ライオン チャーミーマジカの解析3 処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
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化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

(2015.2.23修正:初出時、アルキルスルホン酸ナトリウムと化粧品で使われる「アルキル硫酸エステルNa」を混同していたので、該当箇所を修正しました)

化粧品犬です。

前々回からライオンののチャーミーマジカの解析をしています。

今回は第3回として、処方解析編をお送りします。

前回は洗浄性能の検証編で、他社製品を圧倒する力を見せたマジカ
現在のライオンの台所用洗剤では、主力の製品であり、一押しの製品でもあります。
詳しくは概要編を参照です。
ライオン チャーミーマジカの解析1 製品概要編
http://ameblo.jp/kesyouhinken/entry-12128918448.html

その処方には、どのような秘密があるのでしょうか?
22011年から始まった、台所用洗剤の全成分表示の恩恵を存分に生かし(^_^;)、その秘密に迫ろうと思います。
洗剤等の成分情報開示 業界自主基準
http://jsda.org/w/01_katud/seibunhyouji_01.html

それでは始まり~。

マジカの処方をライオンの公開ページから拾い、例によって用途別に並べ直して解析して行くわけですが。
(とりあえずボディーソープのフォーマットに落とし込むことにします)
前回のエントリーで洗浄試験でマジカと良い勝負をした、花王のキュキュットレギュラー品の処方と比較しながら解析を行うことにします。
またキュキュットレギュラー品は、既に軽く処方解析もしたこともあると言うこともありますね。

花王 キュキュット ハンドマイルド カモミールの香りの解析2 レギュラー品との比較
http://ameblo.jp/kesyouhinken/entry-12124437218.html
きっちり解析したのは、キュキュットレギュラー品では無くキュキュットハンドマイルドなのですが、まあマイナー商品と比較しても仕方が無いので、そこはやむ無しです。

こんな感じになります。

では洗浄剤のパートから見ていきましょう。
ナジカで一番多いのは、両性洗浄剤の一種のアミンオキシドという成分です。
アミンオキシドは馴染みが無いかもしれませんが、化粧品でも使用できる原料です。
しかし起泡力はあるのですが特に刺激が低い洗浄剤でも無く、あまりに台所用洗剤のイメージが強いため、化粧品では敬遠されている洗浄剤です。2008年のデータですが、アミンオキシドの用途としては、台所用洗剤用途88.1%、シャンプー等用途1.4%となっています。
アミンオキシドの用途や安全性についてのデータは、下記資料が詳しいです。
日本石鹸洗剤工業会 アミンオキシドの ヒト健康影響と環境影響に関する リスク評価結果について(2010)
http://jsda.org/w/01_katud/jsda/jsda_AO_20100531.pdf
20年ぐらい前は、シャンプーだけで無くリンスにも結構使われてましたけどね(^_^;)

アミンオキシドは、マジカの洗浄剤では最も刺激の低い方の成分ですね。
マジカはこれを一番多く配合しているのですが、逆にこれ以外は刺激の強い洗浄剤が多いという構成です。
それに対してキュキュットは、刺激が多少はあるがそれほど高くは無い洗浄剤で全てを構成するという処方です。かなり考え方が違います。
キュキュットにもアミンオキシドは配合されているのですが、それ以外の低刺激な洗浄剤(アルキルグリコシド、アルキルヒドロキシスルホベタイン 、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル)が色々配合されているため、アミンオキシドの配合割合は低くなっています。

次に多いのが、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムです。これはキュキュットでは、名前がポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムとなっているのですが同じ物です。
台所用洗剤は化粧品と違って、慣用名や化学名などを好きに付けて良いことになっているのです(^_^;)
アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムも色々な呼び方があるのですが、化粧品的な呼び方をすると、これはラウレス硫酸Naのことです。
化粧品では、毎度おなじみですね(^_^;)これは刺激は高くはないが、それなりにあり、また脱脂力もそれなりに高い原料です。
ナジカがヤバイのはここからで、その後に配合されているアルキルスルホン酸ナトリウムは、化粧品で使われることもあるラウリル硫酸Naに名前は似ていますが、よより刺激を強くしたような古い洗浄剤です。

