司法試験・予備試験受験生の皆様、いかがお過ごしでしょうか。新型コロナウイルス感染症との関係で、令和2年度の司法試験・予備試験が延期となりましたが、本日司法試験委員会より以下の通り、日程が決定しました。なお、状況により、更に延期する場合等があるようです。詳しくは、法務省「令和2年司法試験の実施日程等について」のページ(PDF)をご覧ください。
 
【司法試験】
8月12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)
 
【予備試験】
短答式 8月16日(日)
論文式 10月頃予定(追って公表)
口述式 令和3年1月又は2月頃予定(追って公表)
 
(2020.05.15)

 

〇はじめに
 司法試験・予備試験受験生の皆様、いかがお過ごしでしょうか。さて、新型コロナウイルス蔓延により、不要不急の外出が自粛となっており、本日、政府より緊急事態宣言が発令されます。他方で、司法試験が5月13日、予備試験短答式が5月17日に実施されすでに官報で公開されています。しかし、こういった非常事態のもと、多数の受験生が集まる司法試験・予備試験(以下、「司法試験等」とします)の受験会場では、コロナウイルス感染の危険が高くなっており、一部延期ないしは中止すべきという声が出ています。現時点で、司法試験委員会等から発表はありませんが、現実に中止や延期が可能か、検討したいと思います。

 

〇延期・中止は法的に可能か
 まず、司法試験法第7条は「司法試験及び予備試験は、それぞれ、司法試験委員会が毎年一回以上行うものとし、その期日及び場所は、あらかじめ官報をもつて公告する。」とあります。つまり、現行法を前提とすると、最低でも年1回は開催する必要があるため、本年度の司法試験を中止することは違法ということになります。それでは延期についてですが、期日について官報掲載が要求されているものの、特に変更を禁止する規定はないため、司法試験委員会の決定のもと、再度官報掲載すれば法改正なくして変更は可能かと思います。まあ、法改正の要否を問わず、司法試験法特措法など立法措置を講ずればそれで足りますし、特に法改正それ自体を反対する意見はないでしょうから、あとは所定の法案提出・立法手続を迅速に採ることで足りると考えます。
 なお、司法試験の場合、5年に5回の受験制限がありますが(司法試験法第4条第1項)、これについても合わせて「特措法の規定により受験できなかった期間は除く」などとして、6年に5回などとすることになります。

 

〇延期は現実的に可能か
 問題は法改正ではなく、司法試験等の延期が現実的に可能かということです。なお、ここでいう延期は、8月や12月等、年内に実施することを意味します。
 
 まず、司法試験ですが、司法試験は合格発表後直ちに司法修習の手続がはじまります。9月の発表から、11月末の導入的集合修習開始まで、司法研修所、裁判所、検察庁、弁護士会、その他関係各所はその受け入れのための各種事務手続を行います。また、同時期は司法修習生(当該司法試験合格者の前の期の修習生)の集合修習や選択型実務修習、さらには二回試験の実施もあります。こと、司法試験に限定したとしても、論文式試験の添削に大学教授や実務家など多くの採点者がその時期を見越して予定を組んでいると思われるため、単にその時期をずらすというのは、採点者の確保・日程調整の手続が必要になります。いずれにしても、延期は困難かと思います。

 予備試験ですが、採点者や成績評価の日程調整、論文試験や口述試験の会場確保の問題はありますが、司法試験よりまた可能性はあるかと思います。とはいっても、困難であることには間違いないでしょう。

 

〇中止は現実的に可能か
 ここでいう中止は、令和2年度の司法試験を実施せず、令和3年度にまとめて実施するという意味です。事務手続や調整との関係からすると、延期よりかは「まだ」マシでしょうから、中止は現実的にありうるところです。しかし、中止となると、令和3年度の司法試験が、令和2年度の受験生と一緒に行うため、受験生は増加します。もちろん、令和2年度で不合格になるべき受験生が令和3年度の司法試験を受験することや、令和2年度の予備試験合格者が令和3年度の司法試験受験生にいないことを考慮すると、実際の受験生はもう少し減るのでしょうが、それでも受験者数が増加することには間違いありません。
 
 その上で、「合格者1,500人」を堅持するのであれば、合格率は当然下がります。昨年の合格率を維持すると、合格者数が増加します。ただ、過去には2,000人を超える合格者数もあったので、昨年の合格率を維持したまま合格者数を増やすことそれ自体は可能です。令和2年度の合格者がいないので、法曹人口の大幅増員による弊害もありません。

 そう考えると、令和2年度の司法試験等を中止にすることは、現実的に可能かと思います。


〇受験生の意見・希望


ツイッター上で、中止・延期・決行でアンケートを行っていますので、ご参考にしてください(2020年4月9日集計予定です)。

 

