マニー・パッキャオ(その2)~6階級制覇ってナンだ?~ | 10papaのボクシングブログ

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前回は、全階級を通じて現在最も強いと言われているフィリピンのボクサー、ボクシング史上最多の6階級制覇チャンピオン「マニー・パッキャオ」の紹介をしました。


今回は、そのマニー・パッキャオの凄さ、特に彼の達成した6階級制覇について詳しく述べていきたいと思います。



まず、6階級制覇とは何か?
これは体重の異なる6つ階級で、世界チャンピオンになったという事です。


「そんな事は分かっているよ」と言う人も多いかと思いますが、実際"6階級制覇"といってもどれだけ凄いのかピンと来ない人がいるかもしれません。



それを説明する前に、ちょっとだけ日本のボクシング事情をおさらいしておきます。
 
日本人のボクサーは、最高何階級まで制覇しているかご存知でしょうか?
日本では唯一、亀田興毅選手がライトフライ、フライ、バンタム級の3階級を制覇しています。


ただし、この3階級制覇、その経緯やマッチメイクには色々?な部分があり、ボクシング業界では数字に見合った評価はほとんどされていないのが事実です。
その理由は以前の記事で既に説明してきましたので詳細は省きます。


※詳しくは⇒亀田興毅について(その3)~作られたチャンピオン~



それは一先ず置いておいて、ボクシングでいう3階級って、いったいどの位の体重差があるのでしょうか。


例えば亀田興毅選手の場合はライトフライ級(48.97kg以下)からバンタム級(53.52kg以下)まで、その体重差約4.5kgです。


「あれ?、そんな大したことなくない?」と思う人もいるかもしれません。柔道でいうと1階級分にも満たない体重差ですから。


ただ、日本ボクシングの歴史の中で、過去にこの体重差を乗り越えて世界を制した選手がいなかったことからも、ボクシングという競技において、体重の壁というものがいかに大きいものだったかを理解して戴ければと思います。


実際、プロで3階級以上体重が違うと、本気のスパーリング(実戦練習)も危険なのでほとんどやりません。そのくらい体重というものがボクシングでは大きな要素なのです。



さて、話をマニー・パッキャオに戻しましょう。


亀田興毅の3階級制覇に対して、マニー・パッキャオは6階級制覇です。
では、このマニー・パッキャオが制した6階級はどのくらいの体重差があるでしょう?


「3階級で4.5kgだから、6階級だと9~10kgくらいか?」


…と思いでしょうか?
実はマニー・パッキャオの6階級制覇は、フライ級(50.80kg)からスーパーウェルター級(69.85kg)まで、そ
の差19kg、なんと20kg近い体重差を乗り越えての活躍なのです。


「あれ?、3階級と6階級で、こんなにも体重差に開きがあるの?」


…と、ボクシングに詳しくない人は次にそう思うかもしれません。
そうなんです。そこがマニー・パッキャオの凄さ、6階級制覇であって、ただの6階級制覇ではないところなの
です。



実はフライ級からスーパーウェルター級までは10階級の差があり、マニー・パッキャオはその中でいくつかを飛び級しながら6つの階級でチャンピオンになっているのです。


実際にマニー・パッキャオが戦ってきたライトフライ級からスーパーウェルター級までを階級順に下から並べ、うちチャンピオンになった階級に★を付けると、こんな感じです。



 ライトフライ級(48.97kg以下)
★フライ級(50.80kg以下)
 スーパーフライ級(52.16kg以下)
 バンタム級(53.52kg以下)
★スーパーバンタム級(55.34kg以下)
 フェザー級(57.15kg以下)
★スーパーフェザー級(58.97kg以下)
★ライト級(61.23kg以下)
 スーパーライト級(63.50kg以下)
★ウェルター級(66.68kg以下)
★スーパーウェルター級(69.85kg以下)



ふむふむ、それなら20kgの体重差も納得できる訳ですが、そもそも何でこんな事になっているのでしょう?
普通のボクサーが階級を変える場合は、下から徐々に階級を上げていくのが常ですが…



ここがマニー・パッキャオの最大の特徴かもしれません。
そこには、こんな理由があります。




普通のボクサーは、いづれは世界チャンピオンとなりベルトを巻く事、世界チャンピオンになった場合は更に複数階級制覇を目指し、試合をしていきます。


ところがマニー・パッキャオの場合はチャンピオンベルトや複数階級制覇にこだわることなく、とにかく強い選手と試合をする事を優先して戦ってきました。そして実際に各階級の強豪選手、最強と言われる選手達を片っ端からバッタバッタと倒してきました。

その結果、その試合がたまたま世界タイトルマッチだったり、そうじゃなかったりしたため、結果的に6つのチャンピオンベルトがついて来ただけなのです。
実際にはチャンピオンの冠がついていない、フェザー級やスーパー・ライト級でも当時最強と目された選手を倒してきて
います。


つまりマニー・パッキャオにとって最強の証とはチャンピオンベルトではなく、彼が戦ってきた軌跡そのものが最強の証なのです。そして、たまたまついて来た6つのチャンピオンベルトはもはや"おまけ"と言っても過言ではないでしょう。


さらに驚くべき事が、階級を上げてもなおスピード・パワーが衰えないことです。170cmに満たない小さなボクサーが、時には180cm超の選手と戦いスピード・パワーで圧倒していきます。


これ、一般の人が「結婚して10kg太っちゃったよ~^^;」とは訳が違います。

体重を増やしながらスピードとパワーを維持していく。階級を上げるほど相手の力も増していくのに、世界トップクラスの実力を失うことなく活躍し続ける。もともと50kg以下の階級で戦っていた選手がですよ。もちろん、身長や骨格は変わるわけもありません。

これは今までのボクシングの常識では考えられなかったことであり、ひょっとしたらこれからもこんな選手は出てこないかもしれません。
まさに超人的な強さを持った選手なのです。



勝手に盛り上がってきていますが、もう少し付け加えましょう。



マニー・パッキャオの達成した6階級制覇、世界にはこの6階級制覇を達成した選手がもう1人だけいます。
それがアメリカのスーパースター、オスカー・デラホーヤです。


彼の場合は、スーパーフェザー級(58.97kg以下)からミドル級(72.57kg)までの6階級を下から順に積み上げてきたタイトルであり(体重差は13.6kg)、そう考えるとやはりマニー・パッキャオの6階級はそれ以上の価値があるように思われます。




実はこの2人、2008年12月に一度対戦しているのです。


当初は体格的なアドバンテージで、オスカー・デラホーヤが圧倒的有利の予想でした。(私も当時、このマッチメイクはあまりに無謀でプロレス的だと思っていました。)

しかし、フタを開けてみると試合はマニー・パッキャオが終始押しまくり、8回終了TKOでマニー・パッキャオが勝利しました。



同じ6階級制覇の選手を倒し、これで記録的に見ても、マニー・パッキャオが頂点に立った事になります。
ただ、その記録だけでは伝えられない凄さ、非常識さ、素晴らしさをマニー・パッキャオには感じずにはいられません。




そんなマニー・パッキャオ、最近の試合は2011年11月、3階級制覇チャンピオン、ファン・マヌエル・マルケスとの試合でした。
マニー・パッキャオ有利の予想の中、予想外の苦戦を強いられ、結果は僅差の判定勝ちでした。



マニー・パッキャオもいまや33歳、怪物的な強さもいよいよ陰りを見せ始めたか、という意見も出始めたのも事実です。



しかし、彼にはまだまだやらなければならないことがあるのです!


次回はそんなマニー・パッキャオの今後について書いていきます。


(つづく)



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