和歌山の夜 沁み入る旅の一人酒の巻 千里十里で呑む | おぐりん呑み旅 ひとり旅

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一人旅…。
それは 大切な時間
切符を持って 列車に乗れば
昨日までの
自分はちょっとお休み…
そう 私は旅人…
素敵な出会いを求めて…。


旅先で一人 酒を呑む
其の殆どが
初めて訪ねる店になる訳で有りますが

数ある酒場から一軒
誘われる理由は
様々な物です

そして其処には
時折一夜限りの
素敵な出逢いが有るものでして…。

さて 私
旅の栞によれば
この後 和歌山市内にて 
お約束通り 
酒に溺れる訳ですが…

うん?何々?どうした?
行き先の酒場はと…
栞は空白 
未定じゃ無いですか!

一番肝心な所が まだ未定
日が暮れても まだ未定
初めての和歌山市内なのに まだ未定

此の計画性の無さ
普通でしたら
ツアコン失格の烙印を押されてる所ですが
此の男 大丈夫なのでしょうか?
チェックイン間も無く
ホテルの風呂に浸かってますが…
……
……
どうやら 大丈夫のようです…

数分後…
大海原に放たれた魚の如く
餌を求めて 口をパクパク 
ペパリーゼ飲んで
気分だけでも内臓保護して
体は スイスイと
ホテルから
太平洋の潮流に乗って
美味しい肴が待っている
今宵の黒潮を目指して
彼方此方 大海原を
早速泳ぎ回って居りましたのです

ほら もう目の色が変わって居ますよ
人一倍 酒に対する執着心が
強いですからね
では 此の男の跡をついていきましょうか…


入口から出口まで一直線に伸びた通りは
シャッターを下ろし
其の殆どの店が
一日の役目を終えて居ました

人影が無いアーケード
闇夜に向かい
吹き抜ける風

眠りに向かう
地方都市の鎮まりは
何処か淋しさをともない
何とも 哀愁が漂います
私旅人ですが
観光とは真逆の光景
然し乍ら 実に
酒が恋しくなるじゃないですか


一日社会の中で揉まれ
薄暗闇の中から
我が家の明かりを見つけ
ホッとする様に
酒呑は 一日の終わりに
酒場の明かりに
縋り付くのですね

そして 其の気持ちを察する様に
周りで明かりが灯るのは酒場のみ
酒場回遊魚としては
実に分かり易い状況になって来て居ります(パクパク)



ふむふむ
彼方さんは
釣り針を垂らし
此方の喰いつくのを
じっと待っているのですが
ふーん 然しながら
そう易々とは
引っかかってやるものですか!

一期一会が信条の旅人
二度とは無いかも知れない
和歌山の夜
釣られる店の選択
此は 大切な決断なのですよ!
擬似餌なんかでは
釣られませんからね!

さてさて 私 こうして街を
ぶつぶつ呟きながら
無駄に泳ぎ回って居る訳では無いのです
夜は短いですからね

実は 土地に詳しい知人からの情報で
予備知識で数軒
目星は付けて居りましたのです
(ツアコン資格復活)

其の数軒の間を何度も回遊しながら
探って居たのですよ
結局 最終決断は
私の勘とフィーリングが頼りですからね


其の内の一軒の店の前で
先程から
怪しく何度も徘徊する男発見



気配を消して
お品書きを 見つめて居ります

どうやら
感性を研ぎ澄まし
外観とお品書きだけで
店内の様子を
伺っている様ですね
何か無駄な時間を
費やしいる感じがしますが
必死な形相なので
彼をもう少し そっと見ていてあげましょうね



ふむふむ…
(熟考中 暫しお待ちください)
成る程…
(何か 閃きましたか?)
うーむ
(ここ数日で一番頭を使っている様です)
……
……
よし!

何が後押ししたのか不明ですが
どうやら
此の店に決めた様ですね

皆様 前置きが非常に長くなりましたが
お待たせ致しました

旅の栞 3日目夜
和歌山市内



先ずは…今宵の幸せを誓って
右手で
ギンギンのコイツを
グッと握って目を瞑り
ふわふわと膨れ上がった君の
滑らかな唇へ
ソフトタッチでファーストキス…



刹那
クリィーミーな泡の堰を破って
黄金の液体が喉から胃袋にかけて
キーンと駆け抜けて行きますよ

んっ んっ んっ
……(悶絶)
ゴクゴクゴク
……(気絶)
パフゥ〜(蘇生)

私 砂漠で此れ出されたら
財産全部持っていかれても
文句言いませんよ 本当!
ハイ!一瞬で私
景気付きました!
宴 宴だ 一人宴の始まりですよっと!



