I'll see you in court. (法廷で会おう!) | どんなに難しい契約書でもわかりやすく解説します

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難しい契約書でも、わかりやすく簡単に説明できる、
契約書専門10年以上の経験を持つコンサルタントです。

ちょっと言えたらかっこいいセリフ、
のリストを、
あなたもお持ちかもしれない。


僕の場合、
そのひとつがこれ。


話を打ち切りつつ、
ひとことつぶやく。


「・・・法廷で会おう。」

と。



まあ
一生使うことは無いと思うけれどね。



もちろん、
アメリカ映画なんかで
見たことがあるような無いようなセリフだ。

そういえば
アメリカは訴訟社会だとか、

ささいなことでもすぐ訴えるというイメージがある。

実際にそういう面もあれば、
それほど極端ではない面もあるようである。

たとえば
電子レンジに猫を入れて

乾かそうとしたら、
ひどいことになったので、
訴えてどうのこうの・・・

なんて話もあるが、
この話はどうやら都市伝説らしい。

たしかに、
そんな判例はまだみたことがない。


ただ、アメリカの方が
民事訴訟を裁判で解決しようとする、
そういう姿勢が日本よりも強いとは言えると思う。


法体系のちがいなのか、
制度のちがいなのか、
そのあたりを深く調べていくと
結構おもしろいのだろうな。

ちなみに
法体系の違いによって
ほんとうに訴訟社会化が
すすむのかどうかはわからないが、

せっかくなので
つけくわえると、

世界の法律というのは、
そのなりたちの違いから、
大きく
大陸法と英米法
という、
二つの流れで説明されることが多いわけなんである。

あいかわらず
僕のはかなり
大雑把な説明になってしまうが・・・

「大陸法」とは
ローマ法から発達してきて、
ヨーロッパ大陸全体に広まった系統であり、

たいして
「英米法」は、
イギリスで発達して、
アメリカに受け継がれていった法体系をいう。

じゃあ
日本はどっちなんだろうか? 
というと、

大陸法系だといわれている。

なんでかっていうと、
日本は明治時代に、
各国に追いつけ追い越せとばかりに
法整備をものすごく急いだ時代があった。

急いでいるわけでから、
自分で考えてつくるより、

そうだ!

すぐれた国の法律をお手本にすればいいじゃないか!

・・・と、
誰かが言ったのかどうかはわからないが

とにかく、
ドイツやフランスから、
法制度をごっそり輸入したんである。

当時の日本では
ドイツ法こそが、
最も優れた法制度と考えられていたに違いない。

そんなわけで、
まあ一般的には
日本は「大陸法系」だと言われる。

もちろん
これは大雑把過ぎる分類である。

たとえば憲法にしたって
まさかアメリカの影響がなかったなんて
考える人はいないだろう。

よくいわれるのが

大陸法系は成文法を法体系の中心におくが
英米法系は判例法を法体系の中心におく、

という説明であるが、
日本の現状の運用面はかなり
判例法的なところもあり、
そうやってここからまたややこしい話につながっていくのだ。

まあ、
そうはいいながらも、
いちおう広く共有されている常識であるから、
覚えておいて損はしないのかもしれない。


だって


「英米法系は、
判例が第一次的法源だからなあー」

とか

「英米法上の契約は約因(consideration)
がなければ成立しえないとされているよねー」

などと
いかにも事情通なセリフ
言えたりしたら、
ちょっとかっこいいではないか(笑)。


さて
訴訟社会ってことに話をもどすと、

アメリカ人はすぐに訴訟する、
日本人はそれほど裁判になじみがない、

くらいのイメージは
やはりあると思う。

アメリカが訴訟社会である理由は、
さきほどの法体系の違いというよりはたぶん

1 人種や文化の多様性があるから
(=オープンなところで決着をつけたいという心理?)

2 弁護士がやたら多いから
(=やはり法的解決にアクセスしやすいのだろう)

3 事件分野が明確な弁護士がいる
(=専門医にかかるみたいな発想で弁護士に依頼しやすい?)

4 成功報酬制度が一部認められているから
(=依頼者にとって訴訟のハードルを下げるのかもしれない)

などの要素が
大きいのではないかな?

陪審制の維持とか懲罰的損害賠償とか
もっといろんな論点があろうと思うけども、
ともかく
そうやって考えてみれば、
弁護士人口は日本も増加する傾向にあるのだし
それにネットの普及なんかとも相まって、
これからは日本だって
訴訟社会化していくのかもしれない・・。


いつの日か
「次回は、法廷で会おう。」
なんてセリフも、
冗談ではなくなるのだろうか。


前置きが長くなってしまったけど、

契約書では、
裁判管轄を合意しておける、
というのはわりと有名なところらしくて、
いまでは多くの相談者が、
裁判管轄について指定してくる。


簡単にいえば、
東京の会社が大阪の会社と取引するとして、

もしも裁判てことになったら、
裁判所は東京のにするか、大阪のにするか、
決めちゃおうぜ、

っていう意味だ。

このように
あらかじめ裁判所をどこにするか、

合意しておくことを、
合意管轄とか、
管轄の合意などという。

なぜなら
予測される訴訟コストを抑えるとか、
相手が訴訟に出てくる可能性をみこして
自己に有利な裁判管轄を合意させておくといった
もくろみは当然あるわけで、

裁判管轄を合意しておくことは
もちろんとても大切なことなんである。

ただ
あまりそれに頼る気持ちを持つのも危険だ。

たとえば、
通常は
「被告の所在地を管轄する裁判所」に提訴するとか、
財産上の訴えの場合は「義務履行地」に、
不法行為は「不法行為地」に、
といった原則的ルールがあるからだ。

だから
管轄の合意について
おさえておきたいのは


・合意地のみで裁判をするか
他の法定管轄に付加して合意するつもりであるのかを定めること
(専属的合意、付加的合意)、

・合意は第一審に限られること、

・さらに、民事訴訟法第11条の要件により、
「一定の法律関係に基づく訴えに関するもの」であること、

などのポイントである。
要件をみたさないと、
条文は無効と判断されかねないので、
要注意である。

ひとまず
例文を挙げておく。


「甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、○○地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。」

この契約に係る訴訟については、○○裁判所をもって合意による専属的管轄裁判所とする。」


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