マニー・パッキャオ(その3)~パッキャオはどこへ行く~ | 10papaのボクシングブログ

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前回は、マニー・パッキャオがボクシングの常識では考えられないような体重の壁を乗り越え、世界の強豪選手をことごとく倒し6階級制覇(見方によってはそれ以上の偉業)を達成したという内容でした。


今回は、33歳となったマニー・パッキャオがキャリアの終盤をどのように迎えるのか、マニー・パッキャオの今後について考察してみたいと思います。



前回の記事で「彼にはまだやらなければならないことがある」と述べましたが、ボクシングに詳しい人はこれを読んでフロイド・メイウェザーJrとの頂上決戦をイメージした人もいるのではないかと思います。




ちょっと話が反れますが、フロイド・メイウェザーJrを簡単に紹介しておきます。


【フロイド・メイウェザーJr】
・現WBC世界ウェルター級チャンピオン
・43戦43勝(26KO)
・アメリカ出身でアトランタオリンピック銅メダル獲得
・史上最速と言われるスピードとディフェンステクニックの持ち主
・ボクシング史上初の無敗のまま5階級制覇を達成
・マニー・パッキャオとはパウンド・フォー・パウンド(最強のボクサー)の座を常に争っている存在



とまあ、これまた凄い選手で、マニー・パッキャオに勝るとも劣らない超人的なボクサーなのです。
この2人が同じ時代、同じ階級にいるということで、何年も前から2人の対戦が熱望されてきましたが、プロモーターの思惑や様々な大人の事情でいまだ対戦が実現していません。
この対戦はボクシングファンなら誰もが望むドリームマッチと言えるでしょう。




しかしこれは、あくまで我々ボクシングファンが望んでいることです。


マニー・パッキャオはあと2~3年での引退が囁かれていますが、本人は具体的に対戦したい相手がいるのでしょうか?


マニー・パッキャオ自身のコメントなどを拾ってみても、ここ数年は「対戦相手を決めるのは私の仕事ではない。全てプロモーターに任せている」と、希望の相手は名言はせずプロモータに任せるというスタンスを貫いています。


注目されているメイウェザーとの対戦も、最近パッキャオ本人から対戦を希望するような積極的なコメントはありません。
これについては過去何度も対戦の交渉が行われてきましたが、条件面でメイウェザー側の要求と合わず、何度も交渉が決裂してきた経緯があり、若干ウンザリしている部分もあるのでしょう。




では具体的に対戦したい相手がいないとすると、ボクシングに対してこれ以上何を望み、何を目指しているのでしょうか?


確かにマニー・パッキャオも過去(キャリア前半)においては、「強い相手と戦って有名になりたい」「ファイトマネーをたくさん貰いたい」といった、金銭面やビックマッチに対してどん欲だった時期は当然ながらあったようです。
しかし今は、世界的にも最強のボクサーと認められ、ファイトマネーも次戦は2500万ドル(約20億円)以上と言われています。今や母国フィリピンはもちろんのことアメリカでも人気者となっており、フィリピンの国会議員に当選し、オバマ大統領にも面会したほどです。


そのような状況ですから
「地位や名声、お金もすべて手に入れている状態で、ボクサーとしてモチベーションを保てるか?」
「ラスト数試合と言われている中、どんな思いでハードな練習をこなしているのか。何を目指し、どこに向かおうとしているのか?」
と、そんな事を疑問に感じてしまうのは、私だけでしょうか?




◆彼がボクシングを続ける理由は何なのか?