カウンターの向かう側には
紀伊水道から太平洋と海に沿う
和歌山の恵みが
見事にお揃いで
私を お出迎えですか?


どれどれ
壁一面に貼り出されたメニューを
右から左へ
何度も往復行ったり来たり
旅先の居酒屋は
正に地方の名店街の様
実にワクワクしますね

其の中から
今夜は何を頂こうかなんて
あれやこれや
一人ぼんやり考えている此の一時
あ〜此れぞ
一人旅一人呑みの
醍醐味じゃないですか!

さてと


和歌山名店街から
地ビール ナギサビール
カウンターの上にどかっと置きまして


続いて 刺身盛り一人前
和歌山水産高校の
オールスター選抜に登場してもらいましてと
特に4番を打つ鰹君
もっちりムチムチですね 良いですよ〜
本日も期待してますよ


という事で
私のカウンターの上に
先ずは
和歌山竜宮城
其の宴の準備が整いましたのですね

爽快な喉越しのビールで
恍惚として
強力スタメン刺身をやっつけて行けば
当然 スイッチが入ります
其処で



日本酒ですね
勿論 和歌山の酒でなくてはいけませんね
雑賀の郷
スッキリとした辛口の酒ですね
食中酒として
我ながらナイスチョイスですね!

と来れば
此の酒に合わす肴が欲しい所
最早 酒呑のスパイラルが止まりませんね

さてさて 何を頂きましょう?
其れにしても
壁一面に書かれた垂涎のお品書き
追いかけても追いつきませんね

酔っ払って思考能力も低下して来た事ですし
此処は こうしましょう
本日の美味いものは
主人だけが ご存知ですよの法則により
ご主人に 丸投げしちゃいましょう!

と言う訳で
程なくご主人
調理場から魚一匹携えて
口元ニヤリで一言
其れでは
此れ煮付けましょう!

其れはもう私 …
口の中一杯に唾液溜めて
従うしか有りませんね


どかっと腰を下ろしている
私のカウンター上は
一層 和歌山色で華やぎましたね

メバルの煮付
此れは一人呑みには
うってつけです
箸でちまちま
やっつける作業と
日本酒をチビチビ飲るリズム
絶妙な間が生まれるのですね

更に
甘辛く染み込んだ
ほくっとほぐれる白身の旨味
キリッとした辛口の日本酒
お互いの余韻が
また次の口先を誘うのです


さてさて
一人旅も3日目になると
次から次へと
観光地のハレの姿ばかり観まくって
似非旅人としては
少々 お疲れなのです
そして 
人恋しくなるものなのです

主人…
そんな旅人を
カウンターの向かうから
感じ取ってくれていたのでしょう

其れから小一時間余り
夜も深まり 客が引き
酒場に落ち着いた時間が流れる中
御主人と交わした様々な会話と心遣い
心に沁みました

しがらみのない 旅の酒ですが
時には少しの淋しさが
顔を出す事も有るものなのです
此の夜 盃に注ぐ日本酒には
深い深い味わいが
加わっていました

盃に残る
少なくなった酒が
此の店への別れの時間
今宵の酒は
旅人の側に寄り添い
心も満たしてくれました

後ろ髪を引く
千里十里…
一期一会の旅の夜
今宵 私
最高の酒場に
釣られた様です



追記…其の後

散々飲んで食べて
腹は張ちきれ
記憶は彼方
太平洋へと消えて行った私ですが

ホテルに戻り
どうやら
でっかい海鮮巻
(千里十里にて 持ち帰った模様)
頬張ってから 眠りについた様です
……
……
そんな私…誰か 叱っては下さいませんか…。



長々と引っ張って参りました夏旅ですが
皆様 安心して下さい
ゴールはもう少しですよ

という事で 
今 季節は秋を通り越して
冬へと移って居りますが
夏旅は もう少し続くのです。