和訳『Happiness Is A Warm Gun』(ビートルズ) | タブンダブン

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流浪のライター、かげぎすのブログ。書評、映画感想、洋楽の和訳などいろいろとやっています。

今回の和訳は懲りずにビートルズ。

 

曲は『Happiness Is A Warm Gun』(1968)。

※曲とこの画像はなんの関係もありませんのであしからず。しかし「BIG DICK」ってのもすごいネーミングセンスです。これもこれで卑猥ですね。

 

 

申し訳ない!ビートルズの楽曲は版権の関係が厳しくてオリジナルをみつけることがムズカシイのです。というわけで、ビートルズの曲をふんだんに使ったリスペクトミュージカル映画『Across The Univeres』の動画をあげておきます。

 

 

レノン=マッカートニー名義ですが、ジョンが手掛けた曲です。

 

 

 

 

 

 

世には卑猥な歌が数多くあります。

 

そして、女の子にはけっこう不人気だったりします。

 

「桑田佳祐ってオッサンのくせにエロイ歌ばっかり歌ってわたしはあんまり好きじゃないなあ」

 

 

あるとき知り合いの女の子はそう言っていました。

 

 

「ばかだな、それがいいんじゃないか」

 

 

そう言ったところで、理解できないものは理解できないのだから仕方ありません。でも僕はそんなコのために必ずエロティカセブンを唄います。

 

 

……しかし男心とは複雑なもので、猥歌をキャッキャと喜ぶ女の子にはそれはそれで引いてしまうものです。

 

 

 

どうすりゃいいんだ(さあね)。

 

 

 

卑猥な歌は基本的にお下劣で、たしかにその曲が好きでもなかなか公言できない肩身の狭さがありますよね。

 

しかし、しかし、詞に隠された意味を読みほどいてニヤリとするのもまた知的な営みのひとつです。

 

スケベな歌詞に詩的なエッセンスを放り込めばあら不思議!

 

 

 

 

やっぱり卑猥な歌が出来上がります。

 

 

 

 

だって仕方ないでしょう、その曲の目的はセクハラであり、けっして恋愛や人生の悲哀を歌い上げることではないのですから。

 

 

それが猥歌の妙味なのです。潔くその現実を受け入れましょう。

 

 

 

さてさて、ジョンが書いた『Happiness Is A Warm Gun』なのですが、じつはこの曲、世間の女の子どころか天下の英国放送協会(BBC)をドン引きさせた、群を抜いてスケールの大きい猥歌でありました。

 

 

ジョンは高らかに(そしてなぜかやたらハイテンションで)こう歌い上げます。

 

「ママ! 幸せとはチ〇コなんだ!」

 

 

はいはい、わかった、わかったよジョン。わかったからいい加減にしろ。

 

 

というわけで「bang, bang, shoot, shoot」と素敵なコーラス付きの『Happiness Is A Warm Gun』はBBCから「ban(バン:放送禁止)」されることになります。

 

 

……狙っていたのだとしたら、ジョンはやはり天才です。

 

 

でも、僕はこの曲が大好きです。高校生のころ、

 

「”warm gun”ってなんじゃらホイ?」

 

と思い立ち調べてみたときの衝撃ときたら……。ただのオ〇ンチ〇のことだと知ったときの衝撃。

 

スラングというかダブルミーニングというか、英語単語の奥深さをはじめて学んだ瞬間でした。そういう意味で、かなり思いで深い曲です。

 

そしてまた、この曲無駄にカッコいいんですよね……。

 

どうやら曲調は三部構成を意識しているようで、

 

「ロックミュージックのあらゆる側面を網羅しているんだと思う」

 

(it seemed to run through all the different kinds of rock music.)

 

とまでジョンは語っています。

 

いやあそれにしても、『Happiness Is A Warm Gun』はここ最近の和訳のなかでもすごく楽しかったです。

 

認めましょう、めっちゃノリノリでした。

 

 

この曲に味わい深さがあるとしたら、「幸せは温かい銃のことなんだよ、ママ」という部分にあると言えます。

 

わざわざこんな馬鹿げたことをママに言うあたりがちょっと異常というか、ふつうの感覚の持ち主なら「幸せってチ〇チ〇なんだよ、母さん」なんて言いませんよね。

 

それを平気で詞に書いちゃうあたり、ジョンのマザコンっぷりがわかります。しかしそれがまた素晴らしいスパイスを与えてくれています。

 

とはいえ、マザコンと一口に言っても、その人の境遇にはいろいろとあるわけですが、ジョンの場合は悲哀そのものです。

 

彼は幼い頃から母と離れ離れ(彼女は他の男と同棲していました)で暮らし、姉のような存在でもあり母のようでもあるミミおばさんに育てられました。

 

しかし母ジュリアとは家が近く、たびたびジョンは遊びに行っていたそうな。

 

やはり二人は血のつながった実の親子。ユーモアがあり、いたずら好きな母の性格はまさにジョンにそっくりで、別居関係でありながらもじつに仲がよかったそう。

 

