61式90mm戦車砲、実は50口径だった!
私自身、新隊員や初曹課程の教育において61式戦車の90mm砲は、米軍のM3(M3A1)90mm砲を元に砲身延長して52口径としたものであり、「90㎜戦車砲M3(改)といえる」と教育を受けた。
確かに、61式戦車教範(案)である『61式戦車の火器器材の取り扱い及び乗員訓練(草案)』にも「砲身長:52口径」と記載してある。
戦車砲の全長は473.0㎝と記載してあり、計算すると473.0÷9=52.55555…であるから小数点以下を切り捨てると52口径、四捨五入すると53口径となる。
さて、90mm砲M3(90mm, GUN, M3)の諸元はいかがなものであろう?
テクニカルマニュアル『TM 9-374 90mm GUN M3 MOUNTED IN COMBAT VEHICLS(1944.9.11)』を参照してみる。
① の「Length of tube(muzzle to rear face of breech ring)」和訳(意訳)すると「砲身長(砲口から砲尾環後面まで)」が186.15インチであり、単位をセンチメートルに変換すると472.821cmにり、小数点以下を四捨五入すると!!
「473cm」
どこかで見た数字だ。
② のLength of bore(砲腔長)は50cal、つまり50口径である。
現在では口径長は砲腔長であるのが一般的である。
ここで、61式90mm戦車砲の資料を見てみよう。
仮制式要綱 XB 3002C 『61式90mm戦車砲(C)』に記載されているのは
「砲身全長 約4730mm(制退機を除く)」
おっと、数値がM3の砲身長(砲口から砲尾環後面)と一致したぞ?
余談だが、仮制式要綱の原文及び図面ともに「制退機」表記だが、正しくは「制退器」だ。
61式戦車教範(案)では、本文中には「砲口制退器、排煙器」と記載しているが掲載図面には「砲口制退機、排煙機」と記載されている。仮制式要綱の図を基にしたためであろう。
話を戻す。
61式90mm戦車砲の砲身全長とはどこからどこまでを表しているのか調べてみる。
同要綱に記載された図面を見ると砲口制退器を含まない砲口から砲耳中心までが3468mm、砲耳中心から砲尾環(閉鎖機)後面までが1262mmであり、足すと4730mmつまり、473.0 cmになる。
このように、「砲身全長」とは砲口制退器を除いた砲口から砲尾環の後面までの長さであり、90mmM3砲の「Length of tube(muzzle to rear face of breech ring)」と同じものである。
仮制式要綱には「コウ(腔)内全長」という項目があり「約4509mm」である。
「腔内全長」とは砲身のみの全長、つまり現在では一般的な「砲身長」であるから口径の90mmで割ると
「50.1」
となり「50口径長」であることが分かる。
61式90㎜戦車砲は90mmM3砲と同じ寸法であることが結論付けられるのだ。
では、どこから「52口径に伸ばした」という話が出てきたのだろう?
推測でしかないが、M3の50口径(砲腔長)に対し52口径(砲全長)という対比と徹甲弾の初速がM3砲は2800 ft per sec(823m/s)に対し61式は915m/sと高いところから初速が増したのは砲身が伸びたからと考えたのだろう。
実際にはM3砲の徹甲弾には炸薬入りのM82 APCと無垢の鉄鋼製のT33 APの2種類があり、どちらも初速は2800 ft per sec(853m/s)にそろえてある。61式戦車砲の使用した徹甲弾はM318A1というT33APの装薬を増やし初速を増した砲弾になるのである。
証拠に、61式戦車教範(案)に掲載されている照準装置の鏡内目盛(レチクル)には以下のように弾種が記されている。
・HE M71 MV 2700
(M71榴弾、初速2700フィート)
・APC-T M82 MV 2800
(M82曵光被帽徹甲弾、初速 2800 フィート)
・APC-T M82 MV 2670
(M82曵光被帽徹甲弾、初速 2670 フィート)
・HVAP-T M304 MV 3350
(M304曵光高速徹甲弾、初速 3350 フィート)
この鏡内目盛り(レチクル)は初期のものである。
他中隊に極初期型(量産7号車)があり、目盛りが違うという話は聞いていたが残念ながら私自身は見たことはない。
私が扱った61式戦車の照準具の目盛りは以下の通り
・HE M71 823m/s
(M71榴弾、初速823m/s)
・AP-T M318A1 914.4m/s
(M318A1 曵光徹甲弾、初速 914.4m/s)
・HEAT-T M431 1170m/s
(M431曵光対戦車榴弾、初速 1170m/s)
M313 WP(黄燐発煙弾)は榴弾目盛りを使用することになっていた。
74式戦車 G型
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ああ・・出ちゃうんだ。
74式戦車G型
正式品名は「74式戦車(改修)」
形式は「74式(改)だ。
74式戦車(G)量産1号車の銘板
補給カタログに記載されている制式名は
「74式戦車(G)、照準暗視装置付き」である。
名称がたくさんあって面倒である。本ブログでは「74式戦車(改)」と記述する。
74式戦車(改)は平成6年(1994年)3月31日に平成5年度予算として契約金額約4億円で4式(4両)の改修が承認され、1式が平成6年9月30日、残る3式が平成7年3月31日が納期期限とした。
改修車両は機甲教育隊の「74式戦車(E)、照準暗視装置付き」4両であった。4両とも平成2年度(1990年4月~1991年3月)に新車納入された最終ロットの「74式戦車(D)、照準暗視装置付き」を(E)に改造したものだ。
平成5年3月に発簡された改修実施要領の案
平成2年度に購入、平成3年~4年で試験、平成5年から改実施となっている。
平成2年度の「購入」という表記の通り、戦車教導隊の74式戦車1両がメーカーによる改造を受け、それを参考品として購入したわけである。
これが「試作車」と呼ばれる車両番号「95-6447」の戦車である。
車両番号の最初2桁が試作車の「99」ではなく「95」であるのは「試作車」ではなく「参考品」というややこしい理由による。
2011年の富士学校記念行事で並んだ74式戦車(改)の試作車(参考品)95-6447と量産型の95-6114
95-6447は試験後に元の状態に戻された。
砲塔上のレーザ検知器の台とフロントフェンダーに(G)の痕跡がうかがえる。
また工具箱の所にあるサイドスカート取り付け基部の形状が異なってるのが分かる。
また、イラストには発射発煙装置が60mm発煙弾発射筒ではなく76mm発煙弾発射機になっているのは換装予定もあったようである。予算難から換装は偵察警戒車のみ実施された。また、反応装甲(ERA)も予定していた。
なお、車両番号は以下の通り
参考品車両(試作車)
95-6447
量産車(4両)
95-6409
95-6114
95-6495
95-6852
【2023.11.22追記】
過去記事もあったのでよろしければ