新国立劇場バレエ「ラ・バヤデール」@オペラハウス | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 マリウス・プティパ/演出・改訂振付 牧阿佐美

音楽 レオン・ミンクス/編曲 ジョン・ランチベリー

柴山紗帆/速水渉悟/木村優里/石山蓮/益田裕子

 

 速水さんのソロル・デビューの回を観てきました。速水さんはそのダイナミックなダンス・テクニックがいいな~と以前から思っていて、プリンシパルになり、これから真ん中をいろいろ踊っていくのを楽しみにしている。だから今回のソロル、期待マックス。ところが、う~ん、彼はもしかしたら演劇的表現はダメなのかも、という不安が😓

 

 速水さんソロルは登場したその瞬間から凛々しさみなぎる戦士そのもので、ダンスも申し分ない。力のあるジャンプ、華やかなマネージュ、伸びとキレのある大きな動きが見事。でもね……例えば婚約披露宴の場で、ガムザと結婚するのだと腹をくくったところにニキヤ現れてから彼女の死までの展開、ソロルの心の中では嵐が吹き荒れているはずです。でもその、動揺、後ろめたさ、苦悩、迷い、葛藤、後悔、絶望、そういう心情が全く伝わってこなくて😔 なので、あのシーンがドラマティックな見せ場になりきれてなかった。

 ソロルをどう造形するかはダンサー次第だけど、ソロルって実は演劇的表現がすごく大事な役なんだなと再確認しました。愛しているのはニキヤだけなのか、ラジャに逆らえないとは言えこのまま結婚してもいいくらいにはガムザを気に入ってるのか(ガムザに対する表情や接し方を見てるとそう思う)、それはダンサーごとに解釈があって、ニキヤ・オンリーとしても2人の間で揺れ動いてるとしても、それなりのドラマの見せ方があるはずなのに〜。

 速水さん、その前のもね、1幕でのニキヤとのPDDもそんなにラブラブには見えず、宮廷でガムザを見た時その美しさにフラ~となるところも控えめな動きだったし、蛇に噛まれたニキヤが「この人がやったのよっ!」てガムザを鋭く指差したときも、速水ソロルったら何の反応も見せず立ってるだけだったしな💦 繊細な内面表現ができてなかった。

 今回のお役についての速水さんのインタヴュー記事を読んだんだけど、ソロルの造形についてイマイチはっきりしないと言うか、当たり障りのない解釈してたから、ちょっと肩透かしではあったんですよね。それらしい(決まった)所作をすれば感情を表現できるわけはなく、感情を表すことで自然にそういう所作になるのが演劇的表現。そこまでになるのは簡単なことではないけど、いつかブレイクスルーしてほしいです🙏

 

 ニキヤの柴山さん。私は柴山さんのダンスを役柄としてちゃんと意識して観るのは初めてかも(基本、キャスト違いでのリピート鑑賞はしないので、柴山さんのステージを観る機会がなかった)。長い手脚で見せる表現が雄弁で、踊りもくっきりしていると思えました🎉 ニキヤの、悲しみを湛えながらも芯のある女性としての姿を体現していたと思う。寺院でのソロルとのダンスでは情熱をあらわにしていたし、宮殿でガムザに会いソロルの婚約を知った時には悲嘆と同時に怒りも見せて、感情表現がストレート。フルーツボールに置かれていたナイフを目にしてハッとし、咄嗟につかんでガムザに向かっていくところも自然な演技だった。花籠のダンスのときは、(上階からの観劇ゆえ)ソロルの動きをオペラグラスでロックオンしていたので、ニキヤは見られなかったの申し訳ない🙇‍♀️ 影の王国ではもう少し崇高さが現れるといいなとは思ったけど、どうなんだろう。

 

 ガムザッティの優里さんその美しさと出自からくる絶対的な自信、ひんやりとした冷たさ、とても良いです🎊 宮殿でニキヤを呼びつけ、その意志の強さに嫉妬心燃やして、幕切れ時にキッと真正面を向いて何かを決意する表情が印象的。婚約式ではニキヤが出てきても落ち着きはらい、ソロルに「どうしたの? 彼女の踊りを見ましょうよ」という感じで余裕の誘導、ニキヤが近づいてくるのを察して、ソロルの方に手を差し出しキスをさせる(そこをニキヤに見せる)という仕草にも傲慢さがあって素晴らしいです。そして、踊るニキヤを見ているソロルの方に身体ごと向けて、その彼の顔をじぃっと凝視してるの、こ、怖かった🥶 さながらカエルを睨んで身動き取れなくする蛇のようでしたー。

 

 パ・ダクションは池田理沙子さん五月女遥さん奥田花純さん飯野萌子さんがキリッと締める。同じ振付だけど少しずつ個性が見られて面白いなーと思いました。影の王国は言うまでもなく素晴らしかったけど、ヴァリエーションは3人とも初役のようで、ちょっとヒヤッとしたところもあったな。

 寺院崩壊は、脳内がすっかりマカロワ版のソレになっていたので😅 牧版は少ししょぼいなって思ってしまった。でもニキヤを裏切ったソロルは赦されず、ニキヤの元に行けないまま崩れ落ちる、その倒れたソロルを振り返って見もせず完全無視して去っていくニキヤ……というエンディングは大変よろしいと思いました。

 

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