これについて、パッキャオ自身がどのように考えているか、我々には知る由もありません。


しかし、私たちがその答えを見出そうとした時、それは彼のもうひとつの顔、国会議員という職業とそこに至るまでの過程が大きく関わっているのではないかと私は考えます。




ではここで少し、マニー・パッキャオのボクシング以外の部分について、触れていきましょう。




マニー・パッキャオはフィリピンの貧しい農家の子として生まれました。幼い頃父が失踪し、家計を助けるため出稼ぎや路上生活すら強いられることもありました。


12歳で始めたボクシング。アマチュアではフィリピンのナショナルチームに入り、プロ転向後は海外でも試合をし、序々に諸外国の状況を見るようになることで、フィリピン国民の貧しさ、政治の腐敗をより一層感じるようになったのではないでしょうか。そのような貧しく治安も悪い祖国を救うために、ボクシングと平行して政治活動を含めた様々な活動を行ってきました。


2007年5月、フィリピンの下院選挙に出馬。これは落選してしまいましたが、2010年5月の再挑戦ではみごと当選を果たしました。
いずれもボクサーとして絶頂期と思われている時期での挑戦でした。


しかし、さすがの超人パッキャオもボクシングと政治家の両立は難しいようです。国会では議会の出席率の悪さを批判されることもあったり、また逆にボクシングのコーチからは「議員の仕事に力を入れすぎている」と練習の不十分を危惧される事もありました。


議員として現在はあまり目立った活動は見えませんが、本人は「政治の世界ではボクサー以上に成功してみせる」と言っています。

現在はフィリピン・サランガニ地方の議員をしているパッキャオですが、政治の仕事に対する士気は高く、いずれは州知事や、フィリピンの大統領を目指すのでは、なんて言う人もいるほどです。



そして、このようなパッキャオの政治活動や国に対する思いは、ボクシングというもう一つの本業の中でも、徐々に現れていきます。
ボクシングのインタビューや会見の中でも、パッキャオは以下のようなコメントを述べています。


「苦しんでいる母国フィリピンの人々が、自分の試合を見ている時だけでも、楽しい気持ちになってくれれば幸せだ。」
「私の最大の戦いはボクシングではない。最大の戦いは我が国の貧困をなくすことだ。」
「自分にはやるべき事がまだまだたくさんある。」



最初の議員選挙の立候補の際、パッキャオは世界的な注目ボクサーとして人気急上昇中だったにも関わらず、選挙に当選したらボクシングを引退すると明言していました。
それが理由で落選したとの説もあり、2度目の立候補では引退は否定して見事当選を果たしましたが、議員の仕事にも熱心で、当選後の練習中に「議員仕事が恋しい」とコーチを困らせたこともあったとか。


なんか日本でよく見かける、周りに持ち上げられて立候補したスポーツ選手あがりの中途半端な国会議員とは違う気がしませんか?
明らかに自身の強い意志が感じられるし、本気で何かを変えたいと思っている感じがします。




さて、ここまでお話して、最初の問いに戻ります。


◆彼がボクシングを続ける理由は何なのか?



私はやはり、最終的には母国フィリピンの人々のためではないかと考えています。



現在のパッキャオは、ボクシングで膨大なファイトマネー手に入れることができるようになりましたが、そのファイトマネーから、祖国に病院や図書館を建設したり、様々な寄付を続けています。


また多くの国民がパッキャオの試合を楽しみにしており、自分の戦いを見て、フィリピン国民に勇気を与えることもできます。試合の時はフィリピンの内戦が休止するほどです。


もちろんボクシングファンのため、そしてボクサーの本能が続けさせている部分もあるでしょう。


しかし、最大の戦いはボクシングではなく祖国救済と言い切るパッキャオ。
ボクシングを通じてフィリピン国民のためにできることが、今の自分にはまだまだあると考えているからこそ競技を続けているのではないでしょうか。



パッキャオがボクサーとして、何のために戦い、いつまでその戦いを続けるかは分かりません。



しかしパッキャオの生涯の戦いはまだまだ続きます。
どんな戦いであれ、それが我々ボクシングファンを楽しませ、さらには母国フィリピンの人たちも喜ばせるものである事を望みたいものです。



今後のマニー・パッキャオに注目していきましょう。



(つづく。次回パッキャオ編最後です。)




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