 

 

〇おわりに

試験直前ということもあり、当事務所の受講生含め、多くの受験生が動揺しています。そのため、司法試験委員会は、延期・中止・決行いずれにしても、早々に何らかの表明をしていただきたく思います。※4月7日、司法試験と予備試験について、延期の方向で調整されている旨の報道がされました。今後の動向を注視したいと思います。

 

 

 

(2020.04.07)

 

 司法試験受験生の皆様、いかがお過ごしでしょうか。残り2か月、各予備校の模擬試験もひと段落し、いよいよ直前期の追い込みをはじめるところといったところでしょうか。前回のコラムで、「司法試験模擬試験を添削しての感想」について言及しましたが、今回はその補足的意味で、下四法(行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)について書いてみたいと思います。

 

 2015(平成27)年に短答式が7科目から3科目となり、行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法(以下、「下四法」とします)は短答式で出題されなくなりました。そのため、下四法について、条文レベルの誤りが顕著になり、場合によってはそれが大きな点差の原因になることもあります。論文式では六法を参照することは可能なので、必ずしも細かな条文の文言まで記憶する必要はないのですが、それでも条文が存在していることや、条文を探す、見つけるためにも、条文知識は必要になります。

 

 特に、民事訴訟法・刑事訴訟法は、合格後司法修習に行けば当然必須になりますし、そうした知識不足は単に司法修習で恥をかくだけでなく、二回試験不合格という最悪の事態も招きかねません。また、各種就職活動の面接で、知識不足が露呈すると内定を採れないこともありえます。実務に就いた後も、一般的な弁護士であれば民事訴訟法・刑事訴訟法が重要であることはいうまでもなく、これらの基礎的知識り欠如は実務家として恥をかくだけでなく、弁護過誤として懲戒、損害賠償ということにもなりかねません。最近では、ネットで「無能」と叩かれるリスクもあることから、弁護士として信用問題にもつながります。

 

 翻って司法試験は、実務家登用試験です。採点者は、「この受験生を法律実務家として世に送り出してよいか(厳密には「司法修習に耐えうる能力があるか」でしょうが)」という観点で採点します。もちろん試験ですので、配点や採点基準はあります。しかし、基礎的知識や「六法を参照できるはずの」条文の誤りは、採点者に「この受験生を法律家として世に送り出すのはまずいだろう」という印象を抱かせます。現に私も、同様の感想を抱いたことは一度や二度ではありません。

 

 もちろん、軽微な誤りや見落としは、大きなダメージとはなりません。その程度の誤りはほとんどの受験生もするわけですし、逆に気付いていれば加点事由になるくらいです。
 しかし、結論を左右する、ポイントを外すといったレベルの誤りはどうやっても言い訳ができません。私の採点例でいうと、答案に「×印」をつけかつ、それを積極減点事由としている答案や、「(かなり)まずい」などとコメントしている答案です。点数以前の問題として、受験生として相当危険な状態であることを自覚してください。

 

 返却された模擬試験の成績や講評等を踏まえて、本試験までがんばってください。
(2020.03.25)

 

 先般、大阪弁護士会で行われた「新型コロナウイルスに関する事業者・労働者等向け無料電話相談」について、ウィステリア・バンデル法律事務所弁護士が相談担当を行いました。詳細は守秘義務の関係上差し控えますが、使用者(事業者)・労働者ともに休業補償に関する相談が多かったです。

 

 その上で相談時に感じたのは、こういった騒ぎの時にブラック企業のブラック体質・本性が出てくるということです。解雇にしても、出勤強要にしても、使用者が会社(さらには社長や上司自身)の都合しか考えないということ、そのためには労働者(部下など)のことはどうなってもよいということ。それでも、労働法など法令をきちんと守る、あるいは守ろうとする姿勢を見せればよいのですが、法律すらまともに守る気のない使用者もいます。

 

 その前提として、労使ともに、労働法の基本的に考えすら知らないという人は意外と多い感じがします。ブラック体質は、単に使用者の規範意識・遵法精神の欠如に帰着するだけでなく、法に対する無知からくることもあります。それでも疑問に思って弁護士等専門家に相談していただければよいのですが、思い込みや誤解で判断・実行してしまう例も相当数あります。その結果、労使トラブルに発展し、最悪の場合訴訟ということになってしまうわけです。

 

 事前の相談で防げるトラブルも少なくありません。特に、今回のような非常事態について、特に専門家と密に連絡を取って、対処していただきたく思います。そのためにも、こういった電話相談を利用していただくのは良いですし、当事務所でも労使双方から、可能な限り法律相談等の対応はさせていただきたく思います(なお、当事務所では電話相談は行っておりませんが、スカイプ相談は可能です)。
(2020.03.22)

 


