【映画】「ブルックリン」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

ブルックリン

鑑賞日: 2016年7月10日

 

 

好き度: ★★★★★ 5.0/5.0点

 

 

 

「忘れてた。ここはそういう町だった。」

   ―――「ブルックリン」が「俺の映画」であるワケ

 

 

 

映画を毎週何本も何本も観ていると、何百本に一本くらいは「これは俺の映画だ!」という映画と出会うことってあるわけですが、この「ブルックリン」はまさにそうで、これは僕のための映画だ!と観た後に思いました。もちろん今年のベストはこの映画だし、人生の中でも大事な一本になるような、そんな気すらしています。それほど、激しく自分の中にある「何か」が揺さぶられた、そんな映画になってしまいました。

 

 

 

 

物語のあらすじは、、大人しく目立たない性格の少女エイリシュは、妹の将来を案じた姉の勧めで、アイルランドの小さな町からニューヨークへとやってくる。それまでとはあまりに異なる大都会での生活に戸惑うエイリシュは、しかし、イタリア系移民の青年トミーとの恋をきっかけに大きく変わっていく。洗練されたニューヨーカーとして生き生きと日々を過ごすエイリシュだったが、そんな彼女のもとに故郷からある悲報がもたらされる。(映画.comさんより)

 

という感じで、これ、移民の話なんですよね。で、これをこちら側に引き寄せるとこれ上京物語だと思うんですよ。

 

地元というものの窮屈さ、ドン詰まり感。そしてそこから抜け出し、上京したときのあのワクワクと不安。そしてふっと地元に帰った時の安堵感と、それと少し遅れてやってくる絶望感。この上京から帰省までの流れのこのリアルなあるあるっぷり!この彼女の心の流れがあまりにもわかりすぎたというか、とても他人事とは思えない、まさに「これ、俺じゃん」感がほんとにすごいレベルで。そして、彼女がとる最後の選択にとても不思議な気持ちになった、このラストの彼女の選択こそがこの映画が僕にとって特別なものになった理由かもしれないなぁと思っております。。

 

 

 

 

こっから僕のお話になっちゃうんですが、僕はほんとにずっと地元が嫌いだったんですよね。中学生くらいになると、絶対にここを脱出して東京に行くんじゃ!と心に決めてたくらい(笑)。で、大学進学を機に上京するわけです。遠く離れた東京に。ほんと西日本の最果てみたいなところなんですけど、東京になんとしても行きたい!なんていう人は正直多くないんですよ。けっこうみんな地元にうまいことおさまっちゃうというか。これ東京出身者からすれば意外らしいんですが。。で、やっぱり「ここじゃないどこか」に行きたい人はでもやっぱり確実にいて、一緒に東京行こうな!なんて言い合ったりするんですが、、やっぱり田舎から上京となるともう人生をかけた一大行事なわけですよ。もちろん行きたくても行けない事情が出てきちゃって、泣く泣く上京を諦めて地元で頑張っていくことを選択せざるを得なかった友達なんかもすごい見てきたんですよね。だから、あのお姉さんに申し訳ないな…でもすごく楽しみだな…というアンビバレントなあの気持ち、姉に送り出された時のあの表情、すっげぇわかる!!

 

 

そんでもって、アコガレの東京は、案の定というべきか、やっぱりめちゃくちゃおもしろいわけですよ(笑)僕はホームシックとかはゼロだったんですが、周りにはホームシック的になる友達もいたし、あの慣れない土地での慣れない生活。希望と焦りと、ふとした時にどっと疲れが来て、「あ、俺めちゃくちゃ緊張状態で生活してたんだな」感というかさ、だからもうアメリカに渡ってからのシアーシャ・ローナンには心の底から応援の気持ちが湧き上がってましたね。「がんばれ!ツラいのは最初だけだよ!」と、抱きしめてあげたくなりましたよ。

 

 

