今年の経済は難しい、鍵は米国だ・・・その一(山本紀久雄氏) | 清話会

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街角ウオッチング124号
今年の経済は難しい、鍵は米国だ・・・その一

山本紀久雄氏(経営ゼミナール代表)



今年の各立場から見た日本経済

新年明けましておめでとうございます。

まず、2012年の日本経済はどういう展開となるのか。それを各立場の予測を整理してみることから始めてみたい。

(1)経営者⇒社長アンケートによると国内景気は「悪化している」と「横這い」で76%を超え「順調に拡大」はゼロ回答(2012年12月26日 日経新聞)。日本航空の大西社長は「今年の景気について『こうなると言い切れる胆力のある経営者は今いないのでは』としつつ『悪いという見通しで 構えをつくる必要がある』と発言。(2012年1月3日・日経新聞)

(2)民間エコノミスト⇒歴史的な円高や欧州債務危機などのリスクを抱えながらも、日本経済は実質2%前後の成長軌道で推移するとの見方で一致。 (日経新聞2012年1月3日)

(3)日銀短観⇒日銀が12月15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、日本経済が、急減速海外経済と比較的堅調な内需の綱引きに なっている状況を浮き彫りにしている。

(4)政府財政投資⇒復興需要投資に加え、2012年度予算案で公共事業費が実質的に11年ぶり前年比11.4%増に増える。

経営者は弱気、エコノミストは条件付けながらも順調に推移すると見ている。


不透明要因は世界経済

昨年当初、日本経済は順調な歩みを始めたと思った途端、東日本大震災と原発という国内危機、続いてギリシャから始まった欧州危機、タイの洪水危機 と続き、加えて、超円高がのしかかり、苦しみの経済運営であった。

今年はどうか。国内要因からは大きな不安要素は見当たらない。返って復興需要の本格化と、公共事業費増がある上に、予てから批判の的であった日銀 が、マネタリーベースを増やした変化、これは日銀が政府と協調して円高緩和策の実施であるが、これが続けば円相場は円安局面に転じる可能性が高い ので、日本経済にとってはフォローである。

しかし、問題は海外経済である。先の見えない欧州ユーロ情勢、米国の景気回復懸念、中国の景気減速傾向など材料に事欠かない。

さらに、昨年の3.11のように、現実の世界は予想できないことがおきるから、先を楽観的に見通すことはやめた方がよいだろう。

だが、期待しないという条件下で「予想を裏切る景気回復」もあるかもしれないという「嬉しい誤算」も視野に入れておきたい。


意見が分かれる米国経済

欧州危機状態はしばらく片付かない。だから期待できない。中国はバブル崩壊という状態になったとしても、日本と違って土地は国有であるという前提 条件で考えれば、それは上物のマンションバブル崩壊であるから、景気減速といってもそれなりに経済は動いていくのではないかと予測する。
ところが、米国については先行きどうなるのか予測が難しく、見解は二つに分かれる。

(1)米国ではリーマンショック後のバランスシート不況に苦しんでいる。2008年初めから四半期ベースでみた実質個人消費の伸び率は年換算で平 均0.4%にすぎない。家計が貯蓄を十分に増やすには、まだ何年もかかるだろう。それまで債務が重荷になって米経済は低成長が続く。(モルガン・ スタンレー・アジア会長 スティーブン・ローチ氏)

足元の指標が意外にしっかりしているが、長続きするかどうか分からない。家計の過剰債務が多く残っている間は低めの成長が続き、力強い回復はなさ そうだ。大きな資産バブルが崩壊した後の典型的な現象だ。(元日銀副総裁 山口泰氏)

(2)米経済は改善し始めた。個人消費にも強さが見える。米経済は下振れリスクよりも、上振れして驚くことになるのではと考えている。米国は世界 で最もビジネスをしやすく、最高の大学と技術力を持つ。起業家精神も不変だ。成長力を取り戻せる。(JPモルガンCEO ジエイミー・ダイモン 氏)

米国経済がジエイミー・ダイモン氏の発言通りになれば、日本経済にとって一つの大きな明るい条件となる。

そこで、同氏が強調する起業家精神について、実際にお会いした起業家二人を紹介することで、次号以下で米国経済実態を検討してみたい。




山本紀久雄--------------------------------------------------
1940年生まれ。中央大学卒。日仏合弁企業社長、資生堂事業部長を歴任。現在、㈲山本代表取締役として経営コンサルタント活動のほか、山岡鉄舟研究家として山岡鉄舟研究会を主宰。著書に『フランスを救った日本の牡蠣 』『笑う温泉、泣く温泉 』等がある。

(山岡鉄舟研究会)  http://www.tessyuu.jp/
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