大阪弁護士会「新型コロナウイルスに関する事業者・労働者等向け無料電話相談」
http://soudan.osakaben.or.jp/?p=880

 

大阪)中小事業者らに無料電話相談 感染拡大で弁護士会(2020年3月10日 朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASN39771JN39PTIL01J.html

 

1.はじめに
 司法試験受験生の皆様、いよいよ司法試験まで残り2か月、各予備校の模擬試験も開催されています。私も、受験生の皆様の答案の添削に追われる日々となっています(今年の模試でいえば、約500通くらいになります)。そこで、受験生向けに、模試を添削した感想を書いてみたいと思います。なお、個別の問題についての言及は、個々の予備校との業務秘密の関係上、詳細は差し控えさせていただきます。また、個別の問い合わせ等は、受験指導申込みにて対応させていただきます。

 

2.演習・答案作成不足
 相当数の答案で、演習等のいわゆるアウトプット不足が散見されます。私も通算8,000通以上(現在は10,000通近くになっているかもしれません)の答案をみていると、「書きなれている」受験生かどうかはよくわかります。もちろん、知識の問題等もありますが、たくさんの問題演習を行い、弁護士や合格者等答案を添削してもらうことこそが、王道たる勉強方法です。ごく一部の優秀層を除き、アウトプット量と成績は比例します。そして、このアウトプット不足は後述するすべての問題点にも帰着しますので、これらの問題点を意識しながら、答案作成・添削・復習を怠らないようにしてください。

 

3.問題文の世界・全体像をイメージできていない
 問題文の世界を全体像をイメージできていない答案が多いです。問題文のイメージができていないので、問題の所在を発見できず、事実の指摘や評価についても頓珍漢なことを書いてしまうわけです。採点実感でも、「地に足が着いておらず,何が問題であるかを見抜けていない」(平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問))、「各犯罪類型に該当する典型的事案をイメージできていないのではないか。」(平成24年司法試験の採点実感等に関する意見(刑事系科目第1問))などといわれています。

 

4.答案バランスについて
 司法試験は多くの論点について書かないといけないため、メリハリつけた論述が必要になります。そのため、争いのない部分、前提部分については、簡潔な記載にとどめ、核心的争点について厚く書くようにしてください。そして、「核心的争点」を発見できないということは、問題の全体像を把握しきれていないこと、ひいてはアウトプット量不足にも帰着します。

 

5.採点実感軽視・無視
 採点実感は、受験生にとって重要かつ必読であることに異論を挟む余地はありません(なお、予備試験受験生であっても同様です)。採点実感を読んでいない、理解していないということは、それだけで大きなマイナスとなります。採点実感を読んでいない人は、最優先事項としてすべての採点実感を熟読するようにしてください。

字が読めない・読みづらい
 予備校にとって受験生は「お客様」であり、「お客様」からのクレームの原因になります。そのため、形式面については過度に注意はしない予備校もあります。しかし、本試験において、受験生は「お客様」ではありません。そのため、採点者が「字が読めない」と判断すれば、容赦なく減点する可能性が高いです。そうでなくても、採点者の誤読等による不利益を「受験生が」受けることなります。
 これを形式的な問題として軽視する講師等もいるようですが、はっきりいって致命的欠陥です。採点実感でも毎年のように言及があるところですので、採点者側も「採点実感軽視・無視」として、減点する正当性も認められます。
 上記予備校の事情から、目の余るものについてのみ、オブラートに包んで指摘しています。そのため、コメント等で字について言及のあった方は、かなり深刻な事態ととらえてください。その上で、とにかく読める字を書くように努めてください。

 

6.理由不備・説明不足
 ここでいう「理由不備・説明不足」は、ひとつの事実・法的評価を示すための理由や説明がないという意味です。おそらく、受験生は頭の中ではわかっているのでしょうが、その思考過程を答案に示さないと、採点者からすると唐突感しかありません。時間がないのでそこまで書いていられない、という批判もありますが、別に長々と書く必要はなく(それはそれでマイナスです)、簡単に一言二言で説明すれば十分です。その一言二言で答案の印象はかなり違いますし、成績にも大きく影響します。
 面倒ですが、理由・説明も忘れずに書くようにしてください。

 

7.おわりに
 すべての論点をきちんと書いた答案はむしろ少数で、一応の水準上位から良好の下位までの受験生でも、致命的な論点落としが散見されました。いわんや、ほとんどの受験生が気づかなかった論点もあります。その上で、合否を分けたのは、上記諸点の欠陥が相対的に少ない答案です。極論すると、答案構成は同じでも、上記諸点の欠陥の有無で、合否を含め順位は大きく変わるということです。

 まだ、本試験まで2か月あります。模試の成績や講評等を踏まえて、本試験までがんばってください。
(2020.03.15)