しかし、1958年の夏。母ジュリアはミミの家に立ち寄った帰り、非番の警官に轢き殺されてしまいます……。

 

あまりにあっけない最期でした。

 

「俺は母を二度も失った」

 

ジョンはそう回想しています。

 

しかも、警官はなんとその後無罪判決を受けます。

 

このあまりの受け入れがたい現実に、ジョンの心は歪んでいきます。その傷を癒してくれたのはポール・マッカートニーとなるわけですが、以来ジョンは、この母ジュリアの喪失をきっかけに、感傷的な詩をたくさん書くようになったのだとか。

 

ジョンの楽曲には、けっこうな頻度で「ママ」が登場します。ソロ曲「Mother」なんて、まさにジュリアのことをテーマにしています。それだけジョンにとって「ママ」の存在が大きかったということなのでしょう。

 

 

話を戻しますが、そういうわけで単なる猥歌『Happiness Is A Warm Gun』には、ひとたび「Well, don't you know that happiness is a warm gun, mama?」という一節が入るだけで、ふざけているはずなのに、すごく悲痛な思いが込められているような気がするのです。

 

 

 

ひき続いて歌詞の話を……。

 

この歌詞の仕掛けで面白いのは、

 

・銃声の「bang(バン)」

・事をいたす意味での「bang(ヤる)」

 

がふたつかけてあるところです。

 

ちなみに「jump the gun」はひとつの立派な慣用句です。

 

「早まる」「焦る」という使い方をします。

 

ここでもまた曲のテーマである「gun」とかかっていることがわかります。

 

しかも、早まる、焦るというわけだから、性交で言うところの「早漏」というふうにもとれますよね……。

 

いやはや、こういう言葉遊びはほんとうにジョンらしくてニクイですね。

 

彼が子供のころ熱中していたキャロルの『不思議の国のアリス』の影響がこういうところに現れているのではないかな、と思う今日このごろでした。

 

 

 

She's not a girl who misses much
あの女はすっかり油断しちまってる

 

Do do do do do do do do, oh yeah
She's well acquainted with the touch of the velvet hand

彼女の手はとても滑らかで魅力的だ 本人も自覚しているんだろう

 

Like a lizard on a window pane
まるで窓に張り付くトカゲのような妖しい手つき

 

The man in the crowd with the multicoloured mirrors
そして人混みにまぎれるその男は 厚底ブーツに

 

On his hobnail boots
極彩色の鏡をとりつけている

 

Lying with his eyes while his hands are busy
やつの目はいったいどこを見ているんだろう しきりに自分の手を

 

Working overtime
動かしたりなんかしてさ

 

A soap impression of his wife which he ate
ところであの男は奥さん印の石鹸を食べたことがある

 

And donated to the National Trust
残りの食べかけはナショナルトラストに寄付されたけどね

 

 

I need a fix 'cause I'm going down
おれには注射が必要なんだ もうすっかりまいっちまってる

 

Down to the bits that I left uptown
おれのアソコも元気がなくって 街をでた

 

I need a fix 'cause I'm going down
注射を一発キメてほしい へとへとなんだ

 


Mother Superior jump the gun

修道女の先生様があわてふためく

 

Mother Superior jump the gun
修道女の先生様があわてふためく

 

Mother Superior jump the gun
修道女の先生様があわてふためく

 

Mother Superior jump the gun
修道女の先生様があわてふためく

 

Mother Superior jump the gun
修道女の先生様があわてふためく

 

Mother Superior jump the gun
修道女の先生様があわてふためく

 


Happiness (is a warm gun)

幸福とは(つまり温かい銃なんだ)

 

bang, bang, shoot, shoot
ヤッてヤッて撃ちまくる

 

Happiness (is a warm gun, mama)

幸福とは(そうつまりぬくもりの銃なんだよ わかるだろママ)

 

bang, bang, shoot, shoot

ヤッてヤッて撃ちまくればいいのさ
 

When I hold you in my arms (Oo-oo oh yeah)
きみをこの手で抱き寄せて

 

And I feel my finger on your trigger (Oo-oo oh yeah)
きみのトリガーに指をひっかける

 

I know nobody can do me no harm (Oo-oo oh yeah)
だれもおれの邪魔なんてできないよ


Because:
なぜなら!

 

Happiness is a warm gun, mama

幸福とはぼくのオ〇ン〇ンのことだからさ わかるだろ、ママ?

 

(bang, bang, shoot, shoot)

(ヤッてヤッて撃ちまくる)

 

Happiness is a warm gun, yes it is
幸福はあのぬくい銃にこそあるんだ そうさそのとおり

 

Happiness is a warm, yes it is, gun

幸福は温もりなんだよ つまりはあの銃のことだ

 

(bang, bang, shoot, shoot)
(ヤッてヤッて撃ちまくる)

 

Well, don't you know that happiness is a warm gun, mama?

ねえママ、わかってるかい? ぼくたちの幸せは温かい銃にこそあるんだ!

 

(Happiness is a warm gun, yeah)

(つまり幸福とはオ〇ン〇ンなんだ)