今日は「空の歌」をひと休みして毎月買っている「レコードコレクターズ」からのネタです。4月号は編集後記で佐藤有紀さんも書いているように10年ぶりの発売となったボウイの新譜を巻頭にジミヘンの新譜、フリートウッドマックの『噂』DX盤、大滝師匠の『NIAGARA SONG BOOK』30周年盤、レイモンド・スコット、シュギー・オーティスと10P以上の特集が6つという大判振る舞いで、いつもに増して読み応えがあります。師匠のインタビューでは『SONG BOOK』でのストリングスの参考としてホリーリッジ・ストリングスの『ビーチ・ボーイズ・ソングブック』を井上鑑に渡したと書いてあり、慌ててCD棚からCDを探したり。
表紙はデビッド・ボウイの『ネクスト・ディ』をベースにしたデザインになっているのですが、裏返すと面白いお遊びが。
EMIによる『ネクスト・デイ』の告知なのですが、表紙と同じようにレコード・コレクターズのロゴが書かれていてあれっこっちも表紙と一瞬思ってしまいました。
特集ももちろん面白かったのですが、楽しみは連載記事。一番の楽しみである「洋楽マン列伝」は日本フォノグラムで洋楽部長を努められていた北澤孝氏。ポール・モーリアの「ペネロペ」（ユリシーズの奥さんの名前）というシングルに「エーゲ海の真珠」という邦題をつけてヒットさせた方です。
70年代半ばに契約が浮いていたシェルターを獲得し、フィービー・スノウのデビュー・アルバムを第一弾として発売することになったそうです。そのデビュー・アルバム『Phoebe Snow』のジャケットが上にアップした写真になるのですが、LP時代にこのアルバムを聴いていた方でしたらアレっと思われるのじゃないでしょうか？何か違うぞ・・・・
このアルバム、バックにテディ・ウィルソン、ズート・シムズ、ボブ・ジェームス、スティーヴ・ガッドというジャズ界の大物やデヴィッド・ブロムバーグという職人ギタリストが参加ということで注目のアーチスとはいえたのですが、まるっきりの新人ということで伊澤氏は日本で売れるための仕掛けを施します。
＞75年のデビュー盤は『フィービー・スノウ』ってタイトルだったのを『サンフランシスコ・ベイ・ブルース』に変えて出した。ジャケットも彼女の横顔だけだったけどイメージがわかんないからって金門橋の写真を重ねちゃった。
まずは都会的なブルースという趣の内容を分からせるために収録曲でブルースというタイトルの付いている「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」に注目しアルバム・タイトルにしてしまいます。井澤氏はサンフランシスコ・ベイ・ブルース』と言っていますが正しくは『サンフランシスコ・ベイ・ブルース～ブルースの妖精フィービー・スノウ』というもので「ブルースの妖精」とこれでもかと「ブルース」を強調しています。
そしてアルバム・タイトルが『サンフランシスコ・ベイ・ブルース』となったので今度はサンフランシスコを強調しようということなのでしょうか、当地の象徴ともいうべき金門橋（Golden Gate Bridge）の写真をコラージュしてしまいます。
念の為に言っておきますが、ボブ・ジャームスやスティーブ・ガッドというバック・メンバーを見てもお分かりのとおりフィービー・スノウはNY生まれでNYで録音されたアルバムでサンフランシスコとはなんの関係もありません（笑）。
当時LPでこのアルバムを聴いていた僕は井澤氏の仕掛けにすっかり騙されフィービーを西海岸のシンガー・ソング・ライターと思って聴いていました、やれやれ。確かにそう言われて日本盤のジャケを見直すと「イラスト」の横顔に「写真」の金門橋というのはデザインとしておかしいですよね。まぁこのジャケと邦題のおかげもあったか、日本でもこのアルバムは売れていたしフィービー・スノウという名前もきっちり頭にインプットされましたから結果オーライなんでしょうが、フィービーがこの日本盤のジャケを見たときにどう思ったのか知りたいと思いませんか（笑）。
San Francisco Bay Blues | Phoebe Snow
レコード・コレクターズ 2013年 04月号 [雑誌]/著者不明
NIAGARA SONG BOOK 30th Edition/NIAGARA FALL OF SOUND ORCHESTRAL
Beach Boys Songbook/Beach Boys
Phoebe Snow/Phoebe Snow
ザ・ネクスト・デイ デラックス・エディション(完全生産限定盤)/デヴィッド・ボウイ
