20世紀文明論(3):生活革命①「異常な世紀」・・・❸ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ③7日間世界一週「19世紀の末年に於て尠(すくな)くとも80日間を要したりし世界一週は20世紀末には7日を要すれば足ることなるべくまた世界文明国の人民は男女を問はず必ず一回以上世界漫遊をなすに至らむ」

 交通機関、とくに飛行機が庶民の乗り物となったことは、20世紀が特筆すべきことである。

 日本人にとっては、海外渡航と言えば、船であり、原始的な木造船から、帆船、蒸気船、そして現在の船に至るまで動力源の変遷はあっても、海上輸送しか方法がなかった。これは、遣隋使の昔から20世紀初頭まで変わらなかったが、20世紀後半になると、老若男女、庶民が気軽に飛行機で海外旅行に出かけるようになった。

 飛行機の大衆化、そして、そのことによって世界が狭くなったことは20世紀の特色である。21世紀には、宇宙への旅に出かけることが実現しそうである。

 ④暑寒知らず「新器械発明せられ暑寒を調和する為に適宜の空気を送り出すことを得べし阿利非(ママ)加(アフリカ)の進歩も此為なるべし」

 今年の夏は、異常気象で世界中が猛暑に襲われており、熱中症予防のために、気象庁は「ためらわずにエアコンを使うように」という指示を出すくらいである。今は、エアコンの効いた冷暖房の部屋で過ごすことが当然のようになっている。

 庶民は、昔から20世紀の前半までは、寒ければ炬燵や火鉢で暖をとり、暑ければ打ち水に風鈴、そして風通しのよい部屋で団扇を使って涼をとるという生活パターンが一般的であった。ところが、第二次世界大戦後、生活が急速に電化されるようになり、大きな変化が生じた。

 私が子どもの頃には、せいぜい扇風機が文明の利器であったが、今やクーラーなしでは日本の夏は過ごせなくなっている。日本でルームクーラーが登場したのは、1952(昭和27)年のことである。

 ⑤植物と電気「電気力を以て野菜を成長することを得べく而して豌豆(そらまめ)は橙大となり菊牡丹薔薇は緑黒等の花を開くものあるべく北寒帯のグリーンランドに熱帯の植物生長するに至らん」

 今では、ハウス栽培のおかげで、お金さえ出せば、いつでも好きな野菜や果物を入手できるが、それは石油や電気の大量消費の上に成り立っている。さらには、バイオテクノロジーの発達は植物工場を実現させている。

 これは資源制約への人類の挑戦であるが、自然に逆らわずに生活するという発想とは対極的な生き方であり、それが20世紀文明の特色でもある。