Congrats on 70th Anniversary!

機械式時計好きでユニタス6497/6498を知らないという人はいないでしょう(多分)。1950年に誕生したこの名機は今なお現役で活躍している驚くべきムーブメントです。

てなわけで今日は趣向を変えて機械から入ります。

型番:ETA 6497-2 UNITAS
ベース:-
巻上方式:手巻き
直径:36.6mm
厚さ:4.50mm
振動:21,600vph
石数:17石
機能:スモセコ3針
精度:-
PR:約56時間

現在はETAが生産しているため、正しくはETA 6497-2 UNITASという名前ですが通称ユニタス6497。9時位置のスモセコが特徴です。

前任として18,000振動/時6497-1があり、さらにスモセコが6時位置の6498-1、6498-2が存在しています。

元々は懐中時計用のムーブメントとして1950年に誕生しており、当時としては画期的な小径薄型のムーブメントでした。

数字の若い6497が先に生まれています。9時位置のスモセコ版が先だなんて妙に思われるかも知れませんが、懐中時計を思い浮かべてみてください。

一般的な懐中時計ではリューズは12時位置でスモセコは6時位置が普通ですよね?つまりリューズとスモセコが同一線上にある6497がお姉さんという訳です。

6498はハンターケースと呼ばれる蓋付き懐中時計用のムーブメントで、これはリューズが3時位置、スモセコが6時位置と今の多くの腕時計と同じレイアウトです。

UNITAS 6497/6498は多くの時計学校で教材として使用されるなど、そのシンプルでありながら優れた設計に対する評価は非常に高く、誕生から70年が経とうとしている現在においても多くの機械式腕時計でベースムーブメントとして採用されています。

本日はその例を幾つか見てみましょう。

Luminor Marina PAM 111 / PANERAI 

Ref:PAM00111
ケース径:44.0mm
ケース厚:15.0mm
重量:130g
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:カーフレザー/ラバー
バックル:ピンバックル
防水性:300m
価格:実勢40-60万円

ユニタスの名を21世紀になって再び世に知らしめたのは、やはりデカ厚ブームを巻き起こして一気にスターダムに上り詰めたパネライのお陰でしょう。

中でも、木訥としたルックスのUNITAS 6497を見違えるほど整形したのが、パネライのキャリバーOP XIです。

流れるようなブリッジのパーティングで印象をがらりと変え、地板はペルラージュ、ブリッジはコート・ド・ジュネーヴで仕上げ、角穴車と丸穴車もサンレイ仕上げを施しています。

さらに青焼ネジを使い、貴石穴は丁寧に面取り/研磨され、緩急針はスワンネックに変更されています。

加えてパネライはこのOP XICOSC認定も取得しており、高い精度と美しい外観という高級機械式時計に相応しい素晴らしいムーブメントに仕上げています。


36.6mm径という大きな機械もパネライにとればあつらえたようなサイズです。

300m防水を誇り、軍用モデルを始祖とするルミノール・マリーナはゴツいくらいが丁度良いというのはよく分かります。

44 x 15mmなんてのは絶対自分には似合わないんですが、でもやはりこのゴツさはカッコいいですね。それでいてムーブメントの仕上げも良く、精度も出るというのだからパネライが支持されたのも納得です。

やはりちょっとデザインが特徴的というくらいではあれだけのブランドには成長しません。

今やインハウス・キャリバーを主力とするマニファクチュールに進化したパネライですが、その黎明期を陰ながら支えたユニタスの献身には感慨深いものがあります。

これぞスウォッチだとかリシュモンだとかそういうのを超越した機械時計が紡ぐロマンですね(大袈裟)。



C9 Me 109 SPC Limited Edition / CHRISTPHER WARD

Ref:C09-43HSP2-SD0K0-OC
ケース径:43.0mm
ケース厚:15.7mm
重量:90g
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:カーフレザー/ラバー
バックル:ピンバックル
防水性:5気圧(50m)
価格:£2,950.- (約42万円)

クリスファー・ワード(CW)って失礼ながらブリティッシュ・スタイルのお洒落感を押し出すナンパなブランドだと思っていたのですが、どうやら違いました。すみません。

このC9 Me 109 SPCは見ての通りモノプッシャー・クロノグラフなのですが、ベースキャリバーがUNITAS 6497-1なのです。

Cal JJ02 と名付けられたこのムーブメントは、6497-1をベースとしつつ、設計を全面的に見直して、クロノグラフ針と30分積算計を追加し、それをひとつのプッシャーで制御する機構を備えています。

結果としてルックスは別物になっていますが、手巻きのクロノグラフなので、メカメカしさが満点でめっちゃカッコいいです。

見た目からはユニタスの野暮ったさは消え失せ、ジュネーヴの伝統様式なども完全無視のモダンな仕上げになっています。

一方フェイスデザインは第二次大戦中の戦闘機メッサーシュミットMe 109に搭載されていたユンハンス製の計器にインスパイアされており、ヴィンテージ風のデザインです。

ミリタリーテイスト全開のパイロット・クロノグラフのベースキャリバーすら担うというユニタスの汎用性の高さが窺える作品です。

15.7mmは分厚すぎですけどね…

<手巻きクロノグラフって良いよね>

CWがこんなに硬派な時計を作るなんて知りませんでした。結構、いやかなりお見それしました。そんな気付きを与えてくれたユニタスに感謝。

本作品は100本限定なので、もう手に入らないかも知れません。これほど弄り回してコストが掛かっていそうなのに50万円以下という中々良心的な価格なのも魅力です。

CWの事はこれからもっと勉強しようと思います。


Norfolk / GARRICK

Ref:-
ケース径:42.0mm
ケース厚:12.5mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:コードバン・レザー
バックル:ピンバックル
防水性:あり
価格:£2,495.- (約35万円)

ギャリックというのは面白いブランドです。ベジータの必殺技かと思いきや、業界でも珍しい英国のマニファクチュールで、ハイエンドモデルでは自社製キャリバーを使うユニークなタイムピースを提供しています。

ギャリックのエントリーモデルにあたるのが、このノーフォークです。見るからに6497っぽいなって顔をしてますよね。

フェイスはシンプルでありながら大胆な構図でアートのようなインパクトがあります。

ホワイトエナメルを文字盤に使い、スモセコのチャプターリングや円弧上のブランドロゴ・プレートにステンレス製のパーツを使用し、青焼き針はユニークなT字型のカウンターウェイトを備えています。



英国と聞くと私はトラッド系お洒落ウォッチを連想するのですが、このノーフォークはドイツ時計のような重厚なケースデザインです。

そこに収まるのは5振動/秒UNITAS 6497-1ベースのムーブメント。金メッキ・フロステッド加工されたブリッジは面取りされ、脱進機は緩急装置をトリオビスに変更し、ちらネジテンプがセットされています。

上の二つに比べると比較的穏やかなモディファイですが、世の中にはこの手の時計の方が多いです。

ノーフォークは機械以上にエナメル文字盤と大胆なフェイスデザインが魅力です。ユニタスという信頼に足る勤勉なムーブメントのお陰で、様々な趣向を凝らした外装の時計に出会えるというのは嬉しい事です。


個人的には唯一にして最大のネックである大きなサイズ故に、ユニタス機を買う日が来るのか定かではありませんが、素通りする事など許されるのだろうか、という気持ちもあります。

本当に魅力的なユニタス時計がたくさんあるので、私の好みはさて置いて、今後も折に触れてご紹介できればと思います。