ラインメタル130㎜滑腔砲(考察) | 軍曹!時間だ!…

ラインメタル130㎜滑腔砲(考察)

今回ラインメタルから130㎜滑腔砲のリリースがあったことで驚いた方は多いだろう。

130㎜?なぜ?

140㎜の間違いなのでは?

 

実際にラインメタルでは新戦車用として140㎜滑腔砲を開発していた。

と言っても15年以上前の話だ。

「第34回 砲と弾薬 シンポジウム&展示会」(1999年4月26日~29日)

「ドイツの140㎜将来戦車砲に関する研究- 従来型とETC -」より

 

当、シンポジウムでは将来主力戦車の主砲として採用されるであろう従来砲、ETC(電熱化学砲)、EM(電磁砲)の3種類から140㎜の大口径とした従来砲と120㎜電熱化学砲が提示されていた。

電熱化学砲は2017年以降、電磁砲は2030年以降を予定していたが、2017年を来年に迎える本年ですらその動向は不明といえる。

特に、欧州では戦車戦力の大幅削減によって戦車開発はとん挫した状態にあったが、ロシアの新戦車T-14の出現によりやっと活性化したといえる。

といってもラインメタル120mmを装備する各国に対し新たな儲けを考えているのが正直なところではないかと邪推する。

【140㎜砲寸法】

上のラインメタル戦車砲の図で気付かれると思うが、120㎜L55と140㎜はほぼ同じ長さだ。

口径長の記述はないが120㎜L55の砲身長とされる約6600mmと同等とすると140㎜L47となる。

【140㎜砲重量】

120㎜L44が砲身重量1190kg、120㎜L55は砲身が約1.3m伸びて1347㎏と150kgほど増加している。砲身先端部で150㎏強の重量増加という事はバランス取りのために砲尾に4~5倍(600~800kg)のカウンターウエイトが必要という事を示す。

つまり、L44からL55に換装するという事は約1tの重量増加を意味するのだ。

120㎜L44の全備重量は3317㎏であるから120㎜L55は4300kgほどあると言えよう。

それが140㎜となれば更なる重量増加となるわけだ。

画像見るだけで重そうだな。

【新滑腔砲130㎜L51】

そこで今回の新滑腔砲130㎜L51である。

砲身長は6630㎜で120㎜L55と同等だ。

全備重量は3000㎏で120㎜L44よりも軽い。

もっとも、130㎜L51の全備重量は実装する際の部品重量は入っていないので同等と言えよう。

【ねらい】

現、120mL55を搭載している戦車ユーザーの砲換装を一番の目的としながら、その軽量化で120㎜L44ユーザーをも取り込もうという壮大な計画であるに違いない。

【なぜ140㎜砲をやめた?】

当時、各国で140㎜砲の試験を行っていた。

目的は120㎜砲に対し2倍の威力を与えるという触れ込みだ。

これって、砲口パワーなので厳密には貫徹力に影響しないともいえる。

上図はネット上で拾った貫徹威力線図である。

DU(劣化ウラン)弾、WHA(タングステンへヴィーアロイ)弾、Steel(鋼製)弾の貫徹力を表している。

出どこが不明で、信ぴょう性の有無もあるのだが、DU弾がWHA弾に対し15パーセントほど優位というのが的確に示されており興味深い。

また、こんな資料もある

RUAG社の軽量120㎜戦車砲のカタログ内データである。

両方の線図で注目する点は速度が増せば貫徹量が比例的に増えるというものではないという点である。

最初の線図ではDU弾が着速1500~1700m/sで最適な貫徹力を持ち、WHA弾は着速2000m/s付近で最適な貫徹力を持つことになる。

弾芯の形状はどちらも現用弾の寸法を逸脱しない、つまり1m未満の砲弾全長に組み込まれる弾芯である。

砲弾長が1mとした場合薬莢底部圧さ及び火管(発射薬を燃焼させるための装置)を考えると飛翔体の全長は最大でも900㎜である。飛翔体は先端に風防、後部に曳光剤が入った翼部を備えるために「-150mm」となり貫徹体である弾芯全長は750㎜程度が限度となる。

ここで、貫徹線図に戻って最大貫徹量を見てみるとDU弾は一番柔らかい鋼板(BHN250)に対し710mm、WHA弾は同750㎜程度であることが分かる。

よく、「APFSDSの最大貫徹量は弾芯の長さ」というのが証明されていると言えよう。

 

話が横にそれたようだが、140㎜を捨て、130㎜にした理由がここにあると考える。

口径を増し発射薬量をいかに増やしても従来の火薬を使う方式では初速2000m/sが限界と言われている。

140㎜滑腔砲は分離装弾方式を採用していたため弾芯寸法は120mm砲と変わらないというものであった。つまり、120㎜であっても140㎜と同じ初速が得られれば同じ貫徹力が得られるという事である。140㎜の存在意義がなくなるのである。

今回の130mmL51の最大の着目点は1.3mの砲弾長である。

300㎜長さが増えたと言うことは単純に現用120㎜に対し300㎜貫徹量が増えるという計算となる。だったら140㎜砲弾を1体型にすればいいという意見もあろうが、今度は約2mという長すぎる砲弾長は輸送、搭載、取り回しが非常に不便なものとなり、実用的ではないのである。

 

ということで、妄想満載の考察(了)