あと、すごく批判されてるような気がしなくもない、シアーシャ・ローナンが一時帰国してからの彼女の行動。すごくズルく流されてるように確かに見える。でも、ちがうんですよ。あのカンジもすっげぇわかるんですよね~。別に好きじゃなかった、いやむしろ嫌いという気持ちが強くて地元を出たはずなのに、ひっさびさに帰ってみると何とも言えない安心感がこみあげてきて、今まで感じなかったような居心地の良さを感じちゃう。もっと言うと地元に甘えちゃうあのカンジ。久々に帰るから周りもとにかくチヤホヤしてくれるし、こっちはこっちで地元にちょっとでも帰るということは何が何でも成長した姿を見せなければならないという強迫観念があるわけです(笑)だから自分が思う一番良い服を着て帰るし(笑) もしかしたら、俺東京に行かなくても良かったんじゃね?なんて思うようになるんですよ、一瞬ね…。1週間もすれば、でもやっぱり見えてくるんですよ、地元のドン詰まり感と絶望感が。

 

主人公のセリフ「忘れてた。ここはそういう町だった。」っていうあのセリフ。これ今年の僕のベストフレーズ決定ですよまじで(´Д`)ほんっとにああいう気持ちになったし、ほんっとにああいうセリフを言った記憶が自分であるくらい。だから、これ上京組あるあるかもしれないですが、地元に帰省するのなんか、はじめの一年くらいですよ(笑)あとは、地元よりももっと居心地がよく進化した東京に居続けるわけです。(まぁ地元が心底好きだったり、東京が合わなかった人は別ですが…。)

 

 

で、この映画の主人公はもうダメだと地元を諦め、新しい故郷となったアメリカに帰っていくというところで映画が終わるんですが。この彼女の選択にめちゃくちゃ泣いた。

 

というのも、僕は、そりゃ東京にいたかったですよ!最高だもん!それなりにやりたいこともあった!それなりに切り捨てなければならないこともあった!……でも、「人生するかしないかの分かれ道でするほうを選んだ」ロッキー、または「でもやるんだよ!」な根本敬ばりにというのは言い過ぎですが、真にやらなければならないことの方を選んで、そして東京を離れ地元に帰ることを選んだんですよね。(美化しすぎ!)

 

だから、映画で彼女の選択したほうの逆を僕はとったんですよ。これがねぇ、すごく不思議な気持ちになった。つまり彼女は僕の「あったかもしれないもう一つの選択肢」を取ったところで映画が終わったんですよね。僕がその選択をしてから3か月くらいですけど(つまり社会人3か月)、なんかこれでね、僕の心の中にでもやっぱり確かに存在してた一抹の「あの時こっちじゃない選択肢を取ってたらどうなってただろう」というほんと一抹の後悔の念みたいなものがすーっと晴れたような気がしたんです。それはなぜか。「僕の分身だ!」と思った映画の中の彼女が僕がとらなかった方の選択肢を取ってくれたから。映画の中かもしれないし、間違いなくフィクションだし、でもね、僕は、映画の中の彼女と、そして多元宇宙のもうひとつセカイで今とは違う方の選択肢を取ったもうひとりの自分の幸せを心底願ったというか(笑) 彼女が最後に彼と抱き合った瞬間、僕の中の何かが報われた気がしたんですよ。(自分でもなかなかヤバい文章だとと思うw)

 

 

 

それくらい、この映画、もうなんかね。他人事で片づけることはできないし、タイミング的にも今ここで出会えてよかったし、何より観たのがたまったま東京で観たんですよね。ちょっと所用で東京に来てた時に角川シネマ新宿で。そして、彼女でありもうひとつの世界で生きているであろうもう1人の僕が、今後ずっと幸せでありますようにと、涙を浮かべつつ、僕は僕の選んだ選択肢のほうを必死に生きなきゃな、と思ったわけでした。。なぜなら、彼女も頑張ってるだろうからね。負けてられませんな!

 

 

まぁとにかく、すべてが愛おしい。彼女の強さ、彼女の弱さ、彼女のズルさ、彼女の涙、彼女の笑顔。すべて肯定したい。そんな映画でした。

 

というわけで、今年1位はほぼ確定かな?という「ブルックリン」の感想でした。

 

 

 

おわり