ビジネス必勝のカンニングペーパー  | どんなに難しい契約書でもわかりやすく解説します

どんなに難しい契約書でもわかりやすく解説します

難しい契約書でも、わかりやすく簡単に説明できる、
契約書専門10年以上の経験を持つコンサルタントです。

マヨネーズでおなじみの
キユーピーが、

東南アジア諸国での販売に際して
あの「シンボルマーク」を変える方針だという。

なんと、
人形の背中の羽をなくし、
全身ではなく「顔と手だけ」
にするというのだ。


それだと
もはやキューピー人形ではなくなる、

と思うのだが。。


理由はさっしがつく。

イスラム教への配慮である。

キユーピー人形は、
背中にちいさく羽が描かれている。

これが

「天使?」

と解釈されかねず、


となると、

偶像崇拝を禁じたイスラム教的には
かなり問題になるのでは?

というはなしである。

人口が多く、
味覚も近く、
経済成長もしている東南アジア諸国。

この大きなマーケットは、
やはり見逃せないのだ。

マヨネーズは売りたい、
でも天使は偶像崇拝といわれるかも・・・
だから・・・

マークを変更しよう!

なんとも勇気のいる決断である。

イスラム教ときいて思い出すのは、
食事の戒律が厳しいこと。

イスラム教の規律に従った食品には
ハラル(HALAL
)認証
と呼ばれるマークが付けられている。

まちがって
食べちゃったりしないためである。

(信者でも、
知らずに食べた場合には、
罪にならないとも聞いたことがあるけど、
ほんとうだろうか?)

僕もマレーシアに行った時は、
スーパーでしょっちゅうこのマーク
をみかけた。

(日本ではほとんどみたことがないけど)
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ハラルが表示されていれば、
豚肉などの、
戒律によって禁止されている食品は、
原料に使われていないし、
製造過程でまぎれこむおそれも無い、
という証明になるのだそうだ。

もちろん
勝手につけていいわけではなく、
政府機関の認証があって
はじめて表示できる。

それくらい厳格にやっているわけだ。


まあ
キューピー人形の件は、
食品そのものがどうこうではなく、
あのキューピー人形が
偶像崇拝にあたるかどうか
ということであるが、

とにかく、
僕のようなほぼ無宗教主義的な人間には、
いろいろと思いもつかない部分が、
重要になってくるのだ。


契約でも、
あとからこのように
方針を大きく変えざるを得ないような
特別な事情
がでてくると、
非常にやっかいなのである。

たとえば
業者が建物を店舗として
借りる交渉をしたとしよう。
話し合いは順調にすすんでいた。

そこで業者はその建物にテナントとして
「入居できる」ものと思って、
建築中のビルの一室に、
改良工事をほどこすなどして、
まえもって準備コストをかけたとする。

ところが
いざ「入居しよう」とした段階になって、
オーナーがテナントの契約に応じない。

「貸すとはまだ言ってないはず」、

とかなんとか。

正式には契約していないから、
オーナーが契約をしない権利
もっていると考えるべきか?
(契約自由の原則)

あるいは
正式に契約していなくても、
準備までされちゃった手前、
オーナーには
契約に応じる
義務があるか?

さあどっち?

という典型問題がある。

おそらく信義則やなんかで
調整されるパターンだけど
結局はケースバイケースである。

ともあれ、
はなしを曖昧にせず、
最初から下調べを充分にするとか、
オーナーと契約を済ませてから動くとか、
計画性はやはり大事なんである。

備えよ常に、である。
そして長年にわたり
くりかえし使いつづけられている「条項パターン」というのは、
やはり残されてきただけの理由がある。

いわばビジネス成功のための
優れたカンニングペーパーなのだ。
知っておいて損は無い。

さて
ようやく本題なのだけれど、
契約というのは
おうおうにして、
どちらか一方のメリットが、
他方にとってのデメリットだったりするのだ。


それは契約の
「解除」にしてもおなじであって、
やはり両者が同時に契約をやめたいと
思うことはまれである。

やはりどちらかが先に、
デメリットを生じて、
相手方に対してその契約を解除しようとする。
というシチュエーションが多い。

そこで、
備えとして、
継続的なサービスなどの契約書には
必ず、解除条項とよばれるものがある。


文字通り、
解除ができる場合の条件、
いわゆる解除事由
の項目だ。

解除事由とはようするに、

もしもこんなことがあったり、
○○なときとか、
解除しまっせ!


というルールだ。

民法にも実は同様のルールはすでにあって、
契約書であらためて確認するまでもないのだが、
民法上の解除、
いわゆる法定解除権というのは
ご多分にもれず
使い勝手がいまいちなのだ。

ごく大雑把にいえば

相手方の債務不履行にたいして、
催告したうえで契約を解除できる
(民法541条)

とかなんとかいったものが、
法定解除権である。

履行不能の場合は催告も必要ない。
催告しても無意味だから。
まあそういう細かいところも重要だけど、
いまいいたいことはちょっと別で、

これだと原則的には
解除できるシチュエーションが、
相手方に債務不履行の事実があるとき
に限られてしまう。

なおかつ催告も必要である。
つまり、

きちんとお知らせした上でだったら、
解除することができるわよ

というとても上品な規定なのである。


ならばというわけで、
おなじみの、
当事者間にて規定を補充する、
ということになる。

つまり契約の出番だ。

解除事由を具体的に示して、
どういった場合に解除できることにするとか、
あるいは催告しないでも解除できるとか、

決めてしまえばいいのである。

以下のような
文例を読むと

もっと分りやすいと思う。

---

甲及び乙は、相手方が本契約上の債務を履行しないときまたは本契約に定める条項のいずれかに違反したときにおいて、履行の催告後10日以内に履行されぬときは契約を解除することができる。
2.甲及び乙が、下記の各号のいずれかに該当することとなった場合は、相手方は催告を要せず、ただちに本契約を解除することができる。
①差押、仮差押、仮処分、強制執行、競売、破産、会社整理、会社更生、民事再生等、その他法的倒産手続の申し立てがあったとき、若しくは清算または私的整理の手続きに入ったとき。
②滞納処分、営業停止、または営業免許・営業登録の取消等の処分を受けたとき。
③支払停止もしくは支払不能に陥ったとき、または手形・小切手を不渡りとしたとき。
④営業の廃止、営業の譲渡、または合併の決議をしたとき。
⑤重大な違反または背信行為があったとき。
⑥その他本契約による信頼関係を著しく損ねる行為があったとき。
---

催告をせずに」解除できる
と定めることのメリットは、

いうまでもなく、
対処の素早さである。


売主が
相手方の経営不振に対応して
解除する場合なんかに、
催告なんかしていたら
ますます事態が悪化するかもしれない
からである。

ただし、
無催告での解除は
デメリットもある。

それはなんであろうか、・・


これはぜひ考えていただきたいが、
ヒントを挙げておけば、
債権の時効である。


さて
催告を要する、とするか、
要さず、とするかは、
どちらか都合のいい方を
導入すればよい。

とくに上記の例文は、
解除事由によって催告ありのパターンと、
催告無しのパターン
を書き分けている、
非常に参考になる規定例なのである。


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