時間的非整合性(Dynamic Inconsistency) | terukunのブログ

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政府はインフレ率をできるだけ低くし、かつ過少供給の状況を是正するという政策目標を持っている。

政府の想定する損失関数は



kは1よりも大きく、均衡産出量y*を超えた水準ky*を産出量の理想水準に設定している。

ωは正値で、ゼロインフレを理想水準としている。(だから第一項目は差の形になっていない)

ステップ
1:政府は目標インフレ率をアナウンスする
2:民間経済主体はインフレ率に関する期待を形成する
3:政府は金融政策によって実際のインフレ率を決める


政府が目標インフレをアナウンスする場合、民間が合理的な期待を形成していることを前提として、つまり
「達成しようとするインフレ=合理的期待インフレ」となるものと考える。
よって、フィリップス曲線

から、y=y*となる。つまり、働き過ぎず、働かなさ過ぎず、ちょうどよい産出量になる。


政府によるゼロインフレ率のアナウンスメントをもとに民間経済主体がインフレ率に関して期待を形成する。


政府が実際にインフレ率を決定する際にはフィリップス曲線を損失関数に代入してから最小化を行う。
つまり、

をπを動かすことで最小化する。
結果的に、

となる。
民間の期待インフレ率が0で、k>1であるから、実際に実施されるインフレ率は非ゼロである。

これは、政府がアナウンスした目標インフレ率と、実際に実施したインフレ率に食い違いが生じていることを意味する。
このような政策の掲示と実施の食い違いを「時間的非整合性(Dynamic Inconsistency)」と呼ぶ。

他方、民間の期待インフレをゼロではない実際のインフレに合わせると、

となる。
結果的に損失関数は

となる。
これは先程の損失よりも大きいので、時間的非整合性が生じている経済では損失から逃れることはできない。

参考文献
新しいマクロ経済学―クラシカルとケインジアンの邂逅/齊藤 誠

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