振付 マーティン・シュレップァー
音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
感動まではいかないけど見応えはあり、結構楽しく観ました👍 まあ、「全く新しい『白鳥の湖』」とか宣伝してたけど、「白鳥の湖」の読み替え版はもうたっくさんあるから、この程度なら普通だよという感じでしたが😄
原典版音楽を使っていることとオリジナル台本にこだわったというのが売り。オデットは魔法使いである継母によって呪いを掛けられている(ロットバルトは継母の単なる手先)、本当の母親は亡くなっているけどその父(オデットの祖父)がオデットを守ってくれている……というのが元原に沿った変更。でもあとは、昼は白鳥に変えられるオデット、まだ結婚したくない王子、王子はオデットに愛を誓ったのにオディールに騙され、オデットを探して湖へ……と、お馴染みの展開です。
プログラムで振付家が、各キャラクターの心理的背景や存在意味、作品に投影した現代性、人間界と魔法界における階層と対立構造、トゥシューズと素足の意味など、作品をとても丁寧に解説しています。でも、そこまで深く高度なものを感じることはできなかったな。そもそも、そこまでのものをセリフのないダンスで見せるのは無理😔
そうそう、オディールは、オデット役とは別のダンサーでした。オディールは継母が創り出した魅力的な怪物という設定。オデットに似てないのに、王子はその魅力に惑わされ溺れてしまったということらしいです。これは割と面白いかなと思いました。2人のPDDはドラマティックではないけど良かったし、自分の内なる声やベンノの警告を振り切ろうとする王子の葛藤も興味深かった。その3幕では、3人の花嫁候補たちがそれぞれ王子と一緒に踊り、ぐいぐいと自己アピールしてくるのが面白かったな😊
振付はクラシックとコンテをミックスしたもので、手首、足首、膝などを外側に直角に曲げる動きや、身体をかがめる動きがよく見られ、逆にリフトはあまり多くない。全体的に下半身に力を要するような感じで、要はコンテ寄りかな。すごく斬新という振付はなかったけど、柔らかさとスピードによるメリハリを感じました。キャラクターの苦悩など感情も振付やマイムでうまく表現していた。
面白かったのは、時々音楽の流れが止まり、無音の中でダンスやマイムがあることです。継母が心情を語ったり、オデットと祖父が事情を王子に説明したり。ただ、これが3度4度続くとちょっとうるさくなってきて、逆に、なぜわざわざ無音の中で演技させるのか分からなくなってきましたが😅
ダンサーたちは素晴らしかったです。振付が優雅さや様式美より生身の力強さやリアルな心理表現を求めていることもあり、皆、強靭なダンステクニックとクリアな表現力を持っている。オデットは小柄だけど手脚が割とガッシリした筋肉質のダンサーだったな。他の白鳥群舞も何か強そうで、彼女たちのダンスはスピードとパワーがあり、意志の強さを感じた✌️ 王子役も、時に繊細な、時に激しいダンスを疲労。悩める青年の雰囲気も十分でした。2幕のオデットと王子のPDDは会話が聞こえてきそうな良いシーンだった。あと印象に残ったのはロットバルトかな。ジャンプや回転がキレッキレでしたね。
実は結末が分からなかったんですよー😩 王子に誓いを破られ瀕死状態のオデット、助けようとして触れた祖父が感電?して倒れ、オデットは結局死んで、嘆く王子に抱きかかえられて去り、なぜか継母が絶望の中で死んでいって? 最後は祖父が息を吹き返す、でいいの? それ、どういう意味なんだろ🙄 最後に消化不良を起こしました😑
この公演、フライヤーやウェブサイトでのキャッチコピーがすごくて「ヨーロッパを震撼させた……衝撃の初来日」😅「古典とモダンを融合させた演劇的アート作品」😅「クラシックバレの概念を変える個性的な演出」😅とか、振付家がいかに凄い人か😅っていう記事の洪水。何かものっすごい作品が来るみたいな錯覚を起こしかけたけど、主催・招聘サイドが鳴り物入りで宣伝するほどではなかったし、そもそも今回はプロモーションの仕方がピントを外していた感ありありだったな。💦
でも、個人的には嫌いなタイプの作品/振付ではないので、この振付家の、別の作品、全幕物ではなく短い作品を観てみたいと思いました。