田舎のない私に幼いころはおじいさんの実家が田舎になった。

お爺さんは丹沢の麓のミカン農家の出身。

家は合掌作り。

裏は丹沢の泉が沸く池に鯉、そばでは鶏が走っていた。

奥の竹やぶではわきに防空壕。

今は倉庫になっていた。

代々続く、海軍の家。

お爺さんも大正時代戦はなかったが横須賀に軍艦金剛に乗る。

当時はみな蒸気機関、釜をたかなければ船は動かない。

軍務は日本海を守る第二艦隊、舞鶴が母港。

艦長は松平家の血筋だったという。

海軍は近代的。

母港では三交代で釜を炊き続ける。

航海に出ると右舷左舷で二交代。

敵に合えばというと、

休んでいたら撃沈されてしまうよという。

何しろ当時は港にいてもいつ出撃ができるよう釜の火は落とさなかったという。

それが平和を保ったのだと、93のお爺さんは最後に言う。

海の国。

戦はしてはならないと祖父の話は終わる。

今日も父の家で戦争の本を整理する。

何とか今日で終わりにしよう。