいい」は「かはゆい」が変化したもので、どちらの「い」もやはりヤ行です。この事は「五十音図はすごい◆旧かな講座」にも書きました。

 

 「あるいは」といふ言葉は、旧来から「あるひは」と書く文筆家もゐて表記が分かれてきましたが、「い」は助詞だといふ説から、「あるいは」が正しいとされてゐるやうです。

 もう一つ表記が分かれるのは「はいる(入る)」です。これは「這ひ入る」が転じた言葉なので昔から「はいる」「はひる」両様の表記がありますが、手元の辞書には「はひる」が採用されてゐます。丸谷才一は「はいる」を用ゐてゐるので、どちらでもいいのかも知れません。

 

 形容詞の語尾は、「美しい」などのシク活用は「美し」の延音、「高い」などのク活用は「高し」の変化なので、どちらももちろん「い」と書きます。

 尚、「おいしい」といふ形容詞は歴史的仮名遣ひでも「おひしい」ではなくて「おいしい」です。これは、「よし」と同じ意味の「いし」に接頭語の「お(御)」が付いた言葉です。

 

 残るは延音によつて「い」と書く言葉。

 「ぢいさん」「にいさん」は「ぢぢ(爺)」「あに(兄)」の延音。「ひいき(贔屓)」は「引き」の延音、「むいか(六日)」は「むゆか」が転じたものです。

 

 駆け足でしたが、こんなところでせうか。かうして語源から考へてみると、なかなか興味深いし覚えやすいと思ふのですけど、いかがでせう。