重要経済安保情報保護法案と事件に飢えた公安警察。 | じろう丸の徒然日記

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私こと、じろう丸が、日常の出来事、思うことなどを、気まぐれに書き綴ります。

いま、岸田文雄は、ブラジルにいるらしい。
5月1日午前政府専用機羽田空港を出発して、フランスを訪れたあと、(以下、現地時間)2日夜ブラジルへ。3日には一時隣国パラグアイを訪れ、4日に再びブラジルへ。

 
ロイター通信が本日伝えたところにによれば、岸田文雄4日(日本時間5日)ブラジルサンパウロで会見し、国際社会で存在感を高める「グローバルサウス」諸国との連携強化外遊の成果として強調した。
内政では「内外の諸課題に全力で取り組んでいく、これに専念していく」と述べ、現時点で衆議院の解散・総選挙に踏み切る意向はないとの考えを改めて示した‥‥のだとか。

 
サンパウロでの会見の模様は今朝、NHKが放送していた。
おそらくこれから帰国の途に就き、日本時間の明日に戻ってくるのだろう。そして記者会見で外遊の成果を強調するのだろう。
被災地の惨状をほったらかしておいて、いい気なものである。

 
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ところであなたは、「重要経済安保情報保護法案」なるものをご存知だろうか?
この法案は、経済安全保障上の機密情報を扱う事業者らを身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の導入が柱となっている。
ありていに言えば、かつて安倍政権が強行採決した「特定秘密保護法」、これは主に公務員を対象としたものだったが、それをさらに広く民間にまで大幅拡大・強化したのが「重要経済安保情報保護法案」なのだ。
「経済情報秘密保護法」、あるいは「経済秘密保護法」と言い換えてもいい。

 
この法案は、4月9日、衆院本会議与野党の賛成多数で可決された。
正式な名称は「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」

 
「重要経済安保情報」とは、すなわち我が国の経済上の重要な秘密情報であり、それを守るための法案が可決されたわけだ。
その考え方自体は良いとして、問題は、その「秘密情報」の定義や範囲が曖昧なために、どんどん拡大解釈され、政府による恣意的な指定やプライバシー権の侵害が懸念される。

 
見逃してはならないのは、(くりかえしになるけれど)この法案の柱が、経済安全保障上の機密情報を扱う事業者ら身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の導入にある、という事実である。
例えば、防衛産業、インフラ関係、AI、サイバー、半導体といったさまざまな分野の民間企業が監視される。
公安警察の権限もこれまでより広がり、冤罪事件が次々と起きかねない。

 
【逮捕された男性】

(フリー画像:フリー素材「 ぱくたそ」
(モデル:大川竜弥さん https://www.pakutaso.com/web_ookawa.html
 
事実、警視庁公安部は、2020年3月11日に、とんでもない冤罪事件を起こしている。
「大川原化工機事件」が、それである。
大川原化工機株式会社中国噴霧乾燥機経産省の許可を得ないまま不正輸出したとして、社長の大川原正明さんら幹部3人が逮捕された。その後、別の噴霧乾燥機韓国不正輸出したとして再逮捕されたが、いずれも冤罪だった。

 
この事件に関しては、月刊誌『世界』2024年5月号で、ジャーナリストの青木理さんが、この事件を担当した弁護士高田剛(つよし)さんと対談しているが、戦慄せざるを得ない事実が明かされている。
そもそも大川原社長らが逮捕された容疑自体がでっち上げだったのだが、拘留中に体調を崩した元専務の相嶋静夫さんが進行した胃癌だったことが判明しているにもかかわらず、保釈請求が何度も退けられ、適切な治療が受けられなかった。
結局、相嶋さん体調悪化から2ヵ月も放置された末に、2020年11月にようやく拘留の一時停止が認められて入院できたが、翌2021年2月に亡くなったという。
「もはや国家による殺人でしょう」と、青木理さんは憤っている。

 
【警視庁と入り口を警備する警察官】

(フリー画像:フリー素材「 ぱくたそ」
 
相嶋さん保釈請求何度も退けられたことについて、高田剛さんは次のように語っている。
(以下、引用)
刑事訴訟法は裁判官の裁量での保釈も可能と定め、仮に罪証隠滅のおそれがある場合でも、生命の危険がある病だったり、経営する会社が潰れかねない危機的状況なら、事情を衡量(こうりょう)して保釈できる裁量が裁判所にはある。裁判官はもっと積極運用すべきです。
(引用、終わり)
 
青木さんによれば、裁判官は検察に追従しがちなのだそうだ。
この件は、拘留中の人の命と健康を守る義務がある拘留施設法務省の責任も問われなければならないだろう。

 
【法務省の赤れんが棟と警視庁本部庁舎】

(フリー画像:WATERWATERさん https://www.photo-ac.com/profile/2212158
 
この事件の背景には、警視庁公安部「事件に飢えている」という事情があったと、高田剛さんは言う。
事件が無いのは本来良いことなのだが、公安部にとってはそうではない。事件が無いと組織を維持するのが難しくなるからである。
公安部の中でも不正輸出を担当する外事一課第五係2017年3月からこの件の内偵捜査を始めていたが、2018年初頭になると米中対立「経済安保」の議論が盛んになり、それが捜査を後押しした。

 
そして、組織の維持に執念を燃やす警視庁公安部は、ついに証拠をでっち上げて何の罪もない人たちを逮捕し、長期間拘留するということをやらかした。
それが原因で、そのうちの一人が病死に追い込まれた。
『週刊金曜日』2023年9月22日の報道によれば、大川原社長ら3人が起訴されるや、外事第一課が組織として警察庁長官賞警視総監賞を受賞し、事件を主導した宮園勇人警部警視に、安積伸介警部補警視に昇進、彼らをはじめ捜査にかかわった他の警察官ら論功行賞なるものを受賞したが、証拠の捏造が発覚すると、受賞は取り消された。
しかし、昇進はそのままだったという。(!)

 
だが結局は、検察初公判の4日前起訴を取り消した。初公判直前の起訴取り消しなど異例中の異例であるが、この事件の捜査があまりにも無茶だったために、さすがの検察白旗をあげざるを得なかったのだ。
 
さて、「重要経済安保情報保護法案」4月17日参院本会議審議入りし、現在審議が進んでいる。
この件はほとんどのメディアが報道しないが、新聞では『東京新聞』だけが頑張って報道している。
4月24日の同紙の報道では、特定秘密保護法と同様に、セキュリティー・クリアランス(適性評価)認定された人だけが情報を取り扱えるようになるが、その際に、家族の国籍飲酒の節度、経済状況といった身辺調査が行われるが、政府がどの程度調べるのか不明のままであり、プライバシー侵害の懸念が残るため、対象となり得る民間企業抵抗感を隠さないという。

 
第2の「大川原化工機事件」が起こる危険性は否定できない。
 
日本弁護士連合会
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案についての会長声明

https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/240313_2.html
 
愛知県弁護士会
「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」案の抱える問題点の解消がなされないまま可決されることに反対する会長声明

https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2024/04/post-107.html