ことのはbox 第六回公演
作 永井愛 二兎社
演出 酒井菜月
シアターグリーンBOX in BOX
大逆事件やら平塚らいてう、青鞜。先日、文学座55期の研修科卒業発表会「美しきものたちの伝説」を観た後だけに、あれがこう繋がってくるのか、と感慨深かった。
研修科時代に伊藤野枝を演じた廣瀬響乃が、この作品では市川房枝をモデルとする杉坂初枝を好演。そして春名風花が演じた国宝級優等生の光島延ぶのモデルは脚本の永井愛の祖母らしい。
1911年。主役の二人が反発した画一的な良妻賢母主義。彼女たちが抵抗したものは、ある意味大日本帝国そのものであり、戦うにはあまりに彼我の力が違い過ぎた。ただ、その小さな種は確かに若い女性たちの心を捉えた。自由を求めることすら制約されていた時代がわずか100年程前に存在していて、今や当たり前の主張が可能になったのは、先人が心を揺らし掻きむしり、行動した事実があってこそなのだと、改めて気づかされる。
そんな揺れる乙女心、葛藤が上手く表現された作品だった。もちろん、それを引き出すのは校長や保守的な教諭たちであり、また庶務のおばさんやその息子の存在でもある。
廣瀬響乃を観る機会は多い。苦悩を表現する事が求められるこの役はひとつのチャレンジだったろう。光島の変化を感じ取り心を乱される終盤の場面、下手2列目に座った私には、その複雑な表情がよく観察できた。成長を実感できたのが嬉しかった。
春名風花の安定感も印象的で、二時間半休憩なしの長丁場を主役として大量の台詞をほぼ完璧にこなしたのは見事だった。感情の起伏を見せない優等生役だが、微妙な演技で内面を表現していたのは大したものだ。観客対応もソツなくこなし、きっと更に人気が出るだろうと感じた。
篠田美沙子は、文学座本科生の卒業発表会以来。その成長に驚かされた。終演後声を掛けられなかったのが心残りだが、また観る機会もあるだろう。
さて、3日で五本の忙しい週末。羽生結弦が111点を叩き出して首位発進した事には舌を巻かされる。さあ、そろそろ中野に向かおう。