さらに、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸という原料も配合されてますが、これは化粧品ではラウリルベンゼンスルホン酸Naに相当する物です。これは、刺激という点では最悪クラスです。ラウリル硫酸Naは化粧品ではまだ見かけなくはない原料なのですが、ラウリルベンゼンスルホン酸Naは、刺激が高すぎるせいか、ほぼ見かけませんね。

キュキュットもそうですが、じつはラウレス硫酸Naが配合されている台所用洗剤というのは結構あるのです(最近調べている限りでは)。しかしそこに、洗浄力は高いけど、皮膚刺激もMAXなラウリルベンゼンスルホン酸Naを併用するという凶悪な処方は、現在では台所用洗剤でもあんまり無いです。
具体的には、ライオンの他の台所用洗剤、例えばマジカ以外のチャーミーシリーズ(チャーミー Vクイック、チャーミー泡の力など)では使われてません。

しかし、良く探したらありました!
凶悪なやつ!それも、ライオン製品に!
過去の遺物であり、古の恐竜というか。今も売ってるけど(^_^;)
それはママレモンです。
ママレモンは1966年(昭和41年)に発売らしいので今年で50周年(^_^;)
さすがに当初と処方は変わっているかもしれませんが、とにかく油汚れに強く、そして手が荒れるという点は定評がありますね。
洗浄力の高さから、洗車に使うとか書いてある記事も多い程です。
研究室にも必ずこれ買いやつがいる(^_^;)

つまり、今のライオンの台所用洗剤で唯一ママレモンの血統を継いでいる(ラウリルベンゼンスルホン酸Naを使用していること)のがマジカです。
そりゃー、油汚れも落ちるけど、手も荒れます(^_^;)
マジカとママレモンは、粘度とか色とか香りとか全く違うんですが、血(ラウリルベンゼンスルホン酸Na)は争えないというやつですね(^_^;)

しかし、さすがに50年分の技術の進歩がマジカにはあって、例えば最初のアミンオキシドで繁キウィ低減させるとか。
また、p-トルエンスルホン酸で系を安定させ、同時に洗浄性も向上させる等は最近の技術ですね。
マジカは今風の処方の中に、ママレモンの血を加えた、と言う感じですかね。

次は保湿剤・香料類のパートをみてみましょう。
溶剤としてエチルアルコールが配合されてるのが手荒れには気になるところなのですが、キュキュットを見るとブチルカルビトールなんて言う超!強力な溶剤が配合されているので、エチルアルコールなんて可愛い物だと言うことになります(^_^;)
ブチルカルビトールは塗料の溶剤とか、お風呂のクリーナーとかに使われる、強力溶剤ですからねえ(^_^;)

あと、スルファミン酸はクエン酸などと同じ感じでトイレの尿石取りなどに使われる酸ですね。ただ、マジカは全体がアルカリ性なので、どこまで洗浄効果が出るかは未知数です。ライオン製品では弱酸性で低刺激のチャーミーマイルドに使用されてますから、それほど悪い成分では無いと思います。

最後に除菌剤とだけ書いてある成分が配合されています。これも台所用洗剤の表示制度の不思議なのですが、どうしても表示したくない成分は、このように役割だけ書いて表示しなくて良いことになっています(^_^;)
なんだそれーと言う制度ですが、そういうルールなので仕方が無いです(^_^;)
キュキュットは除菌剤として硫酸亜鉛を使っており、ライオンもこれを使うっている他製品では、ちゃんと表示しています。
なので、硫酸亜鉛以外の除菌剤を使っているのでしょう。往生際が悪いなあ。

これで終わりです。
当初はこの回でマジカの解析は終わるつもりだったのですが。
ママレモンとの関わりが面白かったので、気が変わってしましました(^_^;)
急遽、ママレモンもドラッグストアで買ってきちゃったし(^_^;)

後少し続けますので、よろしくお付き合いください<(_ _)>